十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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日常3

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翌日、何時もの様に出勤するが珍しく会社が閉まっていた。

(あれ?今日はまだ久堂さん来てないのか。)

仕方なく裏口で誰かが来るのを待つ。
暫くすると、総務部長が出勤してきた。

「おはようございます。」

「おはよう。あれ?今日は久堂さんまだ来てないんだ?」

「みたいです。」

鍵を開けてくれると事務所に入る。ホワイトボードを見ると久堂の所に『早出』と書かれていた。

(早出か。ホントに忙しい人だなぁ。)

朝の掃除に朝礼が終わると、ノートパソコンで事務作業をした。
お客様からの資料請求の詳細等を見てカタログを用意する。
昨年美咲から車を購入してくれた人の所にも行く予定をたてた。
皆がチラホラ出掛けていく。美咲も準備をすると外回りに出掛けていった。




久堂が会社に戻ってきたのは11時頃だった。
積載車から引き取って来た車を降ろすとメカニック達が集まってきた。

「久堂さん、どうしたんですこの車?」

「あぁ、何かエンジンが止まっちゃうらしいんだよね~?」

「エンジンが?」

「うん。とりあえず診断してくれる?」

「わかりました。」

事務所に入ると、サービスフロントに顔を出す。

「久堂さん、もう行ってきたんですか?」

「うん。早出したからね。車は今工場にあるからよろしくね?」

「はーい。」

自分の席に戻ると一息ついた。
内勤の人がコーヒーを持ってきてくれた。

「久堂さん、お疲れ様です。朝から大変でしたね?」

「ありがとう。まぁ、仕方ないよね?」

ホワイトボードを見るとそれぞれ行き先が書いてある。

(如月さんは18時帰社予定か。)

「・・・・。」

自分の気持ちを封じて淡々と仕事を処理する。
相変わらず、整備の電話が多かった。

「如月ですか?今外出中なので如月から連絡させましょうか?」

そんな話が聞こえてきた。
内勤の人のところに行く。

「如月さん、どうかしたの?」

「あっ、久堂さん。如月さんが販売した車の調子が悪いみたいなんです。」

「詳細は?俺が電話するよ。」

「?良いんですか?じゃ、これお願いします。」

連絡先などを書いたメモを渡される。
久堂は、自分の席から電話をした。
一部始終を話し、美咲から連絡することになった。

数分後、久堂の携帯に電話が入る。

「久堂さん?お疲れ様です。連絡取れまして、今日の夕方に引取りに行くことになりました。」

「そう。それで、代わりの車は?」

「特に代車は必要ないみたいなのでありませんけど?」

「えっ?じゃあ、千葉の木更津まで積載車で行くつもり?」

「・・はい。そうですけど・・?フロントさんからはおっけー貰いましたけど?」

「いやいや、じゃ俺も行くよ!?」

「えっ?そんな一人で大丈夫ですよ?」

「・・・・、如月さん?君はまだ入社して一年経ってない。流石に普段運転し慣れない積載車を運転して木更津まで行かせるわけにはいかないな?」

「っつ、でもっ!!」

「引取には俺が同行する。良いね?」

いつもの、久堂とは違い有無を言わせない雰囲気だった。

「・・・・、わかりました。ひとまず、16時には一旦帰ります。」

「16時ね?わかった。じゃあ、俺もその位に帰ってくるから。」

「はい。」

久堂は電話を切るとため息をついた。

(16時か、じゃあ俺も少し出てくるかな?)

商談バッグを持って、一旦外出した。
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