色彩色盲

カミーユ R-35

文字の大きさ
上 下
25 / 81

は?どう言うこと?

しおりを挟む

転入生「………………は?」
言われた意味が理解できず、数秒間の沈黙を経て、俺は間抜けな声を出すことしかできなかった。
いや、だって……意味が分からないだろう? 何故そんな噂が広まっているんだ!? そもそも性別は男ってわかってるだろうが! いや待て……もしかして俺が男だってことも広まってないのか!? まさか……この学園の生徒って俺のこと女だと思ってるのか!? いや、そこまで馬鹿じゃないはずだ……よな?

転入生「おい、一体どういうことだ!?」

「い、いや! 俺も詳しくは知らないんだよ!」

問い詰める俺に対し、クラスメイトはまたも慌てて弁解する。いや、だっておかしいだろ! なんで女になってるんだ!? 男でも女でもないとか? いや、それを気にしたら負けだ。寧ろ気にしたら負けな気がするぞ!

転入生「あ~っ! もうとにかくだ! 俺は男だからな!? それだけは覚えとけよ!?」

「わ、わかった。お前が男だってことはちゃんと覚えておく」

俺の剣幕に押されたのか、クラスメイトは少し引き気味に頷いていた。(当たり前だろ。どっからどう見ても俺は男にしか見えないだろ。女顔でもあるまいし…)
そうしてまた少し話し込んでいたが、クラスメイトとの会話が終わる頃には俺の気もだいぶ紛れていた。やっぱり誰かに話すだけで気持ちが軽くなるものなのか……? そんなことを暢気考えながら次の授業のチャイムが鳴り、そこで会話は中断された。

それから放課後になり、俺は帰り支度をしてから教室を出る。
帰り際、祐二達に別れの挨拶を済ませつつ放課後。担任は言われた通りに職員室へと向かう。授業中に居眠りしてしまい、注意を受けるも、また眠ってしまうなんて……と憂鬱な気分で歩いていると、不意に廊下の角を曲がってきた人物にぶつかってしまった。

転入生「わっ!」
バランスを崩して尻餅をついてしまった俺は、慌てて顔を上げるとそこには無表情な椋橋が立っていた。
(昨日ぶり?)朝から一度も見かけていなかったので、まさかこんな所で出会うとは思っていなかった。

俺は立ち上がり「ごめん、前見てなかった……。怪我とかしてない?」と聞く。
すると「ああ……君か……」一瞬誰だったか分からなかったようだが、すぐに思い出したように応える。

椋橋「気にしないで良い。怪我はしていないから……」

転入生「そっか。良かったよ、それなら」
そう言って俺は微笑むと彼は「君はいつも笑顔を絶やさないんだね」不思議そうに問いかけられ。
俺は少し考えるような仕草をした後、こう答えた。

転入生「多分ね、それは俺がそういう人間だからかな?……でもそれが俺の長所でもあると思ってるよ」

「長所……」納得したのかしていないのか、曖昧な反応だったがそれ以上追及されることはなかった。
それからしばらく沈黙が続いたが、彼が何かを思いついたように口を開く。

椋橋「そういえば、君は僕についてどう思っているの?」

突然の質問だったが、俺は特に動じることもなく。
転入生「えっと……そうだね、正直に言ってよく分からないっていうのが本音。ただ君の一挙手一投足を目で追ってしまうというか……」

少し照れながら頬を掻く素振りを見せるが、内心はかなり緊張していた。何しろ相手はクラスでも有名な彼なのだ。どんな些細な反応も見逃さないようにしていたのだ。しかし彼はいつも通りの無表情で淡々と言葉を紡ぎ出す。

椋橋「……それが君の答え?」
俺は頷くしかなかった。ここで否定することはできないと思ったからだ。

それからしばらくの間、沈黙が二人の間に続いた。椋橋はただ黙ってこちらの様子を窺っているようで。時折俺の顔を見たり、視線を落としたりしながら考え込んでいる様子だった。そしてついに彼が口を開いた。

椋橋「君の目には……、僕がどう映っている?」

予想外の質問だったが、俺は素直に「うーん……よく分からないけど、不思議って感じかな?何を考えているのか全然読めないっていうか……」
それは俺にとって、正直な感想だった。
すると彼は一瞬驚いたような表情を見せた後、考え込むような仕草を再び見せる。どうやら俺の答えが予想外だったようだ。

椋橋「なるほど……君の目にはそう映っているんだね。……参考になった」そう言って立ち去ろうとする彼の背中に向かって俺は慌てて声をかける。

転入生「ねえ!ちょっと待って!」
すると彼はこちらを振り向くことなく立ち止まったが、その背中からは拒絶の意志が伝わってくるような気がした。

椋橋「もう質問は終わり。これ以上話すことは無い」
彼は淡々とした口調で告げた後、足早に去って行こうとする。
俺は背を向けた彼に、「昨日はありがとう」咄嗟に出た言葉に自分自身驚いた。(何で俺はこんなことを?)

振り返る彼に俺は「あ、いや」と口を濁す。

椋橋「別に礼を言われるようなことはしていない。アレも、仕事の一環だし…。」彼はそう言い残し、今度こそ本当に去って行った。
俺は一人取り残されたまま立ち尽くしていた俺は。彼の姿が見えなくなってもなお、その場から動くことができなかった。
(顔がいい奴は何をしても様になるな…)とか呑気に思ったり。(……あれ?)ふと、あることに気が付く。彼が去り際に残した言葉。(アレも、仕事の一環だし…)その言葉が妙に俺は引っかかった。
(仕事?って事はもしかして彼は何かの役員的なヤツなんだろうか?それとも何かのサークルとかで部長をやっていたり……。あの容姿ならさもありなんな……)そんな事を考えていると、不意に声が聞こえた。
「おい」

転入生「え?」
振り向くと、そこにはいかにも頭の悪そうな連中がいた。見た目からして運動部かどこかのヤンキー連中だろうか? とりあえず俺には全然縁もゆかりも無い人種だな……。

転入生「何だよ?」
思わず眉を潜める俺に対して、相手はニヤニヤと下品な笑みを浮かべたまま話しかけてきた。

「いやぁ~悪いね。ちょいと人を探してたんだけどさぁ……」

明らかに良からぬ事を企んでいそうな表情の連中。
(こりゃ素直に話し合い。とは、いかなそうだな…)
先生、すみませんか少々遅れそうです。心の中で、そう呟く俺を他所に、連中は言葉を続ける。

「その探してた相手ってのがアンタだよ」
転入生「………」
(デスよね~、そうなるよねw)
つーか、全くもって身に覚えがない。だが連中が俺に用があるとすれば間違いなく俺個人に対することだろう。そして俺が相手に全く見覚えがないことから考えられる事は一つしかない……。


転入生「もしかしてカツアゲとかするつもりなのか……?」

控えめに聞くと、連中はゲラゲラと楽しそうに笑った後。

「残念~。ちょっと違うわソレ」

「俺達はちょいと頼まれてお前をある場所に連れてコイって、頼まれた訳さ」

「まぁ運が悪かったと思って諦めな、坊主」

そう言うと連中のひとりが、まるで自分の力を見せつけるかのような態度で俺の胸ぐらを掴もうとしてきた。だが、その腕は俺が胸ぐらを掴むよりも早く、別の人物に掴まれる事になった。

担任「おい……。何勝手に俺の生徒に手ェ出してんだゴルァ……?」俺の目の前には腕を掴まれても平然としている担任と、その男の放った殺気に気圧され震えている他4人の姿があった。

転入生「先生⁉なんでここに!?」
驚いた俺を担任は、何故か楽しそうに笑いながら。

担任「おう、中々お前が職員室に来ないから探しに来た。で、お前こそ何をやってるんだ?」

転入生「俺は今から職員室に向かう途中で…」

担任「あぁ゙?? まさかとは思うが……。
虐められてたんじゃないだろうな……?」

転入生「いや、それが俺にも分かんなくて…。突然この人達に絡まれて…」
そう俺が言うと、担任は凄まじい形相で俺の胸ぐらを掴んでいた男を睨み、睨んだだけで男の肩がびくりと震えた。恐らく逆らうと危険だと感じたのだろう。そのまま男達は謝罪の一言もなく逃げ去っていった。

担任「とんだ災難だったな……。あいつらには後できっちりお灸をすえておく」
俺はそんな担任の姿を見て、俺の事を心配してくれていたんだと嬉しく思ったと同時に、強い憧れを感じた。

転入生「あ、ありがとうございます!助かりました!!」

担任「はは、気にするな。俺としてはお前に言いたい事が沢山あるんだ」

転入生「え……?」
担任の笑顔が怖い。何か怒らせるような事をしてしまっただろうか? (やっぱり授業中の居眠りがよく無かったのだろうか)

(とりあえず誤っとこ)
転入生「えっと……その、すみませんでした……」

担任「いや、謝られるような事じゃないさ。
それに、どうやら俺はお前に謝らなきゃいけない事もあるみたいだしな」

担任は俺が謝るべきと言ったが、俺は先生から何もされていない。何を言っているのか理解できないでいると、担任は胸ポケットから数枚の写真を取り出して俺の前に突きつけてくる。そこには、俺が居ない休み時間に見知らぬ男子生徒達が俺の机に何かしている場面や、陰口や悪口を言われているところが写っていた。

転入生「これは……?」
(いつの間に…)

担任「本来こんな廊下のど真ん中で話す事でも無いんだが、さっきの出来事といい。お前には早く伝えるべきだと判断した。コレはお前を影で虐めていた奴らのスマホから拝借したものだ。お前の事を見張っていたが、まさかここまでとはな……」

俺をずっと見ていた?そういえば、今日の昼休み、祐二達と昼食をとっている時にクラスの奴らが妙にソワソワしてたような……。まさかあの時から見張られていたのか?

転入生「なんで……そんな事を……」

俺が担任にそう聞くと、担任はさも当然のように答えた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

幼馴染は僕を選ばない。

BL / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:126

貢がせて、ハニー!

BL / 連載中 24h.ポイント:1,107pt お気に入り:831

兄の恋人(♂)が淫乱ビッチすぎる

BL / 完結 24h.ポイント:2,982pt お気に入り:20

どうぞ不倫してください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:36,665pt お気に入り:496

婚約者の義妹に結婚を大反対されています

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49,395pt お気に入り:5,022

【完結】未亡令嬢の契約婚

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:223

White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

BL / 連載中 24h.ポイント:413pt お気に入り:62

[完結] 残念令嬢と渾名の公爵令嬢は出奔して冒険者となる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:22,073pt お気に入り:712

処理中です...