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身の危険
しおりを挟むそれを見た時、心臓をナイフで刺されたような感覚を覚えた。連れてこられた部屋に、その人は血塗れで椅子に拘束されていた。「シキッ⁉」直ぐさま駆け寄りたくて堪らなかった。(だってシキが!シキが‼)今までこんなに必死になった事など無い。早く彼の元へッ!けれど、出来なかった。??さんがそれを許してくれなかったからだ。
椋橋「ああぁ……ああぁぁッ!」ひ弱な僕はただただ、叫ぶことしか出来なかった。叫ぶことしか出来ない自分が悔しかった。(手を伸ばしても届かない…)
??「残念だね、憂」
椋橋「どうして……どうしてッ」僕はただ、目の前の光景に絶望するしか無かった。「シキッ!シキッ!」感情的になり、荒げる僕の声を煩わしそうに眉をひそめる??さん。
??「アレ、もう死んでる?」その問いに登志が答える。
登志「申し訳ありません。自分が、この部屋を出て行った時まではまだ、辛うじて息はありましたが……」「そう……」僕を一瞥すると、強引に身体を向き合う様に立たされた。抵抗すら起きない僕は、それを黙って従う。
??「これで理解出来た?君のせいでシキッは死んだ。全部君のせいなんだよ」真正面で僕の顔を見つめながら、告げられた言葉が心に刺さる。「…僕のせい」(僕が今まで通り、不必要な感情を持たなければ…)頭の中で、何度も何度も繰り返えされる。
椋橋「僕のせい……僕のせいで……」僕は取り返しのつかない事をしたのだ。何をしようとも、あの頃のシキには会えない…。その時、自分でも段々と心が冷えていくのを感じた───…。
??「憂、君は誰のモノで何の為に存在してる?言ってみな」俯いていた顔をゆっくり上げ、僕は言葉を述べた。
椋橋「僕の全ては??さんのモノで、??さんの命令する全てのモノに従い??さんの望みとあらば、この命すら捧げる所存です」感情の無い無表情な瞳には一切の光を通していなかった。
??「そう、その顔です。君はただ私の望みに応えさえすれば良いんです。人形は人形らしく不必要な感情など捨てれば楽になれます」僕の言葉に満足したのか、??さんは最初の時の様な笑顔を浮かべた。
椋橋「はい……」(そうだ、感情なんて捨てた方が良いんだ。ただ命令されるままに動けば良い。そうすれば何も考えなくて済むし、楽になれる……)
??「君は人形らしく私の側に居れば良いの」僕は??さんの人形。そう自分に言い聞かせる様に何度も心の中で呟いた。
??「そう、君は大人しく余計な感情を抱く事無く、私の側に居れば良いです」僕は人形。人形に感情など不必要。そう自分に言い聞かせる様に何度も心の中で呟いた。やがて、??は僕に近づき耳元で囁いた───……。「お帰り、私の可愛いお人形さん」
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