168 / 174
第168回『チョウチンアンコウ スプレー 四方八方』
しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第168回『チョウチンアンコウ スプレー 四方八方』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約59分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=nSernH-NhEw
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
私は3連休を利用して、とある海沿いの町へと旅行しに来ていた。
30代独身女の一人旅だ。
会社の人からは寂しくないのかと笑われたりもするが、一人の方が気楽でずっといい。
どこに行くのも自由で、飽きたら途中で引き返すのも自分次第だ。
誰に気兼ねする必要もない。
いつしか一人旅は私の趣味になっていた。
有名な観光地でもない町はとても静かなので、とてもリラックスできた。
ただ普通に歩くだけで、日々のストレスが雲散霧消されていくようだ。
これこそが旅行の醍醐味だ。
そして、もう一つの醍醐味が食事だ。
ここは海沿いの町。
新鮮な魚介類が食べられるに違いない。
旅行のときの私のこだわりは、おいしかったりテレビで紹介された店に行くよりも、なるべく地元の人が利用しているお店を選ぶことだ。
経験上、そういうお店の方がてらいのない本当の味を楽しむことができるからだ。
それは決して写真映えするようなものではなく、こんなことができてしまうのも一人旅の強みだった。
時計が正午を回り始めると、港にほど近い一角を歩いた。
今日の昼食探しだ。
予想通り、私好みの小さな食べ物屋さんがそこかしこにあった。
漁師さんが開いている魚料理を中心にした店、港で働いている人たちをターゲットにしたがっつりと食べられるお店など、どれもが私のお腹を誘惑した。
だが味など外見で判断できるものではなく、ここにあるお店はどれもネットにレビューが載っているものではない。
私は雰囲気が一番ビビッと来たお店の戸を開けた。
「いらっしゃい。」
店は老夫婦二人で営んでいるようだった。
私はこういうお店が大好きだったので、内心とても喜んだ。
「ここって長いんですか?」
「26の時に開いたから、もう50年近くになるねえ。」
「昔から変わらない田舎料理だから若い子のお口に合うかしらねえ。」
大ビンゴだ。
「とんでもないです。私、そういうお店の方が大好きなんですっ。」
目を輝かせて言う私に、二人は静かに笑ってくれた。
お店の中は建物は古いが、掃除と気配りが隅々まで行き渡っていた。
壁にはマジックで書かれたメニューが貼られていた。
紙の貼られ方を見る限り、その日に仕入れたものによって代わる方式らしい。
つまり新鮮で、お眼鏡にかなったものばかりということだ。
四方八方、何から何まで私好みだった。
私は胸をときめかせながら壁に貼られた魚の名前や料理を見ていると、珍しい名前に目が留まった。
「チョウチンアンコウって、あのチョウチンアンコウですか?」
「そうですよ。珍しいでしょう。アンコウと言ったら普通はキアンコウですから。でもこの地方じゃ昔からチョウチンアンコウも食べられてきたんですよ。」
昔から、という言葉に私は弱かった。
「じゃあ、それでお願いします!」
注文を受けると、おじいさんはチョウチンアンコウを取り出して鮮やかにさばき始めた。
そして網に乗せて焼くと、ジュウジュウととてもいい音が私の耳を楽しませた。
しばらく待つとご飯とお味噌汁とともに、焼いたチョウチンアンコウをおばあさんが持ってきてくれた。
「昔の人も食べるものがないからチョウチンアンコウを食べていたというのもありますからねえ。他のアンコウやお魚に比べると、ちょっと人を選びますよ。」
「へー。どんな味がするんでしょうかねえ。」
私は手を合わせていただきますの動作をすると、おばあさんがアンコウはお醤油をかけてお召し上がりくださいと言って、お醤油のビンを私の前に持ってきてくれた。
しかしそのビンは口からお醤油が垂れてくるものではなく、スプレー状に放射するタイプのものだった。
「これだと塩分の摂り過ぎが防げますよ。」おばあさんが言った。
これは違う。
私はそう言いたかった。
~・~・~・~・~
~感想~
別のオチを考えていて、伏線のつもりで前半の文章を書いていましたが、オチを途中で変更してしまったので意味のない文章が続く物になってしまいました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第168回『チョウチンアンコウ スプレー 四方八方』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約59分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=nSernH-NhEw
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
私は3連休を利用して、とある海沿いの町へと旅行しに来ていた。
30代独身女の一人旅だ。
会社の人からは寂しくないのかと笑われたりもするが、一人の方が気楽でずっといい。
どこに行くのも自由で、飽きたら途中で引き返すのも自分次第だ。
誰に気兼ねする必要もない。
いつしか一人旅は私の趣味になっていた。
有名な観光地でもない町はとても静かなので、とてもリラックスできた。
ただ普通に歩くだけで、日々のストレスが雲散霧消されていくようだ。
これこそが旅行の醍醐味だ。
そして、もう一つの醍醐味が食事だ。
ここは海沿いの町。
新鮮な魚介類が食べられるに違いない。
旅行のときの私のこだわりは、おいしかったりテレビで紹介された店に行くよりも、なるべく地元の人が利用しているお店を選ぶことだ。
経験上、そういうお店の方がてらいのない本当の味を楽しむことができるからだ。
それは決して写真映えするようなものではなく、こんなことができてしまうのも一人旅の強みだった。
時計が正午を回り始めると、港にほど近い一角を歩いた。
今日の昼食探しだ。
予想通り、私好みの小さな食べ物屋さんがそこかしこにあった。
漁師さんが開いている魚料理を中心にした店、港で働いている人たちをターゲットにしたがっつりと食べられるお店など、どれもが私のお腹を誘惑した。
だが味など外見で判断できるものではなく、ここにあるお店はどれもネットにレビューが載っているものではない。
私は雰囲気が一番ビビッと来たお店の戸を開けた。
「いらっしゃい。」
店は老夫婦二人で営んでいるようだった。
私はこういうお店が大好きだったので、内心とても喜んだ。
「ここって長いんですか?」
「26の時に開いたから、もう50年近くになるねえ。」
「昔から変わらない田舎料理だから若い子のお口に合うかしらねえ。」
大ビンゴだ。
「とんでもないです。私、そういうお店の方が大好きなんですっ。」
目を輝かせて言う私に、二人は静かに笑ってくれた。
お店の中は建物は古いが、掃除と気配りが隅々まで行き渡っていた。
壁にはマジックで書かれたメニューが貼られていた。
紙の貼られ方を見る限り、その日に仕入れたものによって代わる方式らしい。
つまり新鮮で、お眼鏡にかなったものばかりということだ。
四方八方、何から何まで私好みだった。
私は胸をときめかせながら壁に貼られた魚の名前や料理を見ていると、珍しい名前に目が留まった。
「チョウチンアンコウって、あのチョウチンアンコウですか?」
「そうですよ。珍しいでしょう。アンコウと言ったら普通はキアンコウですから。でもこの地方じゃ昔からチョウチンアンコウも食べられてきたんですよ。」
昔から、という言葉に私は弱かった。
「じゃあ、それでお願いします!」
注文を受けると、おじいさんはチョウチンアンコウを取り出して鮮やかにさばき始めた。
そして網に乗せて焼くと、ジュウジュウととてもいい音が私の耳を楽しませた。
しばらく待つとご飯とお味噌汁とともに、焼いたチョウチンアンコウをおばあさんが持ってきてくれた。
「昔の人も食べるものがないからチョウチンアンコウを食べていたというのもありますからねえ。他のアンコウやお魚に比べると、ちょっと人を選びますよ。」
「へー。どんな味がするんでしょうかねえ。」
私は手を合わせていただきますの動作をすると、おばあさんがアンコウはお醤油をかけてお召し上がりくださいと言って、お醤油のビンを私の前に持ってきてくれた。
しかしそのビンは口からお醤油が垂れてくるものではなく、スプレー状に放射するタイプのものだった。
「これだと塩分の摂り過ぎが防げますよ。」おばあさんが言った。
これは違う。
私はそう言いたかった。
~・~・~・~・~
~感想~
別のオチを考えていて、伏線のつもりで前半の文章を書いていましたが、オチを途中で変更してしまったので意味のない文章が続く物になってしまいました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる