上 下
100 / 174

第100回『カニ フルカラー 蛇腹』

しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第100回『カニ フルカラー 蛇腹』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約時間分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=M9LOvX6ZeHs

↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/

~・~・~・~・~

「へー。上手に撮れてるねー。」
会社の後輩から、休日に行ったキャンプの写真を見せてもらっていた。
山を覆う森の緑、キラキラとまぶしい川面の光、岩の上を歩く小さなサワ、闇夜に揺らめく焚火、そしてその中で自然を満喫している後輩とその彼女。
「上手って適当にカメラまかせで撮っただけですよ。」
「デジタル一眼?」
「スマホっすよ。ていうか聞きますね、カメラのこと。」
後輩はキャンプについて聞いてほしいようだったが、それも当然だ。
彼はキャンプを趣味にしていて、キャンプの極意とか次はどこへ行くつもりだとかを頻繁に話しているからだ。
「ああ、ごめんごめん。もちろんキャンプも楽しそうだね。こんないいとこ行ったんだ?」
「いいですよ。先輩、カメラが趣味でしたもんね。」
そのあと後輩はキャンプの話を昼休みいっぱいに話した。
その口ぶりは本当に楽しそうだったので、私は思わずつぶやいた。
「私も今度の休みに家族を連れて行ってみようかなあ。」
すると後輩は目を輝かせて身を乗り出してきた。
「いいじゃないですか。行った方がいいですよ。絶対楽しいから。」
次の日には後輩は初心者でも楽しみやすいキャンプ場の候補を挙げてくれた。
また、キャンプセットをいろいろ貸してくれると言ってくれたので、お言葉に甘えてバーベキューセットだけ借りることにした。

「おはよう。」
「あ、おはようございます。」
今朝は後輩の方が先に出社していた。
「先輩、声、ちょっとお疲れですか?」
「あれ、そう聞こえる? 昨日キャンプに行ったからかな?」
「どうでした、楽しかったでしょう?」
「うん、子どもも初めてのキャンプでとても興奮してたよ。家内もいい気分転換になったみたいで、いいキャンプ場を紹介してくれて本当にありがとう。」
「写真も撮ったんですか?」
カメラが趣味の私に後輩はごく当然の話を切り出してきてくれた。
本当はキャンプそのものの話をしたいのに、私に気を遣ってくれたのは間違いない。
私は申し訳なく思いながら、カバンから取り出したのは写真の束だった。
プリントされてあったというのが予想外だったらしく、写真はモニターで見るという習慣が根付いている後輩は驚いていた。
さらに後輩を驚かせたのは、その写真が全て白黒だったということだ。
「あー、先輩、こういう写真が好きだったんですか。かっこいいっすねー。」
後輩は手に取って写真を一枚一枚まじまじと見ていた。
私が持っているのは祖父から譲ってもらった式の古いカメラだった。
現代のカメラと比べたらピントは甘く、思ったような構図も取れない、不便きわまりないものだとはわかっている。
しかしこれにモノクロフィルムを入れて撮ると‘とても味わい深い写真が撮れて、私はそれがたまらなく好きだった。
「うん。でも家族には不評だった。せっかくのキャンプに来たのに、モノクロじゃ色がわからないじゃんって。」
私は頭を掻いた。
妻に言われて義務感のようにスマホで思い出の写真を撮り、これらはその合間合間に撮ったものだったからだ。
すると後輩は写真を机に広げて指を指した。
「なに言ってんすか。これ、じゃないっすか。」
そんなはずはないと思って写真をのぞきこむと、後輩が指を指していたのはどれも私の家族だった。
「ほら、満面の喜色ですよ。」

~・~・~・~・~

~感想~
喜色満面というオチは比較的早く思いついたのですが、そこに向かってどう描けばいいか悩みました。
具体的には誰が、誰に、どういう流れで言うか、です。
結果的に、キャンプの描写はまるまる削って会社の二人だけで話が進むという構成にしました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

簡単ズボラ飯

ゆうなぎ
エッセイ・ノンフィクション
カット野菜や水煮野菜、冷凍食材や缶詰などをフル活用した簡単ズボラ飯の数々。 料理は苦手だけど、たまには手作りのものが食べたい時や、あと一品おかずが欲しいなという時などにどうぞ。

女ハッカーのコードネームは @takashi

一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか? その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。 守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...