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第2回『古い 市外局番 竜頭蛇尾』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第2回『古い 市外局番 竜頭蛇尾』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間13分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=gEDBDaJij0Y
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
土曜日の午前、電話が鳴った。
長いこと使い込まれたことにより黒く光る居間の太い梁は家中にプルルルルという音を反響させた。
「はい、はい、はい、と。」
そういえば妻は買い物に行くと言っていたことを思い出したqqqは2階から駆け降りてきた。
電話には市外局番が表示されていた。
qqqには電話主に思い当たる節があり、携帯電話の番号を書き洩らしたのだろうとわかった。
「もしもし、はい、qqqです。はいwww堂さん。あ、そうですか。それでは本日伺います。」
www堂という隣りの市にある古書店からだった。
qqqは家にある蔵書を売るためにwww堂に査定を出していて、その見積もりが出たので電話してきたという。
段ボールにして20箱以上の量のわりには早いなと思ったが、qqqは電話を切ると妻への書置きを残して車を走らせた。
「あらら、こんなもんですか。」
見積書を一瞥してqqqから出た言葉はあきらめだった。
店主は気まずそうに頭をかいた。
「ええ、どれもあまり価値のない本ばかりでした。古書には違いないんですが市場から見ればあんまり。」
「求められてないってことか。」
「ええ、そうなりますというか……。でもこの年貢の記録は一番高い値段をつけさせてもらいました。これなら大学の図書館も欲しがると思います。」
qqqは自分の家がただ古いだけで、今はもう何もないからっぽなのだと思い知った。
真っ暗な倉に分け入ってなにかお金に変えられそうなものを探した自分を滑稽に思った。
この分だと倉に置いてあったさまざまなものも骨董品というよりガラクタなのだろう。
「我が家は竜頭蛇尾だったんですね。もっとも蛇になったのが僕の代からじゃないとわかったのが収穫ですが。あ、買取りできなかったものはそちらで処分しちゃってください。」
qqqは見積書にサインをしながら言った。
すると店主は紐で閉じられた一冊の本を渡した。
「この本は持って帰ってはいかがでしょうか。」
いいですよーと断るqqqをよそに店主は次々とページをめくった。
崩し字で書いてあるのでqqqには何が書いてあるのかわからなかったが、文章ではなく何かの表のようだった。
「これはそちらのご先祖の家計簿みたいなものです。内容は全て家の中のものをいついくらで売ったかということが書いてあるんです。最初の記録は明治よりも古いです。」
「そうか、うちは江戸時代から傾いていたってことですか。それを知ったらますます持っていたくないですよ。」
「それでもいいじゃないですか。」
店主の言葉にqqqはボールペンをしまいながら顔を上げた。
「ご先祖はそうやって子や孫を食べさせてきたということでしょう。竜頭蛇尾、いいじゃないですか。それって細く長く続いたってことで。細く長く、こんな立派なことってないですよ。」
qqqは店を後にした。
qqqが蔵書をwww堂に売ることにしたのは家から一番近くだからだった。
だが店主と直接会って話した回数は2回だけだが、その短い時間と店の構えからでも店主がこの商売に誇りを持っていることは伝わってきていた。
なぜ彼が古書店に誇りを持っているのか。
それは古書店をやるということは、価値ある本を必要としている人に届ける
ということができるからではないだろうか。
細く長くを称賛する店主のそれは古書への思いからだったのだろう。
車を運転するqqqの助手席には店主から渡された一冊の本が揺れていた。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第2回『古い 市外局番 竜頭蛇尾』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間13分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=gEDBDaJij0Y
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ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
土曜日の午前、電話が鳴った。
長いこと使い込まれたことにより黒く光る居間の太い梁は家中にプルルルルという音を反響させた。
「はい、はい、はい、と。」
そういえば妻は買い物に行くと言っていたことを思い出したqqqは2階から駆け降りてきた。
電話には市外局番が表示されていた。
qqqには電話主に思い当たる節があり、携帯電話の番号を書き洩らしたのだろうとわかった。
「もしもし、はい、qqqです。はいwww堂さん。あ、そうですか。それでは本日伺います。」
www堂という隣りの市にある古書店からだった。
qqqは家にある蔵書を売るためにwww堂に査定を出していて、その見積もりが出たので電話してきたという。
段ボールにして20箱以上の量のわりには早いなと思ったが、qqqは電話を切ると妻への書置きを残して車を走らせた。
「あらら、こんなもんですか。」
見積書を一瞥してqqqから出た言葉はあきらめだった。
店主は気まずそうに頭をかいた。
「ええ、どれもあまり価値のない本ばかりでした。古書には違いないんですが市場から見ればあんまり。」
「求められてないってことか。」
「ええ、そうなりますというか……。でもこの年貢の記録は一番高い値段をつけさせてもらいました。これなら大学の図書館も欲しがると思います。」
qqqは自分の家がただ古いだけで、今はもう何もないからっぽなのだと思い知った。
真っ暗な倉に分け入ってなにかお金に変えられそうなものを探した自分を滑稽に思った。
この分だと倉に置いてあったさまざまなものも骨董品というよりガラクタなのだろう。
「我が家は竜頭蛇尾だったんですね。もっとも蛇になったのが僕の代からじゃないとわかったのが収穫ですが。あ、買取りできなかったものはそちらで処分しちゃってください。」
qqqは見積書にサインをしながら言った。
すると店主は紐で閉じられた一冊の本を渡した。
「この本は持って帰ってはいかがでしょうか。」
いいですよーと断るqqqをよそに店主は次々とページをめくった。
崩し字で書いてあるのでqqqには何が書いてあるのかわからなかったが、文章ではなく何かの表のようだった。
「これはそちらのご先祖の家計簿みたいなものです。内容は全て家の中のものをいついくらで売ったかということが書いてあるんです。最初の記録は明治よりも古いです。」
「そうか、うちは江戸時代から傾いていたってことですか。それを知ったらますます持っていたくないですよ。」
「それでもいいじゃないですか。」
店主の言葉にqqqはボールペンをしまいながら顔を上げた。
「ご先祖はそうやって子や孫を食べさせてきたということでしょう。竜頭蛇尾、いいじゃないですか。それって細く長く続いたってことで。細く長く、こんな立派なことってないですよ。」
qqqは店を後にした。
qqqが蔵書をwww堂に売ることにしたのは家から一番近くだからだった。
だが店主と直接会って話した回数は2回だけだが、その短い時間と店の構えからでも店主がこの商売に誇りを持っていることは伝わってきていた。
なぜ彼が古書店に誇りを持っているのか。
それは古書店をやるということは、価値ある本を必要としている人に届ける
ということができるからではないだろうか。
細く長くを称賛する店主のそれは古書への思いからだったのだろう。
車を運転するqqqの助手席には店主から渡された一冊の本が揺れていた。
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