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励まし

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胸で泣く私をリックさんは何も言わずに受け止めてくれた。
だが、次第に雨がポツポツと降りだし優しく支えられながら屋敷の中へと移動していった。


連れてこられた場所は階段から程近い一室。
周りを食器が沢山入っている棚で囲まれ、所々に椅子や花瓶が置かれていた。

「ここは備品室です。ここなら誰かが入ってくる事もあまりありません。……もし、良かったらお話し聞きますよ、レナさん」

やはり私に味方だ、と思い私は先程怒った無礼を詫びた後、安置室で起こった出来事をリックさんに話した。

「……そうですか。アルバート様の前で」
「でも、私より、姉を。どうして姉なんかを。
本当の事を知れば絶対に見る目は変わるのに、なんで……」

備品室にある木の椅子に項垂れつつ座り話す私は意気消沈しており、話す言葉も弱い。

「あなたのお姉さんはまるでアルバート様を洗脳している感じですね」
「せ、洗脳?」
「洗脳というと言い方が変かもしれませんが、相手の懐に入るのが上手い。
人を見て、こうすれば……という能力が高いのかと」
「そんな事言ったら、ずっと!」
「そうですね……、でも」
「でも?」
「いくらお姉さんと言えど、人間。何処かでボロは出ます。
そしてそれを引き出せるのはレナさん、あなただと思う」
「私……?」
「えぇ、私達は言ってしまえば部外者。でも、あなたは妹だ。……一緒にいるのが嫌でしょうが、正面からぶつかれるのは他でもない、あなたです」

リックさんの言葉はスッと私の心に落ちてきた。
出来るのは自分…。
父に対してもなんとも思わないあの姉をギャフンと言わすため私はアルバート様に話がしたいとリックさんに尋ねた。

すると胸から時計を取り出し、時間を確認したのち私に言ってきた。

「……今ならもしかしたらあの廊下にいるかもしれません」
「廊下、と言うと?」
「通ってきましたよね。あの花が飾られている廊下です」
「あっ」

私はすぐに立ち、その場所へと向かおうとすると、部屋の外から声が聞こえてきた。
女性の声でどうやらリックさんを探しているみたいだ。

「行かないといけませんね。こちらで注意を引きますのでその間に」

そう言うとリックさんは食器棚から一つのグラスを取り出すと部屋を出ていった。

「あっ、リックさん。……なぜ、そこに??」
「いやぁ、不注意でグラスを割ってしまい、代わりを取りに」
「そうでしたか、それなら言ってもらえたら私が」
「いやいや、割ったのは自分ですから。……それより」

リックさんが話しつつその女性を引き連れて備品室から遠ざけてくれた。

(ありがとう……リックさん)

足音が遠ざかったのを確認すると私はゆっくり備品室を出てあの廊下へと向かう事にした。
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