十年愛 〜私が愛した人はズルイ人でした。それでも愛するのを止められないのは私の罪ですか?〜

朔良

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優しい体温2

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目を閉じると、波の音と長嶺の心臓の音が聞こえる。

「安心する・・。」

「うん?」

優しい手が美咲の髪を梳いてギュッと抱きしめてくれる。
美咲の眼から涙が零れた。

「今日・・・、お客さんから女の営業は嫌だって、、、、どうせ直ぐに辞めちゃうんだろう?って言われたの・・。」

「・・うん。」

「今までも似たような事を言われてたけど・・っつここまでハッキリと拒絶されたのは初めてで・・。」

「そっか・・。」

長嶺は静かに美咲の話を聞いてくれる。

「そ、そんな事っつ・・今まで誰にも言えなくて。ずっと心に溜め込んでた。だけど、今日あそこまでハッキリといわれると・・我慢できなくて。だけど、だけど・・私なりに一生懸命やってた!でも、やっぱり認めて貰えないのは辛いよ。」

「美咲ちゃんっ!」

長嶺が力強く抱き締める。

「もう、いいんだ。良いんだよ?ちゃんと見てる人は居るから。確かにガラの良くないお客もいるけど皆がそうじゃない。ちゃんと美咲ちゃんを認めてくれる人がいる。だからっ、自分を責めるのはもう辞めて?」

「ながみね・・さん。」

長嶺の体温が心を落ち着かせた。
顔を上げると、いつの間にか溢れていた涙を長嶺が優しく拭う。

「美咲ちゃん・・。」

長嶺の手が頬に添えられて、ユックリと美咲の唇をなぞった。

「・・・。」

一瞬とも永遠とも思える時間二人は見つめ合う。長嶺の甘く整った顔が近づくと受け入れる様に美咲は目を閉じて深い口づけをを交わす。
長嶺の後頭部にあった手が美咲の背中を辿り腰を強く抱いて引き寄せる。

(ゾクゾクする・・・。)

長嶺の手の感触、抱きしめられた体温が心地よかった。

「んっ・・・。」

思わず出てしまった声に自分自身が戸惑う。
フッと唇が離れると二人見つめ合い吐息がかかりそうな距離で長嶺が目を細めた。

「美咲ちゃん可愛いよ。もっと俺に甘えて?全て忘れさせてあげる。」

どちらともなく、もう一度口づけをする。
長嶺の香りに包まれる。
長嶺は消えてしまいそうな美咲をギュッと抱き締めた。

「あっ・・。」

唇を離すと、そのまま首筋に顔を埋める。薄い皮膚の上に口づけを落とすその度に美咲が可愛い反応をする。

「やっ・・ながみね・さん。」

思わず長嶺のスーツをキュッと握る。

「うん?もっと俺を感じて?可愛いよ。」

耳元で甘く囁くと肩がピクンと跳ねる。

「あっ・・やっ・だめ。」

長嶺の口づけが首筋から胸元に降りる。

「・・・。」

長嶺は顔をあげるともう一度口づけをした。
たどたどしく、でも懸命に答えようとする美咲がとても愛おしく思えた。
何とか途中で辞めれたのは、それだけ美咲の事を思っているからだろう。 

最後に、もう一度強く抱きしめる。

「ながみね・・さ・ん」

「今日はこの位にしとく。」

そう言うと美咲の額にキスをした。

「明日もあるし帰ろうか?送ってく。」

「・・・はい。」

二人は車に乗り込み帰路に着いた。
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