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第26回『ままごと 缶コーヒー 初登場』
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ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第26回『ままごと 缶コーヒー 初登場』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間1分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=wCmxPe_4_zE
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
「先輩、買ってきました。」
松野はコンビニの袋を抱えてそそくさと車の助手席に座った。
「なんだ、これ?」
豊口はみけんにしわを寄せた。
「何ってあんぱんと牛乳に決まってんじゃないですか。やっぱ刑事の張り込みといったらあんぱんと牛乳でしょ。」
松野は目を輝かせながらあんぱんを差し出した。
あんぱんには新発売というプリントがしてあり、どうやら塩味のきいたバターもあんの中に混ぜてあるらしい。
豊口は牛乳をダッシュボードに置き、あんぱんの袋をびりっと開けた。
「あのなあ、俺たちはおままごとをやってるわけじゃないんだぞ。張り込みにあんぱんと牛乳? そんなのドラマの中だけだ。現実は甘かねえ。コーヒー1本だけでいいんだ。根気勝負の張り込みは眠気との戦いだからな。」
豊口は目の前の暴力団の建物の出入り口から目を離さずに、次々にあんぱんを胃袋に収めていった。
「でもあんぱんには糖分があって疲れた脳のエネルギーになるし、牛乳に含まれるトリプトファンはストレスを減らしてくれます。結構張り込みに合ってるんじゃないですか?」
刑事歴25年の豊口に注意されても自分の考えを曲げない松野は天然なのか意志が強いのかわからないが、これが彼のいいところだったと豊口は思い出した。
「あ、でもトリプトファンって誘眠効果もあるんですよね。だったら缶コーヒーの方がよかったかも。」
松野は今度は躊躇なく自分も否定した。
「糖分やらトリプトファンやら、お前俺のお母さんかよ。」
「だったら本当におままごとをやってることになっちゃいますね。」
「俺が息子になるのかよ。」
くくくと豊口が笑うと、松野もあんぱんをほおばりながら笑った。。
二人の車は民家の前に停めていたが、庭にいた男は小走りでその場を去り、民家から民家へと次々と塀を渡っていった。
「おう、戻ってきたか。」
庭にいた男は建物の裏の窓から入り、暴力団の兄貴に報告していた。
「くっくっく。で、どうだったよ最近俺たちの事務所の前に初登場したあの車。どうせ刑事だろ? だったらとっとと退場してもらわねえとなあ。」
事務所ではマシンガンを持った男たちが顔に笑みを浮かべながら開幕ベルが鳴るのを今か今かと待っていた。
兄貴の合図が出れば、あの車は即ハチの巣だ。
武闘派で知られる彼らには昼間だなんて関係なかった。
「へい、壁をはさんで車の中の会話だったんでよくわからなかったんですが、あいつらは確かにおままごとをしようぜと言ってました。」
「お、おままごと?」
兄貴のタバコを吸う手が止まった。
「ふざけんな。聞き間違いじゃねえのか?」
「い、いえ、若い方がお母さん役で年を取った方は俺が息子役をやるって言ってました。」
男たちのマシンガンを持つ右手は徐々に下へと下がっていった。
兄貴のサングラスはいつの間にか斜めにずれていた。
「き、気持ちわり~。いいかお前ら。あいつらとはもう目合わせんな。」
後日豊口と松野の張り込みが功を奏し、一人のけが人も出すことなく暴力団の男たちを逮捕することに成功した。
張り込みにあんぱんと牛乳は買ってみるものである。
~・~・~・~・~
~感想~
ままごとは子どもの遊びではない方向で使おうと決めました。
その上でこういう言葉をあえて使う世界というのは命をかけている人たちかなあと思い、缶コーヒーからの連想も含めて張り込み中の刑事の話にしました。
初登場という言葉は不自然な使い方しか思いつかなかったので、退場という言葉も並べて少しでも違和感を減らそうとはしました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第26回『ままごと 缶コーヒー 初登場』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間1分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=wCmxPe_4_zE
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
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~・~・~・~・~
「先輩、買ってきました。」
松野はコンビニの袋を抱えてそそくさと車の助手席に座った。
「なんだ、これ?」
豊口はみけんにしわを寄せた。
「何ってあんぱんと牛乳に決まってんじゃないですか。やっぱ刑事の張り込みといったらあんぱんと牛乳でしょ。」
松野は目を輝かせながらあんぱんを差し出した。
あんぱんには新発売というプリントがしてあり、どうやら塩味のきいたバターもあんの中に混ぜてあるらしい。
豊口は牛乳をダッシュボードに置き、あんぱんの袋をびりっと開けた。
「あのなあ、俺たちはおままごとをやってるわけじゃないんだぞ。張り込みにあんぱんと牛乳? そんなのドラマの中だけだ。現実は甘かねえ。コーヒー1本だけでいいんだ。根気勝負の張り込みは眠気との戦いだからな。」
豊口は目の前の暴力団の建物の出入り口から目を離さずに、次々にあんぱんを胃袋に収めていった。
「でもあんぱんには糖分があって疲れた脳のエネルギーになるし、牛乳に含まれるトリプトファンはストレスを減らしてくれます。結構張り込みに合ってるんじゃないですか?」
刑事歴25年の豊口に注意されても自分の考えを曲げない松野は天然なのか意志が強いのかわからないが、これが彼のいいところだったと豊口は思い出した。
「あ、でもトリプトファンって誘眠効果もあるんですよね。だったら缶コーヒーの方がよかったかも。」
松野は今度は躊躇なく自分も否定した。
「糖分やらトリプトファンやら、お前俺のお母さんかよ。」
「だったら本当におままごとをやってることになっちゃいますね。」
「俺が息子になるのかよ。」
くくくと豊口が笑うと、松野もあんぱんをほおばりながら笑った。。
二人の車は民家の前に停めていたが、庭にいた男は小走りでその場を去り、民家から民家へと次々と塀を渡っていった。
「おう、戻ってきたか。」
庭にいた男は建物の裏の窓から入り、暴力団の兄貴に報告していた。
「くっくっく。で、どうだったよ最近俺たちの事務所の前に初登場したあの車。どうせ刑事だろ? だったらとっとと退場してもらわねえとなあ。」
事務所ではマシンガンを持った男たちが顔に笑みを浮かべながら開幕ベルが鳴るのを今か今かと待っていた。
兄貴の合図が出れば、あの車は即ハチの巣だ。
武闘派で知られる彼らには昼間だなんて関係なかった。
「へい、壁をはさんで車の中の会話だったんでよくわからなかったんですが、あいつらは確かにおままごとをしようぜと言ってました。」
「お、おままごと?」
兄貴のタバコを吸う手が止まった。
「ふざけんな。聞き間違いじゃねえのか?」
「い、いえ、若い方がお母さん役で年を取った方は俺が息子役をやるって言ってました。」
男たちのマシンガンを持つ右手は徐々に下へと下がっていった。
兄貴のサングラスはいつの間にか斜めにずれていた。
「き、気持ちわり~。いいかお前ら。あいつらとはもう目合わせんな。」
後日豊口と松野の張り込みが功を奏し、一人のけが人も出すことなく暴力団の男たちを逮捕することに成功した。
張り込みにあんぱんと牛乳は買ってみるものである。
~・~・~・~・~
~感想~
ままごとは子どもの遊びではない方向で使おうと決めました。
その上でこういう言葉をあえて使う世界というのは命をかけている人たちかなあと思い、缶コーヒーからの連想も含めて張り込み中の刑事の話にしました。
初登場という言葉は不自然な使い方しか思いつかなかったので、退場という言葉も並べて少しでも違和感を減らそうとはしました。
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