91 / 174
第91回『交互 三寒四温 ヘアースタイル』
しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第91回『交互 三寒四温 ヘアースタイル』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間2分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=y21dODWtGa0
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
日曜日の午前中の喫茶店はとても静かだった。
俺はスマホを気にしながら文庫本を読んでいた。
今日は彼女とのデートだったので、待ち合わせの時間までここで待っているのだ。
個人経営の喫茶店ではコーヒーを挽く音とページをめくる音が交互に聞こえた。
それに時々ドアを開けたときの鐘の音。
するとズボンの中でスマホがぶるぶると震えた。
彼女からのSNSであり、そろそろ駅に到着するとのことだった。
さっとページにしおりをはさみこむと、俺は会計を済ませて喫茶店を出た。
外の空気はコーヒーで温まった俺の体でも冷たかった。
道を行く人もコートを着込みマフラーを巻いて、防寒対策に多くの努力を払っていた。
「寒いねー。」
すでにSNSで朝の挨拶をすませていた彼女の第一声はおはようではなかった。
冬の朝の光で、ニット帽から伸びる彼女の黒い髪が輝いていた。
「それじゃあ行こうか。映画館まで少し歩くけど。」
「いいんじゃない? 体が温まるから。」
俺たちは手をつないで歩き始めた。
最初は冷たかった二人の手もお互いの体温でやがて温かくなってきた。
思えば俺と彼女がデートするときはいつもこうやって手をつないで温め合ってきた。
「でも2,3日前は暖かったよな。俺、会社に着いた瞬間にコート脱いだもん。」
「だね。早朝はすごく寒いのに日が出てくると暖かくなったりするから、着るものに困ったりするよね。」
「面倒。」
しかし彼女は相槌を打ってくれなかった。
「でもまあその分女の子には今日どんな格好で行こうかなという楽しみもあるんだけどね。」
確かに俺はファッションに無頓着な方だったが、着るものを選ぶ楽しみは男にもあるんじゃないかと思った。
含みを持たせているような言い方だったので、これは俺にもっとおしゃれをしろというメッセージなのだろうかと、俺はさりげなく自分の服装を確認した。
うん、ださいな。
というか、普通の、普通過ぎる格好で、あまりデート向きでないところが彼女には不評なのかもしれないなと思った。
しかし彼女は俺の心を読んだかのように、女性のファッションについて語り出した。
「女の子にはね、男の子と違って、服装だけじゃなくていろいろ楽しみがあるんだよ。ヘアースタイルとかアクセとか。」
なるほど、と思った。
確かに男はそれほど髪をいじる余地はないし、アクセサリーの類もあまりつけない。
季節や天候を含めれば、その組み合わせは無限だ。
そこに気分や目的などの要素も加わり、女性は毎日鏡の前で複雑な四則計算をしているのかもしれない。
だが前方にポニーテールを揺らしながら歩く女性を見たとき、俺は記憶をたどってみた。
「でもお前、髪はいつもおろしてるだけなじゃない?」
「夏はしばったり上げたりしてるよ?」
彼女はすませた答え方をした。
「そうかもしれないけど、最近。最近はいつもそのままだろ。」
すると彼女はわざとらしくようやくわかったようなそぶりをした。
「あー、それは寒いからね。寒い日はおろしたくなるもんなのよ。」
「いっつもおろしてるじゃん。」
「いっつも寒いからねえ。」
そう言われてみれば俺と彼女のデートの日はいつも寒かったような気がする。
会社勤めの俺と彼女のデートは決まって日曜日だ。
俺の頭に三寒四温という言葉がよぎった。
寒い日が3日続くと暖かい日が4日続くことが多い冬の寒暖の周期を表している。
3日間と4日間が交互に繰り返されるのなら、その周期はちょうど1週間だ。
だとしたら俺は日曜日にしか彼女と会っていないから、いつも寒く、髪をおろした彼女しか見ていないのではないだろうか。
髪を上げたり、結んだ彼女も見たいという思いが込み上げてきた。
しかし彼女は黙ったままだった。
俺はなるべくそっけなく聞いた。
「平日にも会える?」
揺れた長い髪に隠れていたが、彼女は確かに笑っていた。
それも少しだけいたずらっぽく。
~・~・~・~・~
~感想~
三寒四温で気温に合わせて交互にヘアースタイルを変える女性という設定はすぐに思いついたのですが、それをどう話として落とし込めばいいかわかりませんでした。
なので大した起伏もなく、最後に彼女の誘導らしきものが突然出てくるだけという話になってしまいました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第91回『交互 三寒四温 ヘアースタイル』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間2分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=y21dODWtGa0
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
日曜日の午前中の喫茶店はとても静かだった。
俺はスマホを気にしながら文庫本を読んでいた。
今日は彼女とのデートだったので、待ち合わせの時間までここで待っているのだ。
個人経営の喫茶店ではコーヒーを挽く音とページをめくる音が交互に聞こえた。
それに時々ドアを開けたときの鐘の音。
するとズボンの中でスマホがぶるぶると震えた。
彼女からのSNSであり、そろそろ駅に到着するとのことだった。
さっとページにしおりをはさみこむと、俺は会計を済ませて喫茶店を出た。
外の空気はコーヒーで温まった俺の体でも冷たかった。
道を行く人もコートを着込みマフラーを巻いて、防寒対策に多くの努力を払っていた。
「寒いねー。」
すでにSNSで朝の挨拶をすませていた彼女の第一声はおはようではなかった。
冬の朝の光で、ニット帽から伸びる彼女の黒い髪が輝いていた。
「それじゃあ行こうか。映画館まで少し歩くけど。」
「いいんじゃない? 体が温まるから。」
俺たちは手をつないで歩き始めた。
最初は冷たかった二人の手もお互いの体温でやがて温かくなってきた。
思えば俺と彼女がデートするときはいつもこうやって手をつないで温め合ってきた。
「でも2,3日前は暖かったよな。俺、会社に着いた瞬間にコート脱いだもん。」
「だね。早朝はすごく寒いのに日が出てくると暖かくなったりするから、着るものに困ったりするよね。」
「面倒。」
しかし彼女は相槌を打ってくれなかった。
「でもまあその分女の子には今日どんな格好で行こうかなという楽しみもあるんだけどね。」
確かに俺はファッションに無頓着な方だったが、着るものを選ぶ楽しみは男にもあるんじゃないかと思った。
含みを持たせているような言い方だったので、これは俺にもっとおしゃれをしろというメッセージなのだろうかと、俺はさりげなく自分の服装を確認した。
うん、ださいな。
というか、普通の、普通過ぎる格好で、あまりデート向きでないところが彼女には不評なのかもしれないなと思った。
しかし彼女は俺の心を読んだかのように、女性のファッションについて語り出した。
「女の子にはね、男の子と違って、服装だけじゃなくていろいろ楽しみがあるんだよ。ヘアースタイルとかアクセとか。」
なるほど、と思った。
確かに男はそれほど髪をいじる余地はないし、アクセサリーの類もあまりつけない。
季節や天候を含めれば、その組み合わせは無限だ。
そこに気分や目的などの要素も加わり、女性は毎日鏡の前で複雑な四則計算をしているのかもしれない。
だが前方にポニーテールを揺らしながら歩く女性を見たとき、俺は記憶をたどってみた。
「でもお前、髪はいつもおろしてるだけなじゃない?」
「夏はしばったり上げたりしてるよ?」
彼女はすませた答え方をした。
「そうかもしれないけど、最近。最近はいつもそのままだろ。」
すると彼女はわざとらしくようやくわかったようなそぶりをした。
「あー、それは寒いからね。寒い日はおろしたくなるもんなのよ。」
「いっつもおろしてるじゃん。」
「いっつも寒いからねえ。」
そう言われてみれば俺と彼女のデートの日はいつも寒かったような気がする。
会社勤めの俺と彼女のデートは決まって日曜日だ。
俺の頭に三寒四温という言葉がよぎった。
寒い日が3日続くと暖かい日が4日続くことが多い冬の寒暖の周期を表している。
3日間と4日間が交互に繰り返されるのなら、その周期はちょうど1週間だ。
だとしたら俺は日曜日にしか彼女と会っていないから、いつも寒く、髪をおろした彼女しか見ていないのではないだろうか。
髪を上げたり、結んだ彼女も見たいという思いが込み上げてきた。
しかし彼女は黙ったままだった。
俺はなるべくそっけなく聞いた。
「平日にも会える?」
揺れた長い髪に隠れていたが、彼女は確かに笑っていた。
それも少しだけいたずらっぽく。
~・~・~・~・~
~感想~
三寒四温で気温に合わせて交互にヘアースタイルを変える女性という設定はすぐに思いついたのですが、それをどう話として落とし込めばいいかわかりませんでした。
なので大した起伏もなく、最後に彼女の誘導らしきものが突然出てくるだけという話になってしまいました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
→誰かに話したくなる面白い雑学
ノアキ光
エッセイ・ノンフィクション
(▶アプリ無しでも読めます。 目次の下から読めます)
見ていただきありがとうございます。
こちらは、雑学の本の内容を、自身で読みやすくまとめ、そこにネットで調べた情報を盛り込んだ内容となります。
驚きの雑学と、話のタネになる雑学の2種類です。
よろしくおねがいします。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ノンフィクション短編集
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
各話読み切り、全て実話。
あー、あるある、と思う話や、こんなこと本当に経験したの? と思う話まで。
色々取り揃えてお送りします。
不定期更新です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【ショートショート】雨のおはなし
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる