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第139回『リストバンド インディアン 能力』
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ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第139回『リストバンド インディアン 能力』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約54分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=EjJAM7u-j6Y
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
俺は額を床につけた。
目の前にいるのは素人でありながらかつてインディアンポーカー無敗と恐れられた老師だ。
何人ものプロが彼によって食われてきた。
しかし老師は俺に背を向けたままだ。
「お願いします。今度のインディアンポーカーの世界大会、なんとしても優勝したいんです。」
すると老師がぼつりと口を開いた。
「わしの修行に文句ひとつ言わずついてこれるか?」
俺の顔はぱっと明るくなった。
なぜなら老師は今まで弟子を一人もとったことがないからだ。
「はい! よろしくお願いします!」
言い終わるや否や俺の前に何かが無造作に投げ捨てられた。
青いタオル生地のそれを手に取ってみると、リストバンドだとわかった。
アスリートのトレーニング用で、ずっしりとしたその重さは5キロほどはあるのではないだろうかと思えた。
そしてそれは一つだけであり、片方にしかつけられない。
「今からずっと、そのリストバンドを右手につけよ。24時間、どんなときもだ。わしの修行はそれだけだ。」
正直に言うと俺は少しあっけにとられた。
こんなことで本当にインディアンポーカーが強くなれるのだろうかと疑問に思わざるをえないからだ。
しかし老師の口ぶりは本気だった。
俺をからかったりしているわけではないということはわかった。
これが老師なりのインディアンポーカーが強くなる修行なのだろう。
ならば俺も何も言わずに本気でこの修行をやろうと決意した。
5キロはとても重い。
それを常に身に着けて日常生活を送るのは誰にでもできることではないだろう。
だが、だからこそやる価値もあるのだ。
俺は深々と謝意を告げると、老師のもとから去った。
そして世界大会の日が来た。
会場には何人ものスタープレイヤーが綺羅星の如くそろっていた。
その姿、口ぶりは世界のトップが集う大会であるにもかかわらず自信と落ち着きに満ちていた。
彼らはこの日に向けて様々な練習をしてきたのだろう。
俺はというと、老師の言いつけどおりリストバンドをつけた生活を送っていただけだ。
あの重さに慣れるのが精いっぱいで、練習試合すら一戦もできなかった。
また、リストバンドをつけ続けた意味も最後までわからないままだった。
はたしてこんなことで俺は強くなれたのだろうか。
俺は試合が近づくにつれて鼓動が高鳴っていくのを感じた。
「あ、あのう、あなたは無敗とうたわれたあの伝説の老師ですよね? 今日はなぜこのような場所にいらしたんですか?」
友人の応援に駆け付けていたTシャツ姿の若い男が、会場の隅の壁にいた一人の老人に話しかけた。
しかしその老人は何も言わず、手で追い払うしぐさをするだけだったので、若い男は仕方なくその場から退散した。
老人はCテーブルで始まった第1回戦を見やりながら、独り言をつぶやいた。
「インディアンポーカーは相手の表情から心理を見抜くゲーム。しかし己の心理にゆるみや焦りがあると、それが阻害される。では己の心理を揺るがすものは何か。それは試合中常にカードを額にかざし続けるゆえに生じる疲労である。その疲労が体調に変化を及ぼし、相手の心理を見誤ってきた猛者どもをかつて何人も見てきた。」
老師は不敵な笑みを浮かべた。
「あのリストバンドはその疲労を防ぐためのもの。修行に耐えられてものならば、カードをかざし続けることなど造作もないだろう。これで貴様の能力は存分に発揮できる。さあ、やれ! 食ってやれ! 疲労を気にせず相手の心理を読むことに全てを集中するのだ!」
Cテーブルの所定のイスに座ると、俺の前にカードが一枚鮮やかに配られた。
このカードが大きい数字なのか、小さい数字なのか、全ては他のプレイヤーの表情から読み取るしかない。
さあ、試合開始だ。
俺は修行により筋肉ムキムキになった右手を胸に当て呼吸を整えると、左手でカードを額にかざした。
~・~・~・~・~
~感想~
お題のインディアンは差別用語になりかねないので、とにかく別の使い方をすることを考え一番最初に思いついたのがポーカーでした。
ちゃんとしたルールとかは知りません。
残りのお題のリストバンドと能力から、練習などを連想したので世界大会の優勝を目指す男の話にしました。
世界大会があるのかは知りません。
2,3個のオチを考えながら書き進めていたのですが、後半辺りで別のオチを思いついたのでそれに変更しました。
ちなみに最初と最後の文章に額という文字が出てくるのは偶然です。
あとショートショートについて勉強しなければと思って最近文庫本で1本だけ読んだのですが(一冊ではない笑)、それが途中で人称だか視点が変わる話でした。
自分もそれをやってみたいなあと思って見様見真似でやってみましたが、これだとわかりやすさのために視点が変わったというだけで、構造だとかトリックとかの要素がないのでへたくそというほかありません。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第139回『リストバンド インディアン 能力』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約54分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=EjJAM7u-j6Y
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
俺は額を床につけた。
目の前にいるのは素人でありながらかつてインディアンポーカー無敗と恐れられた老師だ。
何人ものプロが彼によって食われてきた。
しかし老師は俺に背を向けたままだ。
「お願いします。今度のインディアンポーカーの世界大会、なんとしても優勝したいんです。」
すると老師がぼつりと口を開いた。
「わしの修行に文句ひとつ言わずついてこれるか?」
俺の顔はぱっと明るくなった。
なぜなら老師は今まで弟子を一人もとったことがないからだ。
「はい! よろしくお願いします!」
言い終わるや否や俺の前に何かが無造作に投げ捨てられた。
青いタオル生地のそれを手に取ってみると、リストバンドだとわかった。
アスリートのトレーニング用で、ずっしりとしたその重さは5キロほどはあるのではないだろうかと思えた。
そしてそれは一つだけであり、片方にしかつけられない。
「今からずっと、そのリストバンドを右手につけよ。24時間、どんなときもだ。わしの修行はそれだけだ。」
正直に言うと俺は少しあっけにとられた。
こんなことで本当にインディアンポーカーが強くなれるのだろうかと疑問に思わざるをえないからだ。
しかし老師の口ぶりは本気だった。
俺をからかったりしているわけではないということはわかった。
これが老師なりのインディアンポーカーが強くなる修行なのだろう。
ならば俺も何も言わずに本気でこの修行をやろうと決意した。
5キロはとても重い。
それを常に身に着けて日常生活を送るのは誰にでもできることではないだろう。
だが、だからこそやる価値もあるのだ。
俺は深々と謝意を告げると、老師のもとから去った。
そして世界大会の日が来た。
会場には何人ものスタープレイヤーが綺羅星の如くそろっていた。
その姿、口ぶりは世界のトップが集う大会であるにもかかわらず自信と落ち着きに満ちていた。
彼らはこの日に向けて様々な練習をしてきたのだろう。
俺はというと、老師の言いつけどおりリストバンドをつけた生活を送っていただけだ。
あの重さに慣れるのが精いっぱいで、練習試合すら一戦もできなかった。
また、リストバンドをつけ続けた意味も最後までわからないままだった。
はたしてこんなことで俺は強くなれたのだろうか。
俺は試合が近づくにつれて鼓動が高鳴っていくのを感じた。
「あ、あのう、あなたは無敗とうたわれたあの伝説の老師ですよね? 今日はなぜこのような場所にいらしたんですか?」
友人の応援に駆け付けていたTシャツ姿の若い男が、会場の隅の壁にいた一人の老人に話しかけた。
しかしその老人は何も言わず、手で追い払うしぐさをするだけだったので、若い男は仕方なくその場から退散した。
老人はCテーブルで始まった第1回戦を見やりながら、独り言をつぶやいた。
「インディアンポーカーは相手の表情から心理を見抜くゲーム。しかし己の心理にゆるみや焦りがあると、それが阻害される。では己の心理を揺るがすものは何か。それは試合中常にカードを額にかざし続けるゆえに生じる疲労である。その疲労が体調に変化を及ぼし、相手の心理を見誤ってきた猛者どもをかつて何人も見てきた。」
老師は不敵な笑みを浮かべた。
「あのリストバンドはその疲労を防ぐためのもの。修行に耐えられてものならば、カードをかざし続けることなど造作もないだろう。これで貴様の能力は存分に発揮できる。さあ、やれ! 食ってやれ! 疲労を気にせず相手の心理を読むことに全てを集中するのだ!」
Cテーブルの所定のイスに座ると、俺の前にカードが一枚鮮やかに配られた。
このカードが大きい数字なのか、小さい数字なのか、全ては他のプレイヤーの表情から読み取るしかない。
さあ、試合開始だ。
俺は修行により筋肉ムキムキになった右手を胸に当て呼吸を整えると、左手でカードを額にかざした。
~・~・~・~・~
~感想~
お題のインディアンは差別用語になりかねないので、とにかく別の使い方をすることを考え一番最初に思いついたのがポーカーでした。
ちゃんとしたルールとかは知りません。
残りのお題のリストバンドと能力から、練習などを連想したので世界大会の優勝を目指す男の話にしました。
世界大会があるのかは知りません。
2,3個のオチを考えながら書き進めていたのですが、後半辺りで別のオチを思いついたのでそれに変更しました。
ちなみに最初と最後の文章に額という文字が出てくるのは偶然です。
あとショートショートについて勉強しなければと思って最近文庫本で1本だけ読んだのですが(一冊ではない笑)、それが途中で人称だか視点が変わる話でした。
自分もそれをやってみたいなあと思って見様見真似でやってみましたが、これだとわかりやすさのために視点が変わったというだけで、構造だとかトリックとかの要素がないのでへたくそというほかありません。
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