十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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日常5

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事務所に入ると、既に誰も居なかった。
中垣達が最後だったのだろう。

「久堂さんありがとうございました。」

「うん。」

「えっと、何か飲みますか?」

「うん。じゃ、コーヒーで。」

「わかりました。」

給湯室に行くとコーヒーを入れてきた。

「どうぞ。」

「うん、ありがとう。」

久堂はそのまま事務仕事を始めた。美咲もノートパソコンを開くとメールのチェックなどを始める。
静かな事務所にパソコンのキーボードの音が響く。
メールも沢山来ていた訳ではないので返信を書き終わると仕事が終わってしまった。
美咲は画面を見つめてぼんやりとしていた。

「・・さん?如月さん?」

久堂に呼ばれてハッとする。

「あ、ごめんなさい。何でしょうか?」

「仕事終わった?」

「はい。」

「じゃあ、今日はもう遅いし帰ろうか?」

「わかりました。」

退社の支度をすると、事務所の電気を消した。
出入口に置いてあるタイムカードを二人分押すとドアに手を掛けた瞬間後から久堂に抱きしめられた。

「く、久堂さん?」

久堂は何も言わずに出入口の電気を消した。

「如月さん?俺やっぱり君が好きだ。」

耳元で囁かれるとピクリと身体が反応する。そんな美咲の様子を見ると身体の向きを変えて正面から抱きしめた。

「だ、だめですよ・・。」

言葉を封じるように唇を塞がれる。最初は触れるだけのキスを何度もした。それだけで、美咲から甘い声が溢れる。

「はっ・・。久堂さ・・。」

薄く開いた唇から舌が入り込んで散々暴かれた弱い所を責られる。
頬に添えられていた手が美咲の耳をなぞり首筋を辿って胸元まで行くと美咲は久堂のスーツをギュッと握った。

「あっ。くどう・さん。」

美咲の顔を見ると瞳は潤み呼吸が乱れていた。

「もっと?」

「やっ・・ちがっ」

また唇を塞がれてしまう。濃厚な口づけに美咲の身体から力が抜けてしまうが久堂が難なく支えた。
出入口に鍵をかける。

「如月さん、こっち」

手を引かれて休憩室のソファーに座る。
久堂はスーツを脱ぐとネクタイを少し緩めた。
休憩室は外の街灯の光があるくらいで何とかお互いの顔が見れる位だった。
久堂はもう一度美咲を抱きしめる。

「・・だめ・です。」

「どうして?俺に触られるの嫌?」

顎を掬いあげると視線が合う。

「そ、そんな事は・・。」

「じゃあ、如月さんに触れても良い?」

「・・・・、」

美咲の答えを待たずに深い口づけをする。角度を変えて何度も何度も求められる。そのうち、頭がボーっとしてきて思考が上手く回らなくなる。

「あっ・・久堂さん・。」

美咲のジャケットをスルリと脱がすと、また口づけをする。

「如月さん、可愛いよ?」

「っつ、くどうさ・・」

「素直に俺を感じて?」

耳朶や首筋に舌を這わせるといよいよ美咲から甘い声が上がった。

「そう。もっともっと感じて?」

久堂の顔が滲んで見える。
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