上 下
13 / 106

アカデミー生

しおりを挟む
見つかりホッとする私とそれを優しく見守るユーリの間に流れるほんわかとした雰囲気。
『なんだ…あるんだ』と残念がる子は私に向け『フンっ』と強く鼻息を吐いていた。

「リーネ…今回みたいな事はもうしないように、いいですね?」

レイ事務長が私に対しキツく言ってきた。

「はい…ごめんなさい」

謝り頭を下げると、『では、中に行きます。ついてくるように』と皆に告げた。
私とユーリの横を通りすぐにレイ事務長の後をついて行く3人は一様に私の事を睨みつけながら…。

それを見た私は少し伏し目がちになってしまっていた。
でもそんな私をユーリはもう一度頭を撫で、私に対し首を振り、『構わなくてもいいから』と伝えている感じだった。

そして私の手を掴み、引き起こすとブローチを付けて。と促し、つけると3人を追うように私達もアカデミーの中へと入っていった。


レイ事務長以下3人に遅れながらついていくと向かった先はこれから生活の拠点となる私達の部屋の前だった。
足を止め私達を待っている様子の面々。
少し早歩きをし、追いつくとすぐに頭を下げ謝った。

「…いいですか。これからあなた達はアカデミー生です。
そのためにはその格好で中を彷徨く事は許されません。クローゼットに制服があるのでそれに着替えてください。
着替えたら昨日教えた講義を受ける部屋に集まる事、いいですね?」

制服…そう、アカデミーでは決まった服がある。
それは昨日案内されて広場で見ていた。
白いワンピースに赤と黒のチェック柄のストールを身に纏っているのを…。
皆一様に着慣れた雰囲気であり、私と似た年齢の子でさえ上品に着こなしているなぁっと思ったくらいだ。

「では、着替えてから集合」

「はい!」

各々鍵を取り出し部屋の中へと入っていく。
私も先ほどバックから出した鍵を使い、部屋へと入った。

「広い…」

中は1人で使うには広すぎるくらいだった。
語学を勉強するためにある机や椅子は何処か偉い人が使いそうなくらい高級で、座る椅子はリクライニングが出来る。
それにベットは1人では持て余すくらい大きなダブルベットだ。
そんな部屋をこれから1人で、と思うとブライスの家はどれだけ…と思ってしまった。

バックをポンと床に置くとクローゼットを開けた。
中にはアカデミー生が着ていたのと同じ白いワンピースに赤と黒のチェック柄のストールが何着も飾られていた。

目線を下に向けると黒いローファーが置いてあった。

(これを履くんだよね…?)

試しに足を入れるとやはりピッタリだった。
それはやっぱり私達を隅から隅まで『調べられている』と思い知らされる程であった。

「靴まで分かるなんて…一体何故…」

ライオネス家にかかったら朝飯前なのかもしれないが、ここまで把握されるといつ誰が何処で見てるんだろうと不安になってきた…。

そう思っていると部屋をノックされ、『わわっ』と声を上げ飛び跳ねた。

ローファーを履いたまま扉を開けるとユーリがそこにいた。
制服は着てないのに靴だけ履いている私を見てユーリは首を横に振っていた。
『違うよ』と言ってみるみたいに。

「ごめん…すぐ着るから」

扉を開けたままクローゼットに戻り、急いで着るがなかなかうまくいかない。
開いたままの扉を入り、私が着替えている様子を見ているユーリは何も言わないで暖かく見守っていた。

「…おまたせ。ごめんね」

「いいよ、行こう」

ユーリの後をついていき集合場所を目指す途中、制服を着たユーリに見惚れてしまっていた。
同い年の女の子でもこんなに可愛いなんて…と。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

会うたびに、貴方が嫌いになる

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。 アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。

処理中です...