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第35回『象 青写真 コロッケパン』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第35回『象 青写真 コロッケパン』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約57分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=KKMqBhCjkFM
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「アレクサンドロス大王がトングを持っていたら何をつかんだだろうか。」
せっかくお昼をごちそうしてあげるというのでベーカリー屋さんでどのパンにしようかと物色していたところ、教授が後ろからぼそりとつぶやいた。
「え~? まだ授業続いてるんですか~? ひょっとしてここに連れてきてくれた理由って勉強のためですか?」
私は露骨に眉間にしわを寄せ、トングをバルタン星人のように上へ向けた。
「ああ、そういうわけではないんだ。君塚くんは好きなのを選びなさい。」
教授がそのまま話を続けるのを背後で聞きながら私は再びパンの棚をのぞきこんだ。
「21世紀にもなり日本のごく普通のパン屋さんにもこんなにたくさんの種類のパンが並んでるのを見るとね、ふとアレクサンドロス大王のことを思わずにはいられないんだ。」
「先生、それワーカホリックってやつじゃないですか?」
「趣味だよ。お遊びだから気軽に、妄想でいいんだ。近頃の若い女の子は歴史上の人物の人となりを妄想するのが好きなんじゃないの?」
どうやら教授はゲームやアニメに出てくるキャラクターを言っているらしい。
確かにそのようなブームはあるが、教授はただアレクサンドロス大王について考えたくて無理に言い訳をしているのだろう。
おごってもらう手前もあるし私は少し乗ってあげることにした。
「だとしたら中東っぽいパンじゃないんですか? 平べったく焼いたやつ。」
そう言いつつ私がガン見していたのはめんたいマヨネーズパンだった。
明太子のピンクとマヨネーズの黄色がとてもかわいかった。
「ふっ、考えが浅いね。55点だね。」
……お遊びじゃねーのかよ、かわいくない奴。
「実際僕にだってアレクサンドロス大王がこの中からどのパンを選ぶかなんて想像もつかないからね。ここで大事なのは彼が帝国を築くことにより東西の文化を融合させたことだ。あんパンやらコロッケパンやらいろいろな要素が掛け合わさったパンを見ていると、彼の成したことを思わずにはいられないんだ。」
このとき初めて教授がベーカリー屋さんでアレクサンドロス大王について語り始めた理由が私にもわかった。
「つまり、私がたくさんのお惣菜パンで迷っていられるのもアレクサンドロス大王のおかげということですね。ならやっぱ偉大ですね、アレクサンドロス大王は。」
私のトングはベーコンエッグパンときなこパンの間で揺れていた。
「あはは、彼はパンが目的じゃないけどね。もっとも彼の続いてインドを征服するという青写真は象の部隊の前にもろくも崩れさる。」
「異文化をどんどん吸収していったアレクサンドロスが異文化の武器に負けるというのは皮肉ですね~。」
教授が小さく感心する声が聞こえた気がした。
だが教授はすぐさま、
「で、君塚くんの青写真はどうだい? なかなか焦点が定まっていないようだが。」
と言ってきた。
どうやら教授はさきほどの55点という評定を覆したくないようで、最終的に店中のパンを確認した私に皮肉を投げかけてきた。
そうとなればこちらだって及第点以上を取ってやろうというもの。
私は真っ先に目の前にあったシナモンロールパンをつかんだ。
「なんの。私の青写真はすでに像を結んでいましたよ。」
~・~・~・~・~
~感想~
コロッケパンをどうするか悩みました。
象というお題でアレクサンドロス大王を連想したのでそこから東西の文化の融合みたいな話をさせる二人にしましたが、苦しかったので最後はダジャレにしてごまかしました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第35回『象 青写真 コロッケパン』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約57分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=KKMqBhCjkFM
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「アレクサンドロス大王がトングを持っていたら何をつかんだだろうか。」
せっかくお昼をごちそうしてあげるというのでベーカリー屋さんでどのパンにしようかと物色していたところ、教授が後ろからぼそりとつぶやいた。
「え~? まだ授業続いてるんですか~? ひょっとしてここに連れてきてくれた理由って勉強のためですか?」
私は露骨に眉間にしわを寄せ、トングをバルタン星人のように上へ向けた。
「ああ、そういうわけではないんだ。君塚くんは好きなのを選びなさい。」
教授がそのまま話を続けるのを背後で聞きながら私は再びパンの棚をのぞきこんだ。
「21世紀にもなり日本のごく普通のパン屋さんにもこんなにたくさんの種類のパンが並んでるのを見るとね、ふとアレクサンドロス大王のことを思わずにはいられないんだ。」
「先生、それワーカホリックってやつじゃないですか?」
「趣味だよ。お遊びだから気軽に、妄想でいいんだ。近頃の若い女の子は歴史上の人物の人となりを妄想するのが好きなんじゃないの?」
どうやら教授はゲームやアニメに出てくるキャラクターを言っているらしい。
確かにそのようなブームはあるが、教授はただアレクサンドロス大王について考えたくて無理に言い訳をしているのだろう。
おごってもらう手前もあるし私は少し乗ってあげることにした。
「だとしたら中東っぽいパンじゃないんですか? 平べったく焼いたやつ。」
そう言いつつ私がガン見していたのはめんたいマヨネーズパンだった。
明太子のピンクとマヨネーズの黄色がとてもかわいかった。
「ふっ、考えが浅いね。55点だね。」
……お遊びじゃねーのかよ、かわいくない奴。
「実際僕にだってアレクサンドロス大王がこの中からどのパンを選ぶかなんて想像もつかないからね。ここで大事なのは彼が帝国を築くことにより東西の文化を融合させたことだ。あんパンやらコロッケパンやらいろいろな要素が掛け合わさったパンを見ていると、彼の成したことを思わずにはいられないんだ。」
このとき初めて教授がベーカリー屋さんでアレクサンドロス大王について語り始めた理由が私にもわかった。
「つまり、私がたくさんのお惣菜パンで迷っていられるのもアレクサンドロス大王のおかげということですね。ならやっぱ偉大ですね、アレクサンドロス大王は。」
私のトングはベーコンエッグパンときなこパンの間で揺れていた。
「あはは、彼はパンが目的じゃないけどね。もっとも彼の続いてインドを征服するという青写真は象の部隊の前にもろくも崩れさる。」
「異文化をどんどん吸収していったアレクサンドロスが異文化の武器に負けるというのは皮肉ですね~。」
教授が小さく感心する声が聞こえた気がした。
だが教授はすぐさま、
「で、君塚くんの青写真はどうだい? なかなか焦点が定まっていないようだが。」
と言ってきた。
どうやら教授はさきほどの55点という評定を覆したくないようで、最終的に店中のパンを確認した私に皮肉を投げかけてきた。
そうとなればこちらだって及第点以上を取ってやろうというもの。
私は真っ先に目の前にあったシナモンロールパンをつかんだ。
「なんの。私の青写真はすでに像を結んでいましたよ。」
~・~・~・~・~
~感想~
コロッケパンをどうするか悩みました。
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