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第41回『需要と供給 格付け マリーゴールド』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第41回『需要と供給 格付け マリーゴールド』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間1分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=P-H_5uqC-4s
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
バタン。
我が家のドアが重い音を家の中に響かせた。
その後にわずかだけドアに設置された郵便受けのフタが振動する音もついてくる。
それは夫の帰宅を告げる音だ。
いつも通り革靴を脱ぐ音が続いた。
「ただいま。売ってなかったよ、マリーゴールド。」
夫のその一言でお帰りを言うこともできなかった。
「なんと。どこ見てきたの?」
「どこって駅前の花屋さんに決まってるじゃん。」
「そこだけ?」
「そこだけってこれでも少し遠回りしたんだから。」
夫は寝室で着替えを始めた。
「そっかー。やっぱ今人気なのかなー。」
マリーゴールドは現在大ヒット中の曲のタイトルで、それに影響を受けて今若者の間で花自体にも人気に火がついているらしい。
そう言いつつも私がマリーゴールドを求めるのも彼らと同じ理由だ。
「素直に種から育てれば?」
「やだ! 私は今欲しいの。マリーゴールド!」
種を買っても植えることができるのは半年以上も先であり、花が咲くのはさらに一か月後になる。
流行っているものは流行っているうちに手に入れなければ意味がないのだ。
「マリーゴールドたちは急に自分たちの格付けが上がってびっくりしているだろうね。本人たちは何一つ変わってないつもりなのに。」
着替えを終えて寝室から出てきた夫に麦茶の入ったコップを渡すと、喉を鳴らして飲み始めた。
「そう、きっと花の世界のゴールドマン・サックスがマリーゴールドを格上げしたんだよ。」
どうやら麦茶を飲んでいる間に思いついたダジャレらしく、夫は口を離すと同時に言った。
そんなにあわてなくても私はゴールドマン・サックスという言葉を知らないので、そのダジャレを先に言われる恐れはなかったのにと思った。
「まあ流行しているときは需要に供給が追い付かないからね。あきらめるしかないよ。」
渾身のダジャレが滑ったと思ったのか、夫は取り繕うように言った。
「うおー、花屋よー、マリーゴールドをもっと繁殖させてくれー。」
私はほうれん草をじゃっじゃっと炒めながら天に向かって願った。
「花には花の事情があるさ。マリーゴールドは恋愛の歌だろ? 案外花の方も人間みたいに生涯の相手は一人だけがいいと思ってるかもよ。」
部屋の中にはじゅうじゅうというほうれん草を炒める音だけがした。
コップをテーブルにそっと置く音もしたので、夫は麦茶をもう一口ちびりと飲んだのだろう。
「……私と結婚して良かったと思ってる?」
私はほうれん草を炒める手を休めないままぽつりと聞いた。
うん。
菜箸がフライパンの上を反復する合間に夫の返事が聞こえた。
コンロの火を止めても余熱でほうれん草はじゅうじゅうといっていた。
私はフライパンを片手に振り返って夫の方を見た。
「じゃあさ、代わりにゴールドのネックレス買ってよ。」
「明日他の花屋も見てきます。」
夫が右手を頭に当て軍人のように敬礼をした。
私はネックレスはもちろんマリーゴールドもそんなに欲しくないんだろうなとはわかってた。
かまってほしいだけの私とそれに付き合ってくれる夫。
この需要と供給だけはいつも釣り合っている。
~・~・~・~・~
~感想~
マリーゴールドをどう使えばいいかわからなかったので、仕方なく既存の曲を借りることにしました。
需要と供給、格付けは理屈っぽい夫に、マリーゴールドはミーハーな妻に担わせることにしました。
仲のいい夫婦だと誤解なく伝えるためにオチの文章は気を配りました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第41回『需要と供給 格付け マリーゴールド』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間1分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=P-H_5uqC-4s
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バタン。
我が家のドアが重い音を家の中に響かせた。
その後にわずかだけドアに設置された郵便受けのフタが振動する音もついてくる。
それは夫の帰宅を告げる音だ。
いつも通り革靴を脱ぐ音が続いた。
「ただいま。売ってなかったよ、マリーゴールド。」
夫のその一言でお帰りを言うこともできなかった。
「なんと。どこ見てきたの?」
「どこって駅前の花屋さんに決まってるじゃん。」
「そこだけ?」
「そこだけってこれでも少し遠回りしたんだから。」
夫は寝室で着替えを始めた。
「そっかー。やっぱ今人気なのかなー。」
マリーゴールドは現在大ヒット中の曲のタイトルで、それに影響を受けて今若者の間で花自体にも人気に火がついているらしい。
そう言いつつも私がマリーゴールドを求めるのも彼らと同じ理由だ。
「素直に種から育てれば?」
「やだ! 私は今欲しいの。マリーゴールド!」
種を買っても植えることができるのは半年以上も先であり、花が咲くのはさらに一か月後になる。
流行っているものは流行っているうちに手に入れなければ意味がないのだ。
「マリーゴールドたちは急に自分たちの格付けが上がってびっくりしているだろうね。本人たちは何一つ変わってないつもりなのに。」
着替えを終えて寝室から出てきた夫に麦茶の入ったコップを渡すと、喉を鳴らして飲み始めた。
「そう、きっと花の世界のゴールドマン・サックスがマリーゴールドを格上げしたんだよ。」
どうやら麦茶を飲んでいる間に思いついたダジャレらしく、夫は口を離すと同時に言った。
そんなにあわてなくても私はゴールドマン・サックスという言葉を知らないので、そのダジャレを先に言われる恐れはなかったのにと思った。
「まあ流行しているときは需要に供給が追い付かないからね。あきらめるしかないよ。」
渾身のダジャレが滑ったと思ったのか、夫は取り繕うように言った。
「うおー、花屋よー、マリーゴールドをもっと繁殖させてくれー。」
私はほうれん草をじゃっじゃっと炒めながら天に向かって願った。
「花には花の事情があるさ。マリーゴールドは恋愛の歌だろ? 案外花の方も人間みたいに生涯の相手は一人だけがいいと思ってるかもよ。」
部屋の中にはじゅうじゅうというほうれん草を炒める音だけがした。
コップをテーブルにそっと置く音もしたので、夫は麦茶をもう一口ちびりと飲んだのだろう。
「……私と結婚して良かったと思ってる?」
私はほうれん草を炒める手を休めないままぽつりと聞いた。
うん。
菜箸がフライパンの上を反復する合間に夫の返事が聞こえた。
コンロの火を止めても余熱でほうれん草はじゅうじゅうといっていた。
私はフライパンを片手に振り返って夫の方を見た。
「じゃあさ、代わりにゴールドのネックレス買ってよ。」
「明日他の花屋も見てきます。」
夫が右手を頭に当て軍人のように敬礼をした。
私はネックレスはもちろんマリーゴールドもそんなに欲しくないんだろうなとはわかってた。
かまってほしいだけの私とそれに付き合ってくれる夫。
この需要と供給だけはいつも釣り合っている。
~・~・~・~・~
~感想~
マリーゴールドをどう使えばいいかわからなかったので、仕方なく既存の曲を借りることにしました。
需要と供給、格付けは理屈っぽい夫に、マリーゴールドはミーハーな妻に担わせることにしました。
仲のいい夫婦だと誤解なく伝えるためにオチの文章は気を配りました。
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