十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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めまい1

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長嶺から思いを告げられてから美咲は夜なかなか眠れなくなっていた。

「まさか、ここまでとはね・・。」

自嘲した。
こんなにも心を掻き乱されるなんて思っていなかった。
出社して朝の全体朝礼の時から異変はあった。目眩がして冷や汗が止まらない。何とか全体朝礼を乗り切る。部署ごとの朝礼の時も目眩は酷くなるばかりで冷や汗も止まらなかった。
各自、今日の予定を報告して美咲の番になる。

「如月さん?今日の予定は?」

「・・・。」

一斉に美咲に視線が向けられる。久堂が美咲に手を伸ばした。

「如月さんっ?」

次の瞬間美咲の身体がグラリと傾く。
咄嗟に、久堂が美咲の身体を支えた。

「如月さんっ?如月さんっ!!」

何度呼びかけても美咲が答える事はなかった。




朝の平穏な時間に救急車のサイレンの音が鳴り響いた。
長嶺は不思議に思い表に出ると、隣のショールームの前に救急車が停まっていた。

「何だ?どうしたんだ?」

他の営業やメカニック達も集まってくる。
目を凝らして見ていると、ストレッチャーに乗せられていたのは女性だった。
久堂が側に付いて懸命に名前を呼んでいる。

「如月さんっ!如月さんっ!!」

その名前にドクンと心臓が高鳴る。

(美咲?一体何があったんだっ!?)

二人を乗せた救急車は静かに会社を後にした。




「んっ・・・。」

美咲が目を覚ますと見覚えのない天井が目に入る。

「ここ・・は?」

視線を動かすと点滴の容器が見える。更に視線を下げると心配そうな久堂の顔があった。
久堂は祈るように美咲の手を握っていた。

「く、久堂さん・・?」

声を掛けるとハッとして美咲の顔を覗き込む。

「如月さんっ?大丈夫?」

「わたし・・どうしたんでしょう?」

「朝礼の時に倒れたんだ。覚えてない?」

「えっと・・。」

必死に記憶の糸を手繰り寄せる。

「先生の診察だと、過労と睡眠不足だそうだよ。」

「・・・。ごめんなさい・・。」

「どうして謝るの?」

久堂は優しく美咲の頭を撫でた。

「私のせいで、皆にご迷惑をお掛けして・・。」

「何言ってるの?誰も迷惑なんて思ってないよ?皆心配してた。」

「・・・。」

「今日はとにかくユックリと休んで?先生も2~3日入院だって言ってたしね?」

「そんなに・・?」

「そう。それだけ如月さんの身体と心は悲鳴を上げてるんだよ?だから、ちゃんと休んで?何も心配はいらないから。」

美咲は久堂の顔をジッと見つめた。

「わかりました。ありがとうございます、久堂さん。」

「うん。」

久堂は安心したように笑顔を浮かべた。

「また、来るから何か欲しい物とかあったら遠慮なく言ってね?」

久堂は優しい笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます。」

「うん。もう暫く眠ったほうがいい。」

髪の毛を優しく撫でてくれる。その手がとても優しくて安心した。
目を瞑るとまた眠気が襲ってきた。
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