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第13回『ニュース プレゼント ヤマタノオロチ』
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ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第13回『ニュース プレゼント ヤマタノオロチ』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約55分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=yo12vrZtpRY
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
昼休みに体育館でバスケの練習をしていると、扉からクラスメートの奥山の声がした。
「いた! 菊池大ニュースだ! 来てみろよ! 屋上で上島がケンカしてるぜ!」
奥山にそう言われてもピンと来なかった。
なぜなら上島は体は大きいが決して気性が荒いやつではなかったからだ。
だが俺は今年初めて上島と同じクラスになったから知らないだけで、ひょっとして上島はとてもケンカっ早いやつで、奥山はそれを知っているのだろうか。
いずれにしろケンカなら下手すると流血沙汰になってもおかしくないにもかかわらず、奥山の顔はとてもうれしそうだった。
俺はバスケットボールをカゴに入れると、奥山と並んで体育館を飛び出し階段を駆け上がった。
むろんケンカを見たかったわけではないし、状況によっては止めようとも思っていた。
「わははっ。急げ。もうぶっ倒れてたりして。」
「ったく奥山、お前は本当にハイエナだな。」
最悪の事態を楽しみにしている奥山に俺は少し悪態をついた。
屋上への扉が見えてくるにしたがい、なにやらどなりあう声も聞こえてきた。
よかった、どうやらまだ手は出した人はいないみたいだ。
しかしこの威嚇し合う声はまだケンカが終わってないことを意味した。
それにギャラリーのとおぼしき笑い声まで聞こえた。
どうやらみんなでそのケンカを楽しんでいるらしい。
俺の苛立つ気持ちはいっそう湧きあがり、階段を上る音もどっしどっしと大きくなった。
灯りのついていない階段から屋上に飛び出たとき明るさで一瞬目がくらんだが、手をかざし細い目で見た光景は予想してたものとは違うものだった。
確かにギャラリーは集まっていた。
しかし、そのギャラリーが囲んでいるのは上島と、俺の知らない女子一人だけだった。
もちろん上島のケンカの相手は女子でないことは一目瞭然だった。
「てめえ、いい加減あきらめろよ!」
上島が言った。
「んだと、それはてめえの方だろうが!」
上島が言った。
「だから俺が食うっつてんだろうがよ!」
上島が言った。
上島のケンカを茫然と見ている俺に、まるでプロレスのファンが今日初めて試合を見に来た人に解説するように奥山は言った。
「わはは! あいつバレンタインデーは毎年ケンカしてんだよ。チョコは8本の頭の中で誰が食うかって。胃袋は一つなんだから誰が食っても同じなのに。女子も女子だよ。あいつへのプレゼントは食い物はダメなのにさ。」
ギャラリーはヤマタノオロチの8本の首同士の終わることのないケンカを見て笑っていた。
女子はおろおろしているばかりだった。
俺はほっと胸をなでおろした。
当人にとっては大きな問題かも知れないが、ばかばかしいケンカでよかった。
「ケンカをあんなにうれしそうに言ってたから、てっきりハイエナのお前は殴り合いになるのを期待していたのかと思っちゃったぜ。」
「おいおい、失礼だな。お前そんな心配してたのかよ。」
奥山が笑い、俺もわりいわりいと言って笑った。
「でもそう考えればお前も大変だよな。」
奥山がふと優し気な目で言ったが、俺には意味がわからなかった。
「だって奥山ほどじゃなくても、お前も3本の首のうち誰が食うかでケンカになるんじゃないのか。」
俺は固まった。
なぜなら俺はケルベロスとして17年間生きてきたが、バレンタインデーに3本の首同士でケンカしたことなど一度もなかったからだ。
むろんそれはチョコレートを仲良く分けたからとか、食べ物以外のプレゼントをもらったからという理由ではない。
そうか、首がたくさんあると普通はバレンタインデーに首同士で争いになるのか。
この日上島はケンカし、奥山とギャラリーは笑い、俺は泣いた。
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約55分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=yo12vrZtpRY
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
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~・~・~・~・~
昼休みに体育館でバスケの練習をしていると、扉からクラスメートの奥山の声がした。
「いた! 菊池大ニュースだ! 来てみろよ! 屋上で上島がケンカしてるぜ!」
奥山にそう言われてもピンと来なかった。
なぜなら上島は体は大きいが決して気性が荒いやつではなかったからだ。
だが俺は今年初めて上島と同じクラスになったから知らないだけで、ひょっとして上島はとてもケンカっ早いやつで、奥山はそれを知っているのだろうか。
いずれにしろケンカなら下手すると流血沙汰になってもおかしくないにもかかわらず、奥山の顔はとてもうれしそうだった。
俺はバスケットボールをカゴに入れると、奥山と並んで体育館を飛び出し階段を駆け上がった。
むろんケンカを見たかったわけではないし、状況によっては止めようとも思っていた。
「わははっ。急げ。もうぶっ倒れてたりして。」
「ったく奥山、お前は本当にハイエナだな。」
最悪の事態を楽しみにしている奥山に俺は少し悪態をついた。
屋上への扉が見えてくるにしたがい、なにやらどなりあう声も聞こえてきた。
よかった、どうやらまだ手は出した人はいないみたいだ。
しかしこの威嚇し合う声はまだケンカが終わってないことを意味した。
それにギャラリーのとおぼしき笑い声まで聞こえた。
どうやらみんなでそのケンカを楽しんでいるらしい。
俺の苛立つ気持ちはいっそう湧きあがり、階段を上る音もどっしどっしと大きくなった。
灯りのついていない階段から屋上に飛び出たとき明るさで一瞬目がくらんだが、手をかざし細い目で見た光景は予想してたものとは違うものだった。
確かにギャラリーは集まっていた。
しかし、そのギャラリーが囲んでいるのは上島と、俺の知らない女子一人だけだった。
もちろん上島のケンカの相手は女子でないことは一目瞭然だった。
「てめえ、いい加減あきらめろよ!」
上島が言った。
「んだと、それはてめえの方だろうが!」
上島が言った。
「だから俺が食うっつてんだろうがよ!」
上島が言った。
上島のケンカを茫然と見ている俺に、まるでプロレスのファンが今日初めて試合を見に来た人に解説するように奥山は言った。
「わはは! あいつバレンタインデーは毎年ケンカしてんだよ。チョコは8本の頭の中で誰が食うかって。胃袋は一つなんだから誰が食っても同じなのに。女子も女子だよ。あいつへのプレゼントは食い物はダメなのにさ。」
ギャラリーはヤマタノオロチの8本の首同士の終わることのないケンカを見て笑っていた。
女子はおろおろしているばかりだった。
俺はほっと胸をなでおろした。
当人にとっては大きな問題かも知れないが、ばかばかしいケンカでよかった。
「ケンカをあんなにうれしそうに言ってたから、てっきりハイエナのお前は殴り合いになるのを期待していたのかと思っちゃったぜ。」
「おいおい、失礼だな。お前そんな心配してたのかよ。」
奥山が笑い、俺もわりいわりいと言って笑った。
「でもそう考えればお前も大変だよな。」
奥山がふと優し気な目で言ったが、俺には意味がわからなかった。
「だって奥山ほどじゃなくても、お前も3本の首のうち誰が食うかでケンカになるんじゃないのか。」
俺は固まった。
なぜなら俺はケルベロスとして17年間生きてきたが、バレンタインデーに3本の首同士でケンカしたことなど一度もなかったからだ。
むろんそれはチョコレートを仲良く分けたからとか、食べ物以外のプレゼントをもらったからという理由ではない。
そうか、首がたくさんあると普通はバレンタインデーに首同士で争いになるのか。
この日上島はケンカし、奥山とギャラリーは笑い、俺は泣いた。
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