122 / 174
第122回『片道切符 麻婆豆腐 激安』
しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第122回『片道切符 麻婆豆腐 激安』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約54分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=WL4TQPRr_Ok
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
目の前では豆板醤で真っ赤になったひき肉がぐつぐつと煮えたぎっていた。
茄子はそれを見てふーっと息を吐いた。
汗が止まらないのはひき肉から沸き立つもうもうとした湯気のせいだけではなかった。
茄子は目をつぶり天を仰いだ。
茄子として生まれ、大きく育った自分の人生を振り返っていたのかもしれない。
茄子は足を小さく踏み鳴らすことで緊張をほぐそうとしていた。
茄子はこの時ほど自分の皮の色が紫で良かったと思ったことはなかった。
もしも元々の色が白だったら、あるいは黄色だったら、周囲からは今の自分が青ざめていることがばれてしまっていただろう。
茄子は茄子として生まれてきたことに感謝の気持ちがわいてきた。
そして次に、茄子としての運命を果たそう、そう思えた。
ならばあとはこの鍋に向かって飛び込むだけだ。
茄子は両足を踏ん張った。
そのとき誰かが茄子の肩を掴んだ。
春雨だった。
「ばかやろうっ。お前麻婆茄子になる気かよっ?」
「そうさ。だって麻婆の中にとろとろの茄子が入ってるとおいしいだろ? あれが麻婆っていうのか知らんけど。」
茄子は鍋の中の挽肉を見ながら乾いた笑いを浮かべた。
しかし茄子の肩を掴む春雨の手には力が入るばかりだった。
「とろとろ? 確かにな! でも、でもそれだけだろっ?」
春雨はまっすぐ鍋の中を指さした。
「見ろあのひき肉を! 豆板醤となじんですっごく辛いんだぞ! おまけに油と片栗粉で炒められて熱々だ!」
春雨は声のトーンを一段落とした。
「そんな中に俺が入ってみろ。春雨をちゅるちゅるとすすれば辛さが和らぐ。オアシスだ!」
茄子は目を見開き、初めて春雨の顔をまっすぐ見た。
「お前、まさかっ……。」
春雨はお湯をかぶった。
春雨の下ごしらえだ。
「そうだ。麻婆春雨になれば、食べる人もっ……。」
どすっ。
どすっ。
茄子と春雨の延髄に衝撃が走った。
二人はひざからがくんと倒れた。
薄れそうな意識の中、二人が見上げるとそこに立っていたのはお豆腐だった。
「ふっ。お前らを行かせるわけにはいかねえよ……。」
豆腐は続けた。
「麻婆を食う奴らはな、むしろ辛さと熱さを求めているんだ。だから麻婆を食うという行為は地獄への片道切符でいいんだ。なあに、心配するな。辛さを求める人間の命なんて激安さ。ものの数にならん。ならばお望み通り辛さでしびれている舌の上に熱々の豆腐が乗っかることで、奴らにさらなる地獄を見せてやるぜ!」
最後の力を振り絞って茄子と春雨が伸ばした手も届かなかった。
豆腐はすでに鍋に向かって飛び込んでいた。
「うおりゃああぁぁぁーーーーっ!」
落下の最中に豆腐の体に格子状の切れ目が入った。
次の瞬間、豆腐は角切りとなってばらばらに別れ、鍋の中へと落ちていった。
それを見届けると、茄子と春雨もまた深い意識の底へと落ちていった。
次に彼らを呼び覚ますのは、麻婆豆腐を食べた人の、辛さと熱さにもだえる叫び声だった。
~・~・~・~・~
~感想~
激安の麻婆豆腐だけど、辛すぎて食べるのは地獄への片道切符みたいな話しか思いつかなくて、そこから逃れるためにヘンテコな話にしようと思いました。
そうしたら豆腐と茄子と春雨が争う話になりました。
少年漫画のような展開を意識しました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第122回『片道切符 麻婆豆腐 激安』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約54分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=WL4TQPRr_Ok
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
目の前では豆板醤で真っ赤になったひき肉がぐつぐつと煮えたぎっていた。
茄子はそれを見てふーっと息を吐いた。
汗が止まらないのはひき肉から沸き立つもうもうとした湯気のせいだけではなかった。
茄子は目をつぶり天を仰いだ。
茄子として生まれ、大きく育った自分の人生を振り返っていたのかもしれない。
茄子は足を小さく踏み鳴らすことで緊張をほぐそうとしていた。
茄子はこの時ほど自分の皮の色が紫で良かったと思ったことはなかった。
もしも元々の色が白だったら、あるいは黄色だったら、周囲からは今の自分が青ざめていることがばれてしまっていただろう。
茄子は茄子として生まれてきたことに感謝の気持ちがわいてきた。
そして次に、茄子としての運命を果たそう、そう思えた。
ならばあとはこの鍋に向かって飛び込むだけだ。
茄子は両足を踏ん張った。
そのとき誰かが茄子の肩を掴んだ。
春雨だった。
「ばかやろうっ。お前麻婆茄子になる気かよっ?」
「そうさ。だって麻婆の中にとろとろの茄子が入ってるとおいしいだろ? あれが麻婆っていうのか知らんけど。」
茄子は鍋の中の挽肉を見ながら乾いた笑いを浮かべた。
しかし茄子の肩を掴む春雨の手には力が入るばかりだった。
「とろとろ? 確かにな! でも、でもそれだけだろっ?」
春雨はまっすぐ鍋の中を指さした。
「見ろあのひき肉を! 豆板醤となじんですっごく辛いんだぞ! おまけに油と片栗粉で炒められて熱々だ!」
春雨は声のトーンを一段落とした。
「そんな中に俺が入ってみろ。春雨をちゅるちゅるとすすれば辛さが和らぐ。オアシスだ!」
茄子は目を見開き、初めて春雨の顔をまっすぐ見た。
「お前、まさかっ……。」
春雨はお湯をかぶった。
春雨の下ごしらえだ。
「そうだ。麻婆春雨になれば、食べる人もっ……。」
どすっ。
どすっ。
茄子と春雨の延髄に衝撃が走った。
二人はひざからがくんと倒れた。
薄れそうな意識の中、二人が見上げるとそこに立っていたのはお豆腐だった。
「ふっ。お前らを行かせるわけにはいかねえよ……。」
豆腐は続けた。
「麻婆を食う奴らはな、むしろ辛さと熱さを求めているんだ。だから麻婆を食うという行為は地獄への片道切符でいいんだ。なあに、心配するな。辛さを求める人間の命なんて激安さ。ものの数にならん。ならばお望み通り辛さでしびれている舌の上に熱々の豆腐が乗っかることで、奴らにさらなる地獄を見せてやるぜ!」
最後の力を振り絞って茄子と春雨が伸ばした手も届かなかった。
豆腐はすでに鍋に向かって飛び込んでいた。
「うおりゃああぁぁぁーーーーっ!」
落下の最中に豆腐の体に格子状の切れ目が入った。
次の瞬間、豆腐は角切りとなってばらばらに別れ、鍋の中へと落ちていった。
それを見届けると、茄子と春雨もまた深い意識の底へと落ちていった。
次に彼らを呼び覚ますのは、麻婆豆腐を食べた人の、辛さと熱さにもだえる叫び声だった。
~・~・~・~・~
~感想~
激安の麻婆豆腐だけど、辛すぎて食べるのは地獄への片道切符みたいな話しか思いつかなくて、そこから逃れるためにヘンテコな話にしようと思いました。
そうしたら豆腐と茄子と春雨が争う話になりました。
少年漫画のような展開を意識しました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
簡単ズボラ飯
ゆうなぎ
エッセイ・ノンフィクション
カット野菜や水煮野菜、冷凍食材や缶詰などをフル活用した簡単ズボラ飯の数々。
料理は苦手だけど、たまには手作りのものが食べたい時や、あと一品おかずが欲しいなという時などにどうぞ。
女ハッカーのコードネームは @takashi
一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか?
その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。
守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。
私が体験したスピリチュアルを日記にしました
”kataware片割れ”×2
エッセイ・ノンフィクション
小さい頃から生きづらさを感じて彷徨い続けたわたし
もがけばもがくほど
どん底に落ちていった
本当に本当に苦しくて、もうダメだ、と思ったとき
密教の呪術を駆使して多くの人を救っていた和尚に出会った
目の前で繰り広げられる密教の加持祈祷。護摩壇に燃える聖なる炎、唱える真言、結ばれる印。私の中の何かが目覚め、やがて私を取り巻く宇宙を動かし始めた。多くの人が救われたように、私もそのパワーによって救われた
それからの私は、和尚のもとに通い詰めた。そのたびにいろいろなことを教わった。見えない世界で起きている本当のこと、この世界のすぐ上にある幽界や霊界のこと、人の生き死にや輪廻転生、前世やカルマについて、などなど。数えあげたらきりがない。
そしてまた、人生の第二幕ともいうべき遭遇。。。目の前に現れた光の存在
このときの私は光側ではなく闇側の世界を探求していた。そして自分の能力を超えて奥深くまで入りすぎてしまったため大きな憑依を受けてしまったのだ。いつもなら和尚に助けてもらうのだが、和尚はインドで修行中だった、それも半年も・・・、私は死にかけた。3か月で9㎏も痩せた。最後には水も飲めなくなった。それでも毎晩のように襲ってくる、何か、はまったく容赦してくれなかった。
もうダメだ、もう限界かもしれない
そう思ったとき今度は目の前に救世主が降りてきた
「あなたさあー
さすがに今回はマズいでしょ
このままじゃ死んじゃうわよ」
まぶしいほどの光に包まれて降りてきたのは「シュアクリーナ」という美しい女性だった。彼女は私の魂の片割れ、光のツインレイでもあるそうだ
突然の出来事に私の頭は混乱したが、そんな私をよそ目に
「あなたは3000年前のインドにいたときも同じような状態になり死にかけたのよ。そのときも私があなたを助けたのだけど......覚えて......ない......よね」
3000年前のインドって?
なんですかそれ!!!
こんな体験が繰り返された私の物語をお伝えしたくなりました。
ーーーーーーーーーー
私は自分自身に起きた嘘のような本当の話を日記に書きとめてきました。その日記を紐解きながら、改めて整理してまとめてみました。これも何かのご縁だと思います。読んでくださるあなたの人生に少しでも役立つことを願っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる