十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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社員旅行5

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久堂はため息を吐いてホテルへの帰路へついた。

(まさか、『良いところだよ』ってのがキャバクラとは・・。)

内心、辟易しながら数分前の事を思い出した。




同じ営業の人間に連れて行かれたのは、キャバクラだった。

「ここ・・ですか・・?」

「そうそう、可愛い子が居たんだよ!?さっ、入りましょ!」

「あ、いやでも。」

抵抗するが、男数人に腕を引かれてしまえば入らざるを得なかった。

(あまりこういう所は好きじゃないんだが、適当にあしらって帰るか・・。)

諦めの気持ちで店に入る。
日本のキャバクラ程ギラギラした感じはなかった。女の子達の服装もドレスというよりはワンピースといった感じだ。
一緒に行ったメンバーは既にお気に入りの娘が居るらしく指名をしていた。
テーブルに案内されると各々が指名した女の子達がやってきた。

「久堂さんも誰か指名しないんですか?」

「いや・・。俺は大丈夫だよ?だから気にせず楽しんで?」

そう言うが、久堂の隣に若い女の子が座る。

「ナニ、ノミマスカ?」

片言の日本語で尋ねられる。

「あぁ、じゃあ焼酎を水割りで。」

「ワカリマシタ。オマチクダサイ。」

女の子は手早くドリンクを作ると久堂に差し出した。

「ありがとう。」

グラスを受け取ると一口飲んだ。
チラリと女の子を見ると、美咲と然程年齢は変わらなそうだった。少し幼い顔付きなのが印象的だ。
入店して直ぐに帰るわけにもいかず気まずい時間を過ごした。

2時間程過ごすと、時刻は午前0時になろうとしていた。
久堂は、一緒に来た営業に声を掛ける。

「すみません、俺ここら辺で帰りますね?後はごゆっくりしてきてください。」

「おぉ。わかった。おやすみ~!」

皆、自分のお気に入りの娘との会話に夢中だった。

(まぁ、ここまで付き合ったんだからもう良いだろう。)

そう思いながら店を後にした。
店の外に出ると心地良い風が頬を撫でる。
酔い醒ましも兼ねて店からホテルまでの海岸線沿いを歩く。
波の音だけが聞こえてくる。

「気持ちいいな。」

思わず声に出てしまった。
砂浜を眺めながらホテルへ向うと視線の端に水色のワンピースを着た女性が目に入った。

(あれは・・?)

確かに見覚えのある服装だった。
ノースリーブの膝丈のワンピースだ。海の色を想像させるような綺麗な水色だった。
砂浜へ降りる階段に座り夜の海を見つめていた。

(・・・・。)

久堂は何も言わずにその女性に近付く。

「こんな時間に女の子が一人で居たら危ないよ?如月さん?」

振り向くと少し驚いた表情をしたが、直ぐに笑顔になった。

「久堂さん?今帰りですか?」

「あー。うん、まぁね?」

美咲の隣に座る。

「如月さんこそ、中垣に説教されたんじゃないの?」

その言葉を聞くと美咲はクスクスと笑う。

「説教じゃなくて、二次会でした。あっ、今はちゃんと皆に『部屋に帰る』って言ってありますから!!」

「それで、ここに居たら駄目じゃない?」

久堂のツッコミに顔を見合わせた。

「確かに!」

美咲は楽しそうに笑う。

「如月さんは何してたの?」

「何となく海を眺めてました。波の音を聞いていると落ち着くので。」

「そっか。でも、本当に女の子が一人で居たら危ないよ?一緒に帰ろうか?」

「・・・・。」

「如月さん?」

美咲の顔を覗き込もうとすると、立ち上がり波打ち際に行ってしまった。久堂は後を追う。
美咲はそのまま波打ち際に立っていると、波が美咲の足を濡らした。

「うわー。気持ちいい!久堂さんっ?気持ちいいですよ?久堂さんも来てくださいっ!」

ワンピースの裾を持ち上げて波と戯れる。
美咲のスラリとした脚にドキッとしてしまう。

「久堂さん?」

美咲は不思議そうに久堂の顔を見つめる。
その時、ひときわ大きな波が美咲のワンピースを濡らした。

「わっ!!冷たい。」

久堂は咄嗟に美咲の手を取ると自分の方へ引き寄せた。

「あっ。」

美咲の華奢な身体は久堂の胸に軽くおさまってしまう。

「ごめん。大丈夫?」

自分の腕の中に居る美咲の顔を見ると、酔っているせいか目はトロンとしているし頬は紅潮していてドキッとさせられた。
美咲は、久堂のシャツの裾をキュと握ると上目遣いで見つめた。

「久堂さん・・。もう少し一緒に居てくれますか?」

「・・っつ、良いよ。如月さんを一人にするわけにいかないしね?」

「ありがとう・・・ございます。」

二人で近くの流木に座った。

「服濡れたの大丈夫?」

「はい。大丈夫ですよ?」

美咲はワンピースの裾をヒラヒラさせてみせた。

「・・。そっか、なら良いんだけどね?」

「ふふっ、本当に久堂さんって優しいですよね?」

「そ、そうかな?」

「そうですよ!間違いないです!!」

「・・・・・。」

「私、久堂さんにお礼を言わないといけないんです。本当にありがとうございました。」

「えっ?どうしたの?急に。」

美咲は月明かりで薄っすらと見える水平線を見つめながら言った。

「あの、雨の日の事。私ちゃんと聴こえてましたから。」

「えっ?」

美咲の意外な告白に久堂の鼓動は跳ねた。
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