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第110回『花いちもんめ 未来永劫 破裂音』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第110回『花いちもんめ 未来永劫 破裂音』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間9分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=75ZEz7nYPis
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「おめえら、売人と話がついた。今夜ケシの花を売りに行くぞ。」
中本が電話を切るなり、組員たちに号令をかけた。
中本たちはやくざであり、この辺り一帯の麻薬の売買を手掛けていた。
警察の目をかいくぐって行う必要があり、また、その分利ざやも大きいため、組員たちにも身震いが走った。
「ということは、花いちもんめをやりにいくということですね。」
「そういうことだ。」
中本はうなずいた。
花いちもんめとは彼らが麻薬の売買をするときの値段の交渉である。
ルールは子どもの遊びの花いちもんめそのものである。
最初にお互い売値と買値を提示する。
代表者がじゃんけんをする。
そして勝った方の提示した値段で取引は行われるのである。
「相手は、どこですか?」
「東京まんぢ団だ……。」
組員たちの間に戦慄が走った。
「と、東狂まんぢ団っ。この界わいじゃじゃんけん最強の……!」
「ここ数年間で俺たち何回あいつらに勝てたよっ?」
「くそ、また値切られちまうのかっ。」
机を叩いく組員たちを中本は制した。
いや、幹部として制する必要があっただけで、彼も絶望的な気分だったのかもしれない。
「あわてるな。おめえら、それでもうちの組のモンか? まだ負けたと決まったわけじゃないだろ……。」
そのとき一人の男が前に出た。
「中本さん、今夜じゃんけんは俺にやらせてくれませんか?」
その男の名前は井上であり、最近組の中でも武闘派として頭角を現していた。
井上はけんかっ早いことで有名で、切れたら組員が束になっても抑えられなかった。
東狂まんぢ団とのじゃんけんに自ら名乗り出る組員なんて初めてだったので、中本も最初は飲み込めなかった。
「お前、花いちもんめは初めてだろ?」
「じゃんけんなら、保育園に入る前から何度もやってきました。」
井上の目はまっすぐ中本を見ていた。
「よし、お前に任せよう。」
夜の港には少し冷たい風が吹いていた。
中本と井上を始め組の者たちの正面には、黒いジャンパーをアイコンにしている東狂まんぢ団の面々がそろっていた。
面々とは言っても、花いちもんめをやるのに必要な人数である5人きっかりである。
運転手を含めなくても10人以上で来ている中本たちとは、この時点で勝負がついていたのかもしれない。
中本はアタッシュケースを東狂まんぢ団に中の麻薬がよく見えるように開いた。
「確かに。」
東狂まんぢ団は納得したようである。
すると中本を含めて組員たちは5人一斉に横に並んだ。
もちろんそこには井上もいる。
東狂まんぢ団もすでに5人横一列に並んでいる。
中本たちも東狂まんぢ団も手をつないだ。
花いちもんめの始まりである。
「か~ってうれしいはないちもんめ」
東狂まんぢ団は歌いながら歩を進め、それに合わせて中本たちも後ろに下がった。
「はないちもんめ」の「め」のときに東狂まんぢ団は一斉に右足を上げた。
「くっ。」
その勢いに気圧されそうになった組員たちのつなぐ手に力が入った。
「まけ~てくやしいはないちもんめ」
負けていられないとばかりに組員たちも歩調を合わせて前に進み、革靴を履いた右足を高々と上げた。
「タンス長持ち あの子が欲しい あの子じゃわからん 相談しましょ そうしましょ。」
両者は輪になって相談を始めた。
「ど、どうします?」
「少し値段を下げていきましょうか?」
先ほどの東狂まんぢ団の動きを見て組員たちは弱気になっていた。
「ばかやろうっ。今回のヤクはいいモノだ。だから予定通りの値段で行く!」
となると、プレッシャーがかかるのはじぇんけんをする井上である。
「いいな、井上!」
井上は声もなくうなづいた。
その息遣いはすでにじゃんけんモードに入っていた。
「き~まった」
再び彼らは一列に並んで手をつないだ。
「300万円で欲しい」
「400万円で欲しい」
東狂まんぢ団の提示した値段に中本は歯ぎしりをした。
あの純度の麻薬に300は安すぎるのだ。
ここはなんとしても井上に勝ってほしかった。
中本の願いを肌で感じていた井上は体に緊張がみなぎっていた。
東狂まんぢ団の代表者が前に出て、井上も一歩遅れて前に出た。
運命の一戦が始まった。
「じゃんけん、ぽんっ。」
東狂まんぢ団の面々はアタッシュケースを抱えながら、港を去っていった。
その顔にはにやけた笑みが浮かんでいた。
港に取り残された中本たちはうなだれていた。
組員たちは東狂まんぢ団のじゃんけんの強さにただただ恐怖を感じていた。
井上はうつむいたまま、悔しさのあまり涙を流し始めた。
それを見た中本は井上の肩を叩いた。
「気にするな。じゃんけんなんて所詮運ゲーだ。未来永劫負け続けるなんてありえない。次、勝てばいいさ。」
井上は懐からピストルを取り出し空に向かって構えた。
「俺、次は、次こそはじゃんけん勝ちますっ!」
夜の港に泣き叫ぶような破裂音が響き渡った。
~・~・~・~・~
~感想~
花いちもんめを子どもとは真逆の存在にやらせようという方向性で話を考えました。
また、花いちもんめをやる正当な理由も必要だと思い、花からケシの花を連想し、やくさの麻薬の取引の話にしました。
破裂音も悩んだのですが、ピストルの音と彼らの悔しさを表現するものとして使用しました。
淡々とした流れの話なんだからもっと短く終わらせた方がよかったんじゃないかと思ってます。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第110回『花いちもんめ 未来永劫 破裂音』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
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詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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~・~・~・~・~
「おめえら、売人と話がついた。今夜ケシの花を売りに行くぞ。」
中本が電話を切るなり、組員たちに号令をかけた。
中本たちはやくざであり、この辺り一帯の麻薬の売買を手掛けていた。
警察の目をかいくぐって行う必要があり、また、その分利ざやも大きいため、組員たちにも身震いが走った。
「ということは、花いちもんめをやりにいくということですね。」
「そういうことだ。」
中本はうなずいた。
花いちもんめとは彼らが麻薬の売買をするときの値段の交渉である。
ルールは子どもの遊びの花いちもんめそのものである。
最初にお互い売値と買値を提示する。
代表者がじゃんけんをする。
そして勝った方の提示した値段で取引は行われるのである。
「相手は、どこですか?」
「東京まんぢ団だ……。」
組員たちの間に戦慄が走った。
「と、東狂まんぢ団っ。この界わいじゃじゃんけん最強の……!」
「ここ数年間で俺たち何回あいつらに勝てたよっ?」
「くそ、また値切られちまうのかっ。」
机を叩いく組員たちを中本は制した。
いや、幹部として制する必要があっただけで、彼も絶望的な気分だったのかもしれない。
「あわてるな。おめえら、それでもうちの組のモンか? まだ負けたと決まったわけじゃないだろ……。」
そのとき一人の男が前に出た。
「中本さん、今夜じゃんけんは俺にやらせてくれませんか?」
その男の名前は井上であり、最近組の中でも武闘派として頭角を現していた。
井上はけんかっ早いことで有名で、切れたら組員が束になっても抑えられなかった。
東狂まんぢ団とのじゃんけんに自ら名乗り出る組員なんて初めてだったので、中本も最初は飲み込めなかった。
「お前、花いちもんめは初めてだろ?」
「じゃんけんなら、保育園に入る前から何度もやってきました。」
井上の目はまっすぐ中本を見ていた。
「よし、お前に任せよう。」
夜の港には少し冷たい風が吹いていた。
中本と井上を始め組の者たちの正面には、黒いジャンパーをアイコンにしている東狂まんぢ団の面々がそろっていた。
面々とは言っても、花いちもんめをやるのに必要な人数である5人きっかりである。
運転手を含めなくても10人以上で来ている中本たちとは、この時点で勝負がついていたのかもしれない。
中本はアタッシュケースを東狂まんぢ団に中の麻薬がよく見えるように開いた。
「確かに。」
東狂まんぢ団は納得したようである。
すると中本を含めて組員たちは5人一斉に横に並んだ。
もちろんそこには井上もいる。
東狂まんぢ団もすでに5人横一列に並んでいる。
中本たちも東狂まんぢ団も手をつないだ。
花いちもんめの始まりである。
「か~ってうれしいはないちもんめ」
東狂まんぢ団は歌いながら歩を進め、それに合わせて中本たちも後ろに下がった。
「はないちもんめ」の「め」のときに東狂まんぢ団は一斉に右足を上げた。
「くっ。」
その勢いに気圧されそうになった組員たちのつなぐ手に力が入った。
「まけ~てくやしいはないちもんめ」
負けていられないとばかりに組員たちも歩調を合わせて前に進み、革靴を履いた右足を高々と上げた。
「タンス長持ち あの子が欲しい あの子じゃわからん 相談しましょ そうしましょ。」
両者は輪になって相談を始めた。
「ど、どうします?」
「少し値段を下げていきましょうか?」
先ほどの東狂まんぢ団の動きを見て組員たちは弱気になっていた。
「ばかやろうっ。今回のヤクはいいモノだ。だから予定通りの値段で行く!」
となると、プレッシャーがかかるのはじぇんけんをする井上である。
「いいな、井上!」
井上は声もなくうなづいた。
その息遣いはすでにじゃんけんモードに入っていた。
「き~まった」
再び彼らは一列に並んで手をつないだ。
「300万円で欲しい」
「400万円で欲しい」
東狂まんぢ団の提示した値段に中本は歯ぎしりをした。
あの純度の麻薬に300は安すぎるのだ。
ここはなんとしても井上に勝ってほしかった。
中本の願いを肌で感じていた井上は体に緊張がみなぎっていた。
東狂まんぢ団の代表者が前に出て、井上も一歩遅れて前に出た。
運命の一戦が始まった。
「じゃんけん、ぽんっ。」
東狂まんぢ団の面々はアタッシュケースを抱えながら、港を去っていった。
その顔にはにやけた笑みが浮かんでいた。
港に取り残された中本たちはうなだれていた。
組員たちは東狂まんぢ団のじゃんけんの強さにただただ恐怖を感じていた。
井上はうつむいたまま、悔しさのあまり涙を流し始めた。
それを見た中本は井上の肩を叩いた。
「気にするな。じゃんけんなんて所詮運ゲーだ。未来永劫負け続けるなんてありえない。次、勝てばいいさ。」
井上は懐からピストルを取り出し空に向かって構えた。
「俺、次は、次こそはじゃんけん勝ちますっ!」
夜の港に泣き叫ぶような破裂音が響き渡った。
~・~・~・~・~
~感想~
花いちもんめを子どもとは真逆の存在にやらせようという方向性で話を考えました。
また、花いちもんめをやる正当な理由も必要だと思い、花からケシの花を連想し、やくさの麻薬の取引の話にしました。
破裂音も悩んだのですが、ピストルの音と彼らの悔しさを表現するものとして使用しました。
淡々とした流れの話なんだからもっと短く終わらせた方がよかったんじゃないかと思ってます。
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