寝取られ辺境地へと追いやられましたが平気ですっ

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それから三日後……。

「アドルフ様、奴らが森を抜けてきます」
「ふっ、そうか。ならこちらから攻めても何も言われんな」


本宅の外で馬に乗り報告を受けるアドルフは軽く笑う。

「じゃあ、行くか。……お前ら、思う存分やっていいからな!」

集まった兵士達に檄を飛ばすと今まさにニコラスへと向け出発しようとした。

「あ、アドルフ?」

先頭に立ち、甲冑をつけたアドルフの腰にはあの長剣を携えており、馬も、前脚部分をガードするかのように甲冑のような装備を施している。

「なんだ?」
「……その」
「いまはだらだら喋ってる場合じゃないからな、言いたいことは手短に言ってくれ」
「し、死なないで……」

私の言葉に少し驚いた表情を見せるが、すぐに戻していく。

「……そんな顔をするな、あんな奴に負ける気などない。大人しく待ってろ」
「……わ、私も!?」
「ダメだ」
「でもっ!?」

馬に乗るアドルフへと近づき、自身も戦場に行きたいと懇願した。
そんな様子を見ていたキサラさんが声を掛けてくる。

「……いいんじゃない?」
「なに言ってるんだ、お前」
「気になるんでしょ、メリッサさんの事が」

キサラさんの言葉に目線をこちらへと向けてくる。

「……はぁ。ならキサラ、お前が守れよ。お前の力が必要だって言うのに」
「フェリスさんの気持ちもちゃんと分からないと先々怒られるよ、アドルフ」
「なんだ、それは」

アドルフは会話を打ち切り、少し前へと馬を歩ませた。

「フェリスさん」

手を差し出し、私を馬へと乗せていく。

「……いいな?お前は隊の真ん中付近にいろよ」
「はいはい、もちろん、わかってるよ」

「いくぞっ」

アドルフは馬を走らせると引き連れた兵士達も同時に馬を走らせていき、戦場へと向かっていった。




森の中を走る際、アドルフが少しこちらを向き確認するかのような仕草を見せてくる。

「……本当は自分の近くに置いておきたいんですよね」
「えっ?」
「すみません、分かりやすいんですよ、アドルフは。……あなたが好きだって事が」
「……」
「……フェリスさんも、ですよね?」
「えっっ!?どうして!?」
「ははっ、そんな風に反応していいんですか?」

少し笑いながらキサラさんが問いてくるが、私は繕う事が出来ず少し無言になった。

「まぁ、あの日、何があったか知りませんが二人の様子がおかしいからちょっと突いてみました」
「……よく見てるんですね」
「私はアドルフみたいに突っ込んで進むタイプじゃないですからね。縁の下の力持ち?みたいな感じですから。だから広く見渡すのは得意かもですね」
「そうですか」
「……そろそろ抜けますね」


森を抜けると荒野の先に馬が見え、その近くには黒い物体がいくつも並んでいるのが見えた。

すると、アドルフ達は先程よりもスピードを上げて荒野を進んでいき、距離を縮めていく。

ドォォォンっという大きな音を立て、丸い球体が空を埋め尽くすように降ってきた。

「……大砲、ですか」
「知ってるんですか?」
「アドルフも以前作らせようとしてましたからね。でも、すぐに辞めました。理由はすぐに分かりますよ」

キサラさんの言葉の意味が最初は分からなかったが、次第にその意味が分かってきた。
いくつも降ってくるが、アドルフ始め兵士達は馬を操作し、避けつつ進んでいく。

近付かれた事を見て、ニコラス達も同じように馬に乗って立ち向かうようになり、砂煙の中、交戦が始まっていった。








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