上 下
81 / 200

日常8

しおりを挟む
「如月さん、おはよう。」

いつも通りの爽やかな笑顔を浮かべてくれる。

「・・・・、おはよう・・ございます。」

美咲はどんな顔をしたら良いかわからずに荷物を置くとそそくさと給湯室へ向かった。
いつの間にか走り出していた鼓動を鎮めようと深呼吸をした。
2~3回深呼吸をすると少し落ち着いた。
コーヒーを淹れながら、流しに残っていたカップを洗う。

「いい匂いだね?」

不意にかけられた言葉にまた心臓が走り出す。

「く、久堂さん・・。」

給湯室の入り口にもたれかかりながら美咲を見つめた。

「そ、そうですねっ!」

雑巾を絞るとショールームへ行こうとするが、久堂に難なく引き留められてしまった。

「如月さん、昨日はごめん。ちょっと強引すぎたよね?」

「・・・・。」

何も言えずに俯く。

「でも、昨日君に言った言葉は嘘じゃない。本当に俺は君が欲しかったんだ。」

「そんな言い方ズルイです。そんな事を言われたら私は・・私はっ!」

「ズルイのもわかってる。俺のワガママだ。それでも、君を離せない。何故かわからないけど離しちゃいけない気がするんだ。」

涙を薄っすらためた瞳で久堂を見上げた。

「如月さん・・。」

久堂の手が美咲の頬を包み優しく撫でた。たったそれだけの事がこんなにも美咲の心を乱した。

「っつ・・。駄目です。」

「駄目じゃない。俺を見て?」

恐る恐る視線を上げる。
薄っすらと滲んだ久堂の顔が見えた。それでも、まるで愛しい者を見るかのような視線は感じられた。

「く、どうさん?」

久堂は華奢な美咲の腰を引き寄せた。そして、まるで噛みつくようなキスをした。

「・・!・・んっ。」

強引に舌が入り込み、暴かれた弱い場所を責られる。

「はっ・・、だめ・・」

それでも足りなくて、久堂は美咲の耳の後をソッと撫でると首筋から胸元へ手が降りていく。
思わず、久堂のスーツを握り締めた。
唇が離れると久堂は嬉しそうに言った。

「こんな事で、こんなにも蕩けてくれるなんて嬉しいな?まだ、朝だよ?それに会社だ。」

意地悪を言うように美咲を責め立てた。

「そ、そんな事・・んっ。」

反論を受け付けないかのようにまた唇を奪われた。
角度を変え何度も何度も求められ美咲の身体から力が抜けた。それを、久堂の逞しい腕が簡単に支えてしまう。

「如月さん?大丈夫?」

耳元で囁かれるとビクリと反応してしまう。今の美咲は少し触れられただけでも容易に熱が高められるだろう。
その時、出入口の開閉音が聞こえてサッと二人離れた。

「・・。如月さん?またね?」

そう言うと久堂は自分の席に戻り仕事を始めた。
やっと開放された美咲は座り込んでしまった。
とりあえず、自分の呼吸を整える。そのまま、ショールームへ行こうとすると中垣に呼び止められた。

「如月?」

「な、何?中垣君。」

中垣は美咲の顔をジッとみつめると、おもむろに美咲の手を取った。

「っあっ・・。」

短い声が出てしまう。急いでその場を取り繕う。

「どーしたのっ?」

「・・・・、いや、悪い。」

スルリと手を離す。

「・・・、何か俺に言う事ある?」

その疑問に内心ビクリとした。

「な、何もないよ?どうしたの?急に。」

「ふーん?何もないなら良いけどね?まぁ、お前は気にすんな。じぁあな?」

そう言って工場へ行ってしまった。
中垣の目はまるで何でも見通しているかのようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...