161 / 174
第161回『上着 クリーニング 泣き虫』
しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第161回『上着 クリーニング 泣き虫』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は58分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=MXDiu5ARJcg
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
その殺し屋は泣き虫だった。
殺し屋としての腕は一流だった。
豊富な殺害方法、冷静かつ柔軟な判断力、アスリートや格闘家なみの身体能力、依頼人への義理、そしてそれらに裏付けられた依頼内容の完璧な履行。
表向きは父から受け継いださびれた駄菓子屋の主人をやっていた。
その偽装をより確かなものにするためにも男は地元の行事や自治会にも積極的に参加して、地域の住民の一人として良識のある市民を演じていた。
しかし彼の流す涙は本物だった。
彼はうれしい時も悲しい時も、心が揺さぶられたときはいつだってすぐに泣いた。
みんなで協力して行った行事が無事に成功して打ち上げをしているときも、みんなが楽しくお酒を呑む中彼は感極まって泣いてしまい、一同の笑いと涙を誘った。
地域猫が仔猫を産んだときも泣いた。
そして矛盾しているように聞こえるかもしれないが、彼をターゲットを殺すときもいつも泣いていた。
殺す理由は聞かないのがこの世界の鉄則なので、ターゲットが善人なのか悪人なのかわからない。
この仕事に疑問を持っているわけでもない。
ただただこの世界から人が一人消えてしまうことが悲しいのだ。
思えば彼は車に轢かれた猫を見たときも泣いたし、クモの巣に虫が引っかかっているのを見たときも泣いた。
ある朝彼の家のインターホンが鳴った。
警察だった。
一連の殺人の重要参考人として彼の名が挙がったのだ。
男が警察に連れられて家から出てきたとき、周りには地域の住民が囲っていた。
みな彼が警察に連れていかれることに納得が行かない様子だった。
困った警察は事情を説明した。
調べによると彼は上着をクリーニングに出す回数が多いのだ。
それは犯行時についた血や匂いを完全に取り除くためなのではないかという疑いを警察は持った。
それを聞いたとき、住民たちは一斉に大笑いをした。
「そんな理由で殺人を疑われるなんて。」
「その人はね、泣き虫なんだよ。夕焼けを見ても泣いちゃうぐらいにね。」
「だからクリーニングだって、涙で濡れた服を出せば回数だって多くなるさ。」
途端に辺りは警察への非難の嵐となった。
ひるんでいる警察を見て住民はここぞとばかりにさらにたたみかけた。
「その人はね、泣き虫なんだよ。星空を見ても泣いちゃうぐらいにね。」
「だから古着の資源ごみだって、涙で濡れた服を捨てれば量だって多くなるさ。」
それを聞いて警察は目を光らせた。
「よし、彼がゴミに出した服を調べよう。」
男は泣いた。
~・~・~・~・~
~感想~
泣き虫で子供の話にするのはいやだなと思ってので、真逆に考えて殺し屋の話にしました。
オチがあまり決まらないまま書き始め、しかも終盤になってクリーニングをコインランドリーの類と勘違いしていたことに気付き、オチの修正に苦労しました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第161回『上着 クリーニング 泣き虫』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は58分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=MXDiu5ARJcg
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
その殺し屋は泣き虫だった。
殺し屋としての腕は一流だった。
豊富な殺害方法、冷静かつ柔軟な判断力、アスリートや格闘家なみの身体能力、依頼人への義理、そしてそれらに裏付けられた依頼内容の完璧な履行。
表向きは父から受け継いださびれた駄菓子屋の主人をやっていた。
その偽装をより確かなものにするためにも男は地元の行事や自治会にも積極的に参加して、地域の住民の一人として良識のある市民を演じていた。
しかし彼の流す涙は本物だった。
彼はうれしい時も悲しい時も、心が揺さぶられたときはいつだってすぐに泣いた。
みんなで協力して行った行事が無事に成功して打ち上げをしているときも、みんなが楽しくお酒を呑む中彼は感極まって泣いてしまい、一同の笑いと涙を誘った。
地域猫が仔猫を産んだときも泣いた。
そして矛盾しているように聞こえるかもしれないが、彼をターゲットを殺すときもいつも泣いていた。
殺す理由は聞かないのがこの世界の鉄則なので、ターゲットが善人なのか悪人なのかわからない。
この仕事に疑問を持っているわけでもない。
ただただこの世界から人が一人消えてしまうことが悲しいのだ。
思えば彼は車に轢かれた猫を見たときも泣いたし、クモの巣に虫が引っかかっているのを見たときも泣いた。
ある朝彼の家のインターホンが鳴った。
警察だった。
一連の殺人の重要参考人として彼の名が挙がったのだ。
男が警察に連れられて家から出てきたとき、周りには地域の住民が囲っていた。
みな彼が警察に連れていかれることに納得が行かない様子だった。
困った警察は事情を説明した。
調べによると彼は上着をクリーニングに出す回数が多いのだ。
それは犯行時についた血や匂いを完全に取り除くためなのではないかという疑いを警察は持った。
それを聞いたとき、住民たちは一斉に大笑いをした。
「そんな理由で殺人を疑われるなんて。」
「その人はね、泣き虫なんだよ。夕焼けを見ても泣いちゃうぐらいにね。」
「だからクリーニングだって、涙で濡れた服を出せば回数だって多くなるさ。」
途端に辺りは警察への非難の嵐となった。
ひるんでいる警察を見て住民はここぞとばかりにさらにたたみかけた。
「その人はね、泣き虫なんだよ。星空を見ても泣いちゃうぐらいにね。」
「だから古着の資源ごみだって、涙で濡れた服を捨てれば量だって多くなるさ。」
それを聞いて警察は目を光らせた。
「よし、彼がゴミに出した服を調べよう。」
男は泣いた。
~・~・~・~・~
~感想~
泣き虫で子供の話にするのはいやだなと思ってので、真逆に考えて殺し屋の話にしました。
オチがあまり決まらないまま書き始め、しかも終盤になってクリーニングをコインランドリーの類と勘違いしていたことに気付き、オチの修正に苦労しました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
→誰かに話したくなる面白い雑学
ノアキ光
エッセイ・ノンフィクション
(▶アプリ無しでも読めます。 目次の下から読めます)
見ていただきありがとうございます。
こちらは、雑学の本の内容を、自身で読みやすくまとめ、そこにネットで調べた情報を盛り込んだ内容となります。
驚きの雑学と、話のタネになる雑学の2種類です。
よろしくおねがいします。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
日々雑記
いとくめ
エッセイ・ノンフィクション
気を抜くとあっというまに散らかり放題になるわたしの頭の中の記録みたいなものですが、ひょっとして誰かの暇つぶしになればうれしいです。
※以前投稿したものもたまに含まれます
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる