12 / 42
出来が違う
しおりを挟む
「マジかよ……」
俺は持っていた本から手を離し、少し食い入る様にその手帳を覗き込んだ。
だが、何度見ても変わる事なく、今日は『本当』に休みらしい。
だけど、一つ疑問が浮かんだ。
「休みなのは分かったが、それでも、なんであんたは制服姿なんだ?休みなら堂々と私服でこりゃあいいのに」
「それは、この格好の方が集中出来るので……」
「な、なるほどな……」
小野さんは手帳をトートバッグにしまい、俺を見てきた。
「なんだよ?」
「浩二さんはそういう本に興味があるんですか?」
目線は俺が持つ本へと移動していく。
つられて俺も本へと移すが、持ってきたのは『一週間はコレで決まり』というタイトルの料理本であり、絶対に手に取らなそうな本だった。
慌てて本を小野さんの視界から消す様に自身の背中へ隠した。
「これはだな!」
少し大きめの声を上げてしまい、周りにいた人から視線を受ける。
「……ふふっ」
「あ"ぁっ!?」
笑われたことについ、いかつい声を出して迫ったが、右手で口元を押さえ、両頬を軽く上げ目を少し細めて笑い出す。
「……やっぱり面白いです、浩二さん」
「笑うなよ!……咄嗟に取ったんだから」
笑われて嫌な気分になったが、周りの迷惑にならないようクスクス笑う小野さんの笑顔に俺は少しずつそんな気分は薄れていき、その笑顔を見ていた。
笑いは少しずつ収まり、右手を外すと俺に話しかけてくる。
「でも、咄嗟に、っていってましたよね。どうしてですか?」
「そ、そりゃあ、あんただと思わなかったし、それにこんな時間に制服姿でいたら誰かって気にはなるだろ」
「本当ですか?」
「なんで嘘なんてつかなきゃいけねぇんだ?」
「私は……会えて良かった、って思ってます」
「えっ?」
小野さんはまたトートバッグに手を伸ばし、何か探し出した。
そして薄いピンク色をした革の長財布を出し、チャックを開けると一万円札を俺に差し出した。
「あっ……」
「お返しします、まさか今日返せるなんて思ってなかったですが、入れておいて良かったです」
返そうとするお金は新札で、シワひとつないお金は何だか光って見え、なかなか手が伸びなかった。
「浩二さん?」
「なぁ、あんたっていつも借りたりしたら新札で返すのか?」
「まずかったですか……?」
「いや、……偉いなと思って。俺なんて借りたりしてもそんな風にして返すなんてしねぇ、くしゃくしゃのまま返すと思う。
人として出来てんだな、あんた」
「そんな……私は親がそう教えたからしただけで」
「やっぱ、偉ぇよ、あんた。俺は親が言っても反感するし、文句も言う。次元が違うわ」
考え方も行動も全く違う小野さんに頭が上がらず、俺は差し出された一万円札を右手の人差し指と中指で上から押さえつけながら小野さんの方へと移動させていった。
俺は持っていた本から手を離し、少し食い入る様にその手帳を覗き込んだ。
だが、何度見ても変わる事なく、今日は『本当』に休みらしい。
だけど、一つ疑問が浮かんだ。
「休みなのは分かったが、それでも、なんであんたは制服姿なんだ?休みなら堂々と私服でこりゃあいいのに」
「それは、この格好の方が集中出来るので……」
「な、なるほどな……」
小野さんは手帳をトートバッグにしまい、俺を見てきた。
「なんだよ?」
「浩二さんはそういう本に興味があるんですか?」
目線は俺が持つ本へと移動していく。
つられて俺も本へと移すが、持ってきたのは『一週間はコレで決まり』というタイトルの料理本であり、絶対に手に取らなそうな本だった。
慌てて本を小野さんの視界から消す様に自身の背中へ隠した。
「これはだな!」
少し大きめの声を上げてしまい、周りにいた人から視線を受ける。
「……ふふっ」
「あ"ぁっ!?」
笑われたことについ、いかつい声を出して迫ったが、右手で口元を押さえ、両頬を軽く上げ目を少し細めて笑い出す。
「……やっぱり面白いです、浩二さん」
「笑うなよ!……咄嗟に取ったんだから」
笑われて嫌な気分になったが、周りの迷惑にならないようクスクス笑う小野さんの笑顔に俺は少しずつそんな気分は薄れていき、その笑顔を見ていた。
笑いは少しずつ収まり、右手を外すと俺に話しかけてくる。
「でも、咄嗟に、っていってましたよね。どうしてですか?」
「そ、そりゃあ、あんただと思わなかったし、それにこんな時間に制服姿でいたら誰かって気にはなるだろ」
「本当ですか?」
「なんで嘘なんてつかなきゃいけねぇんだ?」
「私は……会えて良かった、って思ってます」
「えっ?」
小野さんはまたトートバッグに手を伸ばし、何か探し出した。
そして薄いピンク色をした革の長財布を出し、チャックを開けると一万円札を俺に差し出した。
「あっ……」
「お返しします、まさか今日返せるなんて思ってなかったですが、入れておいて良かったです」
返そうとするお金は新札で、シワひとつないお金は何だか光って見え、なかなか手が伸びなかった。
「浩二さん?」
「なぁ、あんたっていつも借りたりしたら新札で返すのか?」
「まずかったですか……?」
「いや、……偉いなと思って。俺なんて借りたりしてもそんな風にして返すなんてしねぇ、くしゃくしゃのまま返すと思う。
人として出来てんだな、あんた」
「そんな……私は親がそう教えたからしただけで」
「やっぱ、偉ぇよ、あんた。俺は親が言っても反感するし、文句も言う。次元が違うわ」
考え方も行動も全く違う小野さんに頭が上がらず、俺は差し出された一万円札を右手の人差し指と中指で上から押さえつけながら小野さんの方へと移動させていった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
泣きたいきみに音のおくすり ――サウンド・ドラッグ――
藤村げっげ
青春
「ボカロが薬になるって、おれたちで証明しよう」
高次脳機能障害と、メニエール病。
脳が壊れた女子高生と、難聴の薬剤師の物語。
ODして、まさか病院で幼馴染の「ぽめ兄」に再会するなんて。
薬のように効果的、クスリのように中毒的。
そんな音楽「サウンド・ドラッグ」。
薬剤師になったぽめ兄の裏の顔は、サウンド・ドラッグを目指すボカロPだった!
ボカロP、絵師、MIX師、そしてわたしのクラスメート。
出会いが出会いを呼び、一つの奇跡を紡いでいく。
(9/1 完結しました! 読んでくださった皆さま、ありがとうございました!)
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
愛の境界線
瀬名セレナ
青春
主人公、國崎莉々菜は地元では有名な資本家の娘である。そんな莉々菜の父が設立した地元の名門高校私立明美台高校。そしてその隣に隣接するのは県立明美台南高校。両校はグラウンドなど一部設備が共用であるのにも関わらず高い壁で区切られている。そんな中、南高校の生徒会長である萩原ユウトは資本家の娘の集まりであり、いつも鉄仮面を被っている彼女達を笑わせる事を目的に生徒会メンバーを引き連れて両校の境界線に向かうのであった。
翠名と椎名の恋路(恋にゲームに小説に花盛り)
jun( ̄▽ ̄)ノ
青春
中2でFカップって妹こと佐藤翠名(すいな)と、中3でDカップって姉こと佐藤椎名(しいな)に、翠名の同級生でゲーマーな田中望(のぞみ)、そして望の友人で直球型男子の燃得(もえる)の4人が織り成す「恋」に「ゲーム」に「小説」そして「ホットなエロ」の協奏曲
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる