夜明けの丿怪物

カミーユ R-35

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第9話『零れたカケラ』

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【アベル視点】
窓の外を眺めながら肩肘をつき、物思いにふけていた。あの子が学校へ来なくなって今日で、2日目。あの子がいないと毎日退屈でしょうがない。(早くもどってこないかな…)2日前から学校に姿を見せないソラについて、先輩達では色んな噂が飛び交っているようだ。でも俺は知っている。あの子がどうして来ないのかを。そして、その理由は誰にも話せない。
「はぁ、ソラに会いたいなぁ……」
「それ何回目だよ」

「あ、ロイ先輩」俺の独り言を聞いていたロイ先輩が声をかけてきた。先輩は俺の前の席に座った。どうやら一緒に昼食をとるらしい。俺は焼きそばパンを喰らいながら先輩に尋ねた。
「で、なんの用ですか?」
「別に?ただ飯食おうと思って」そう言って先輩も購買のパンを食べ始めた。相変わらずよく食べる人だ。そういえば先輩っていつも買って食べてるよな…。

「先輩、いつも買って食べてますけど、お金とか大丈夫なんですか?学生でしょ?」
「あぁ?金なんてどうにでもなるだろ?ってか、お前も同じ学生だろ」
「いや、そういう問題じゃなくて……」俺は少し呆れながら言う。この人は本当に金銭感覚がおかしいと思う。でもロイ先輩は気にも止めずにパンを食べ進めていく。そして全て食べ終えた後言った。
「つーか、それよりお前こそ大丈夫なのか?」
「え?」突然の言葉に俺は思わず聞き返してしまう。すると先輩は続けて言った。
「お前、ソラが学校休んでる理由知ってるんだろ?」
「……」俺は黙ってしまう。やっぱりこの人に隠し事はできないなと思った。でも、だからと言って話すわけにはいかない。だから俺は適当に誤魔化すことにした。
「さぁ?知らないですよ」
「嘘つけ」即答された。しかも真顔で言われた。しかしそれでも話さないという意思は変わらないので黙ることにした。すると先輩はため息を吐いて言った。

「まぁいいや、言いたくないなら無理には聞かねぇよ」そう言うと先輩は立ち上がった。どうやら話は終わりらしい。ホッと安心するのもつかの間、先輩は最後に一言だけ残していった。
「ただ、もしソラに何かあったら俺はお前のことを許さないからな」それだけ言い残して去っていった。俺はその後ろ姿を見ながら呟くように言った。
「わかってますよ」と。そして俺は再び窓の外へと目を向けるのだった。






………。
朝起きて、ふと…窓の外が気になり、カーテンを開けた。外は清々しい程に晴れ渡っていた。(綺麗な青空……。この光景をカメラに収めたいな…)数秒、窓の外の景色に見入っていると突然後から「おはよう、ソラさん」と言う声が聞こえ、振り返るといつの間にか部屋に入って来ていた雨宮さんの姿が有り、それに気づき立ち尽くすソラを見て、雨宮さんは首を傾げる。
「ん?どうかした?」
「あっ……その」昨日の一件を思い出し、思わず言い淀んでしまうソラ。(は、恥ずかしい…。僕今、顔赤くなってないかな?)赤面した顔を隠す様に俯く。そんなソラを見て雨宮さんは少し悩んでから何か思い出したように手を叩いた。そして「ああ」と呟き、ポケットから何やら白箱を取り出し、それをソラに手渡した。

「はいこれ、開けてみて」
「え?」突然の事に驚きながらも、手渡された箱を開ける。すると中には見覚えのあるカメラが有った。
「これ……」言葉に詰まる。と同時に一瞬でもカメラに目を奪われていたことに気づき、ソラは表情を強張らせた。(このカメラって……⁉)
「君が元々持っていたカメラは用意出来なかったけど、それと全く一緒の物は用意出来たから…」どこか恥ずかしそうに、しかしどこか得意気な表情の雨宮さんを見て、ソラは思わず固唾を呑んだ。嬉しいとか残念だとか、そう言う分類の話では無い。ただ、「怖い」と。
「あ……ありがとう、ございます。その……でもどうして」
「え?」
「どうして……。どうして僕が、カメラを所有していると知ってるんですか??」ソラはそう言葉にした。何故?その疑問を思わず口にしてしまったのだ。しかし雨宮さんはそんな質問に対して少し困った様な表情になり、少し間を置いてから口を開いた。そして言った。

「どうしてって、そりゃあずっと見てたからね」
「ずっと……?」予想外の言葉に驚きを隠せずにいた。しかし混乱しながらも思わず、ソラの脳裏には「ずっと見ていた」と言うフレーズが何度も繰り返し再生されていたのだった。
雨宮さんの言葉に少し間を置き、ソラは恐る恐る質問した。

「ずっと見てたって……それはどういう」
「そのままの意味ですよ。ソラさんがまだ子供の時から、ずっと貴方を見守っていました」
「え?それは……」ソラはそれ以上何も言えなかった。いや、言ってはならないと無意識のうちに思った。自分の頭に有る知識だけでは説明が付かない何かが、目の前にいる雨宮さんの言葉に有るのだと直感的に感じ取っていたのだ。その直感を裏付ける様に雨宮さんは言葉を続ける。

「記憶が無いから仕方ないのでしょうけど……。ソラさんのご両親はソラさんがまだ幼い頃に、殺されたのだから」
「え?」思わず声が漏れた。(殺された?僕の両親が⁉)自分が聞いた情報とまるで違う言葉にソラは驚きを隠せずにいた。雨宮さんはそんなソラの様子に微笑み、言葉を続ける。
「でも安心して下さい。俺が居ますから」

「どういう……」それは意味ですか?その言葉をソラが口にする前に雨宮さんは何時の間にか目の前に迫っていた。
「え……?」体が動かない。ただ、身動ぎをするだけで指一本も動かす事は出来ないのだ。そして次の瞬間には、雨宮さんの唇がソラの唇に重ねられていたのだった。
「ん!?」(え?な……何?)一瞬、何が起きているのか理解出来なかった。しかし唇の柔らかさを実感するよりも早く、ソラは雨宮さんを体から離そうと身動ぎをしたが体は動かなかった。

「くっ……んんんん」(何で?やだ!)ソラは必死に抵抗を試みるも、雨宮さんを押し返す事も出来ずに只々重ねられた唇の隙間から吐息を漏らすだけだった。そんなソラを見て雨宮さんはそっと唇を離すと突然ソラの肩を掴み自分の方へと向けさせると言った。

「やっと手に入れたのだから、逃がす筈ないでしょう」
「は?何を言って……」
「俺は貴方を愛している。だから私の物にする」そう言うと雨宮さんは再びソラの唇を奪った。そしてそのまま覆い被さる様にベッドに倒れ込むと、ソラの口に自分の舌を無理やりにねじ込んだ。その瞬間、口の中に感じたことのない苦味が広がるのをソラは感じた。(いや!何コレ)「何をッ……呑ませ…」必死に抵抗しようと試みるがやはり体を動かす事は出来なかった。しかしそんな抵抗も虚しく、雨宮さんの手が服の中へと侵入してくるのを感じた時だ。

「あッ、ん?あっん!」まるで電流の様な感覚がソラの体を駆け巡った。(何この感覚…)
「え?」思わず声を漏らす。それに気を良くしたのか雨宮さんはより一層手の動きを早める。触れられる全ての箇所が酷く反応し、そして胸にまで到達した頃にはそれはもう服の上からでも分かるくらいに大きくなっていたのだった。

「や゙……だ…」雨宮さんの手が動く度に体に電気が流れる様な感覚に襲われ、無意識に喘ぎ声が漏れてしまう。
「んっ!はッ……んん」必死に我慢しようとするが限界だった。体が自分の意思に反して跳ね上がり、まるで痙攣を起こしているかの様にビクビクと跳ね上がる。

「あッ……んんっ!んあっ!」執拗に胸の突起部分を弄られ続けてソラは絶頂を迎えた。そしてそのまま雨宮さんの胸に倒れ込んだ所で突然糸が切れたかの様に体の力が抜けるのを感じた。しかしそれでも尚も雨宮さんは手を止めない。それどころか更に激しさを増していく。

「や゙めっ!もうイッてるからぁ」そう訴えるが雨宮さんの手は止まるどころか、今度は下着の中にまで侵入してきたのだ。
「ひゃう!」驚きの声を上げた。しかしそれでも雨宮さんの手は止まらない。
「いやッ……そこだめっ!んんっ」ナニを触れされる度に体がビクビクと反応してしまう。そして遂に指先が中へと入って行くのを感じた。
「⁉駄目!そこは絶対駄目だからッ!!」ソラは必死に叫んだ。しかしそれでも雨宮さんは手を止めない。寧ろ更に奥まで指を侵入させようとしてきた。
「ヤダっ!や゙んっあっ、ん!」とうとう深い部分まで到達したようだ。その瞬間今まで以上に強い快楽に襲われてしまう。
「やっだぁっ……ああぁっ!!」体を仰け反らせ再び絶頂を迎えたのだった。
「はぁはぁ……」肩で息をしながら呼吸を整えようとするが上手くいかない。そんな様子に満足そうな笑みを浮かべると、雨宮さんは言った。
「後ろでイケるなんて、やはりソラさんには才能がありますね」
「な、何言って……」
「しかもココはまだ未使用だとは。光栄です」雨宮さんはそう言って再びキスをしてきた。そして今度はソラの服を脱がせ始めたのだ。抵抗しようにも体が動かない為どうする事も出来ずにされるがままになってしまうのだった。
そして下着まで脱がされると、再度雨宮さんの指がソラの中に入ってきたのだ。

「あッ!」突然の事に驚き声を上げるが、そんな事お構い無しとばかりにどんどん奥へと進んで行く。(やだ……助けてッ)やがてある一点を掠めた時だ。突如チャイムが部屋に響いた。その音にハッとして雨宮さんを見ると、彼は普段とは打って変わって怖い顔をし舌打ちをした。

「ッチ……誰ですか。こんな時に…」渋々と言った様子で立ち上がりドアへと向かう。それを見てソラはホッとしたのも束の間、次の瞬間玄関の方で言い争う声が聞こえソラは驚きを隠せずにいた。(何⁉)そして暫くするとドアの開く音と共に誰かが部屋へと入って来たのだった。

「ソラさん!」その声に反応し振り返るとそこには見知らぬ男性ともう一人、赤い長髪に黒い瞳のやや年上くらいの男性が立っていたのだ。(誰?)
「菅本さん、コイツが例の?」赤い長髪の男性は、ソラを睨みながら言った。それに対し菅本と呼ばれた男性は涼しい顔で答える。
「ええ、間違いありません」そしてソラの方へと向き直ると彼は言った。
「紹介をしている暇はありませんので、とりあえず貴方は黙って我々に付いて来て下さい」
「え?あ……」突然の事に驚きを隠せずにいたが、そんなソラの様子などお構いなしに赤髪の男性はソラの腕を摑むと無理やり立たせてきた。そしてそのまま引きずられる様に引っ張られそうになり、咄嗟に「服⁉」と言うと赤髪の男性は面倒くさそうに自分の上着を投げてよこした。「それを着ろ」そう言って背中を押すと部屋から連れ出されたのだった。
菅本さんもその後に続き、部屋を出る際に一度辺りを見回したが、雨宮さんの姿が見当たらなかった。

3人はマンションを出ると駐車場に停めてあった車に乗り込んだ。よくよく考えれば衝動的に流されてきたけど、この人達って大丈夫な人達なのだろうか?
「あの、どこに連れて行くんですか?」不安になりそう問いかけるも返事はなく、無言のまま車は走り続けた。それから暫くすると大きな施設の様な所に辿り着き車を降りた。どうやら此処が彼等の拠点の様だ。建物の中に通されると、まず最初に目に飛び込んで来たのは通路の脇にある幾つもの扉である。まるで迷路の様に張り巡らされた通路を迷う事なく進んでいくと一つの扉の前で立ち止まった。そしてノックもせずにその扉を開けると中にいた人物に向かって話しかけた。

「失礼致します。無事に連れてきました」ソラと会話する時とは違って丁寧な口調である。すると中にいた男がこちらを振り返った。容貌を見てソラは息を呑む。
「貴方は……⁉」
「久方ぶりだな、ソラ」確か任堂と言ったか…。まさかここで会うとは思いもしなかった。(出来れば関わりたくなかったのに…)近寄りがたい雰囲気と、あの鋭い双眸に魅入られれば、忘れることは無理だろう。

「貴方は一体何者なんですか?」疑問に思ったことを小さく呟くように問いかける。しかし答える気はないようで視線を外される。(何だ…答えてくれないんだ…)そう油断した時、突然任堂がこちらに近付いてきた。思わず後退りをするもすぐに壁に背中がついてしまう。そしてそのまま腕を強く掴まれると引き寄せられる形になり、耳元で囁かれた言葉にソラは目を見開いたのだった。
「お前は俺の物だろう?なら大人しく従え」そう言って更に腕を掴む手に力を込められた。
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