十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

文字の大きさ
上 下
50 / 221

涙の行方

しおりを挟む
「私に泣く権利なんてないっ!!」

零れ落ちた涙を拭う。

(自分で決めた事なんだから・・)

自分の手を握り締めた。
その時インターホンが鳴る。

(長嶺・・さん?)

急いでドアを開けると意外な人物が立っていた。

「く・・どう・さん?」

「どうしたの?如月さん、そんな驚いた顔して
?」

「あ・・。何でも無いです。久堂さんこそどうしたんですか?今日はお休みですよね?」

「うん。でも、如月さんの事が気になってね?食事はちゃんととった?」

「・・・・・いえ。」

美咲は俯いてしまった。

「・・・・。さっき、長嶺さんとスレ違ったけど?」

一瞬視線が乱れた。

「きちんとお別れしたんです・・。」

「長嶺は納得したの?」

久堂の質問にただ笑うだけだった。

「久堂さんどうぞ?上がってください。」

室内に案内される。
後ろ姿がとても儚く思えて久堂は咄嗟に美咲を後から抱きしめた。

「久堂・・さん?どうしたんですか?」

抱きしめる腕に力を込めた。

「無理しなくていい。辛いなら辛いと悲しいなら悲しいって言って良いんだよ?」

「っつ・・。」

美咲は思わず自分を抱きしめる腕をギュッと握り締めた。

「久堂さん・・。」

「俺に甘えていいんだ。何でも受け止める。如月さんの事が大切なんだっ!」

「・・久堂さん?良いんですよ?慰めてくれなくても。私は平気ですから。」

「平気じゃ無いだろう?今にも泣きそうな顔してた。他人に甘えたって良いんだよ?今までは違ったかもしれないけど俺には甘えて欲しいな?」

「・・そんなの・・・・。甘え方なんて・・わからない・・。」

久堂は何も言わずに抱きしめてくれた。

「何が正解なんて・・わからないよ・・。」

「人間、そうやって悩んで迷って自分の道をすすむんじゃないのかな?悩む事迷う事は間違いじゃない。その先に自分の納得のいく答えが出るまで悩んで迷って良いんじゃないかな?」

「っつ・・久堂さん・・。」

「俺は今日、如月さんの所に行くべきか悩んで迷ってでも、来たんだ。後悔したくなかったからね?」

「・・・・・。」

「あの雨の日、俺は如月さんを見つけられて良かったと思ってる。如月さんには辛い想いをさせてしまったかもしれないけど、今元気にここに居てくれることが俺は嬉しい。」

ずっと我慢していた涙が零れ落ちた。慌てて目をこするが涙はとまらなかった。
目をこする手をやんわりと掴まれた。

「余りこすると良くないよ?」

「っつ。でも・・。」

「泣きたい時は泣いて良いんだよ?誰も責めたりしない。我慢しないで?」

久堂の言葉にもう限界だった。ずっとこらえていた涙が後から後から溢れる。
久堂は美咲を正面から抱き直した。
縋り付くように久堂に抱きついて泣いた。そんな美咲の背中を優しく優しく撫でた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

最愛のあなたへ

夕香里
恋愛
最愛の人から送られ続けていた手紙の最後の一通。それは受取人にとって、複雑な心境になる手紙。意を決して封を開けるとそこには愛が溢れていた。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

からかう

詩織
恋愛
同期で好きな彼にいつもちょっかいを出されてた。はじめはそんな関係も嫌いじゃなかったが…

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...