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第32回『混雑 裁判長 腑に落ちる』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第回『』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約57分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=LCazqFyQlBE
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
傍聴席には近年の裁判では記憶にないくらい多くの人が詰めかけていた。
それも多くが女性であり、原告と被告双方の言い分をまるで自分のことのように真剣に聞いていた。
すでに目が血走っている人もいれば、ふーっふーっと息が荒くなっている人もいた。
傍聴席ではメモを取ることができないのでみな一言一句を頭に刻み込もうと必死であり、裁判中に見せる一瞬の表情やしぐさを目で追う様は瞼の裏に焼き付けんばかりだった。
エアコンが効いているはずなのに、裁判所では異様な熱気が満ちていた。
この裁判がかくも類を見ないレベルで注目を浴びている理由はこれが痴漢の裁判だったからである。
被告は本当に犯人なのか、それとも冤罪なのか──。
「はい。そのとき私のお尻を触っていたのは確かにこの男です。」
「私ではありません。電車の中には私以外にも多くの人がいました。朝の混雑した電車の中で触ったのが私だと確信できるわけがありません。」
双方の言い分は真っ向からぶつかっていた。
無罪を主張する被告の発言を聞くたびに傍聴席の女性たちは拳を握りしめていた。
ふうっと息を吐いて、なんとか正気を保っている女性もいた。
「私はあのときの手の感触を覚えています。もう一度私のお尻を触っていただけたら私は誰が犯人なのかわかります。」
原告のこの一言に裁判所はざわめいた。
傍聴席の女性たちはほほに手を当て、隣りの人と顔を見合わせて今の発言が自分の聞き間違いではないことを確かめ合った。
「い、いいのですか……?」
裁判長が被告に尋ねると、原告はこくりとうなづいた。
原告は右手でつり革を持つフリをし、左手でスマホをいじり始めた。
あの日の再現である。
「それでは一人目を。」
裁判長が言うと、後ろから被告の弁護人の男性が被告のお尻をそっと触った。
「では、二人目を。」
同じように今度は原告の弁護人の男性が被告のお尻を後ろから触った。
「では、三人目を。」
次は被告の男性本人が触った。
その後も同じように警備員など合計10人の男性が被告のお尻を触った。
裁判所の緊張感はますます高まり、傍聴席では女性たちがいてもたってもいられない様子だった。
全てが終わると裁判長が重々しく口を開いた。
「で、どうでしたか?」
「3番目の方が痴漢と同じ手でした。」
被告がきっぱりと答えると、裁判所はどよめいた。
すると原告の顔は大きく歪み、テーブルに突っ伏した。
「すいませんっ。この方の言うように確かに私が犯人です!」
原告の自白に裁判所のボルテージは一気に上がった。
この一言に原告の弁護人はあわてた。
「こんなのは証拠にはならないのになぜ自白したのですかっ?」
原告はゆっくりと顔を上げ、被告と目を合わせた。
「それはもちろん嬉しかったからです。痴漢したとは言え、こんなかっこいい男性が僕の手を覚えていてくれたんですから。」
それを聞くと被告は目じりからつうっと涙を流しほほえんだ。
「忘れられるわけないじゃないですか、あんながっちりした素敵な手。私がこの裁判を起こした理由がわかりますか?」
裁判所にしばしの沈黙が訪れた。
「あの手の持ち主に会うためですよ。それがまさかこんなにも私好みのかっこいい男性だったなんてびっくりです。」
被告の男性はほほを染めた。
原告の男性も涙を流し始め、口からは自然と笑みがこぼれた。
ここでついに傍聴席の女性たちのタガがはずれた。
「きゃーっ、やっぱり!」
「怪しいと思ったんだよねー、この二人!」
「うん、お互いを見る目が全然違ったもんね!」
「はかどる、はかどるぅー!」
警備員たちは女性たちの騒ぎを収めようとするが、被告と原告が抱き合うとさらに大きな歓声が上がった。
結婚式場のようになった裁判所を見て裁判長はため息をついた。
「やれやれ。腑に落ちない流れだったが、話は腐にオチたか。」
~・~・~・~・~
~感想~
腐女子向け(笑)。
混雑と裁判長から満員電車での痴漢の裁判となりました。
腑に落ちるはどう使おうか考えて、腑は腐ということにして原告も被告も男性としました。
傍聴席の様子は昔NHKで見た100年前のアメリカの裁判とかビートルズに熱狂した女の子とかをイメージしてます。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第回『』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約57分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=LCazqFyQlBE
↓使用させていただいたサイト↓
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~・~・~・~・~
傍聴席には近年の裁判では記憶にないくらい多くの人が詰めかけていた。
それも多くが女性であり、原告と被告双方の言い分をまるで自分のことのように真剣に聞いていた。
すでに目が血走っている人もいれば、ふーっふーっと息が荒くなっている人もいた。
傍聴席ではメモを取ることができないのでみな一言一句を頭に刻み込もうと必死であり、裁判中に見せる一瞬の表情やしぐさを目で追う様は瞼の裏に焼き付けんばかりだった。
エアコンが効いているはずなのに、裁判所では異様な熱気が満ちていた。
この裁判がかくも類を見ないレベルで注目を浴びている理由はこれが痴漢の裁判だったからである。
被告は本当に犯人なのか、それとも冤罪なのか──。
「はい。そのとき私のお尻を触っていたのは確かにこの男です。」
「私ではありません。電車の中には私以外にも多くの人がいました。朝の混雑した電車の中で触ったのが私だと確信できるわけがありません。」
双方の言い分は真っ向からぶつかっていた。
無罪を主張する被告の発言を聞くたびに傍聴席の女性たちは拳を握りしめていた。
ふうっと息を吐いて、なんとか正気を保っている女性もいた。
「私はあのときの手の感触を覚えています。もう一度私のお尻を触っていただけたら私は誰が犯人なのかわかります。」
原告のこの一言に裁判所はざわめいた。
傍聴席の女性たちはほほに手を当て、隣りの人と顔を見合わせて今の発言が自分の聞き間違いではないことを確かめ合った。
「い、いいのですか……?」
裁判長が被告に尋ねると、原告はこくりとうなづいた。
原告は右手でつり革を持つフリをし、左手でスマホをいじり始めた。
あの日の再現である。
「それでは一人目を。」
裁判長が言うと、後ろから被告の弁護人の男性が被告のお尻をそっと触った。
「では、二人目を。」
同じように今度は原告の弁護人の男性が被告のお尻を後ろから触った。
「では、三人目を。」
次は被告の男性本人が触った。
その後も同じように警備員など合計10人の男性が被告のお尻を触った。
裁判所の緊張感はますます高まり、傍聴席では女性たちがいてもたってもいられない様子だった。
全てが終わると裁判長が重々しく口を開いた。
「で、どうでしたか?」
「3番目の方が痴漢と同じ手でした。」
被告がきっぱりと答えると、裁判所はどよめいた。
すると原告の顔は大きく歪み、テーブルに突っ伏した。
「すいませんっ。この方の言うように確かに私が犯人です!」
原告の自白に裁判所のボルテージは一気に上がった。
この一言に原告の弁護人はあわてた。
「こんなのは証拠にはならないのになぜ自白したのですかっ?」
原告はゆっくりと顔を上げ、被告と目を合わせた。
「それはもちろん嬉しかったからです。痴漢したとは言え、こんなかっこいい男性が僕の手を覚えていてくれたんですから。」
それを聞くと被告は目じりからつうっと涙を流しほほえんだ。
「忘れられるわけないじゃないですか、あんながっちりした素敵な手。私がこの裁判を起こした理由がわかりますか?」
裁判所にしばしの沈黙が訪れた。
「あの手の持ち主に会うためですよ。それがまさかこんなにも私好みのかっこいい男性だったなんてびっくりです。」
被告の男性はほほを染めた。
原告の男性も涙を流し始め、口からは自然と笑みがこぼれた。
ここでついに傍聴席の女性たちのタガがはずれた。
「きゃーっ、やっぱり!」
「怪しいと思ったんだよねー、この二人!」
「うん、お互いを見る目が全然違ったもんね!」
「はかどる、はかどるぅー!」
警備員たちは女性たちの騒ぎを収めようとするが、被告と原告が抱き合うとさらに大きな歓声が上がった。
結婚式場のようになった裁判所を見て裁判長はため息をついた。
「やれやれ。腑に落ちない流れだったが、話は腐にオチたか。」
~・~・~・~・~
~感想~
腐女子向け(笑)。
混雑と裁判長から満員電車での痴漢の裁判となりました。
腑に落ちるはどう使おうか考えて、腑は腐ということにして原告も被告も男性としました。
傍聴席の様子は昔NHKで見た100年前のアメリカの裁判とかビートルズに熱狂した女の子とかをイメージしてます。
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