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「アドルフ……?」
抱いたまましばらく私達はその場に立っていた。
そして、アドルフはゆっくりと手を離すと一歩下がり距離を取っていった。
「……悪い」
すぐに顔を背け、馬の首筋を撫でていく。
「いまの、って」
私の問いに首筋を撫でる手が止まると、今度は自身の後頭部を掻き出していく。
「アドルフ?……今のは、こくは……」
「あぁ、そうだ。その通りだ」
照れなのだろう。
一切私のことを見ようとしてこない。
そればかりか、そこまで暑さもないのに、額には汗を掻いているようだ。
「……私のこと」
「お前が嫌なら忘れてくれ」
依然、後頭部を掻き自身を落ち着かせようとしているのか、その手はさっきよりも少し早い。
一方で私はゆっくり近寄って行った。
そして、掴んでいた手綱の上に添えるよう手を重ねた。
「ありがとう……」
アドルフの手は暖かく、触れる私の手は徐々にその暖かみを感じていく。
「お前は他とは違う。俺と向き合うし、……なにより守りたいと思った」
「……うん」
「何度も触れたいと思った。だが、それは俺のエゴになる」
「……いいよ」
「あぁっ?」
「いいよ、触れたいんでしょ?」
私はアドルフの事を見上げた。
「フェリス……」
私は添えていた手を自身の頬へと移動させ触れさせた。
「顔、赤いぞ?」
「暗くて見えないと思うけど」
「いや、月明かりで分かる」
ゆっくりとアドルフが顔を近づけてくるので私は目を閉じ待った。
だけど、いつまで待ってもアドルフは思った行動をしてこなかったので私は目をゆっくりと開けた。
すると、目の前に顔があった。
「わぁぁ!」
「……キスすると思っただろ?」
ズバリそうだから頷くしかなかった。
「ここではするつもりはないぞ」
「……それ、前も聞いた気がする」
「ふっ、かもな。……乗れよ、行くぞ。キサラもそろそろ撒く頃だ」
ひらりと馬に乗ると私に手を差し出し、掴むと一気に引いた。
そしてまた腹を蹴り、施設を後にしていく。
荒野を少しゆっくり目に走り続けているが、その道中、私達の会話は無かった…。
私のすぐ後ろにいるアドルフがいま何を思ってるのか全くわからない。
息遣いが乱れる事もないし、心臓の音がはっきり聞こえるわけでもない。
至って普通だ…。
(さっきのは告白、だよね。認めてるし、でもその後が…)
私を好き。
これは間違いない。だって言ったんだから…。
でもおちょくるようにキスを拒んだ。
場所だけの問題なのだろうか…?
モヤっとした感じを抱えつつ走っていると後ろから声がしてきた。
「あぁ、良かった、追いついた」
「キサラ、さん」
「遅かったな」
「いやぁ、なかなか撒くのも大変だね、久しぶりだったし」
「……そうだったか?悪いな」
「それで?」
「あぁっ?何が言いたい?」
「もう、とっくに森へ行ったかと思ったけど、まだこの辺にいたからなんでかなぁっと」
「別に……」
アドルフはキサラさんから顔を背けていく。
「その、私がお腹空いてしまって……」
「そう、それで施設にいたって事ね。……それよりちょっと嫌なこと聞いたんだけど」
「なんだ?」
「ニコラスが攻めてくるって聞いた。撒きつつ話すのを聞いたんだけど」
「あっ!」
「どうかしました?」
「ごめんなさい。言い忘れていて……」
「……言ってみろ」
「ニコラスが休戦を破り、攻めてくる。それも今まで使ってこなかったような武器を使うとか」
それを聞いたアドルフは『ふふっ』と笑った。
「なんで笑うの?」
「あいつらしいなと。お前を監禁した事といい、自身から言い出した休戦を破るとは。
まぁ、それならそれでこちらにも大義名分が出来た訳だから遠慮はいらんな」
ギュッと手綱を握り込んでいく。
「キサラ、帰ったらすぐに周りに伝えてくれ。近々大掛かりな事になるとな」
「……それはいいとして、怪我はいいのかい?」
「ふっ、どうって事ない。折れてるわけでもないしな」
私達はその後、森を抜け、本宅へと戻って行った。
抱いたまましばらく私達はその場に立っていた。
そして、アドルフはゆっくりと手を離すと一歩下がり距離を取っていった。
「……悪い」
すぐに顔を背け、馬の首筋を撫でていく。
「いまの、って」
私の問いに首筋を撫でる手が止まると、今度は自身の後頭部を掻き出していく。
「アドルフ?……今のは、こくは……」
「あぁ、そうだ。その通りだ」
照れなのだろう。
一切私のことを見ようとしてこない。
そればかりか、そこまで暑さもないのに、額には汗を掻いているようだ。
「……私のこと」
「お前が嫌なら忘れてくれ」
依然、後頭部を掻き自身を落ち着かせようとしているのか、その手はさっきよりも少し早い。
一方で私はゆっくり近寄って行った。
そして、掴んでいた手綱の上に添えるよう手を重ねた。
「ありがとう……」
アドルフの手は暖かく、触れる私の手は徐々にその暖かみを感じていく。
「お前は他とは違う。俺と向き合うし、……なにより守りたいと思った」
「……うん」
「何度も触れたいと思った。だが、それは俺のエゴになる」
「……いいよ」
「あぁっ?」
「いいよ、触れたいんでしょ?」
私はアドルフの事を見上げた。
「フェリス……」
私は添えていた手を自身の頬へと移動させ触れさせた。
「顔、赤いぞ?」
「暗くて見えないと思うけど」
「いや、月明かりで分かる」
ゆっくりとアドルフが顔を近づけてくるので私は目を閉じ待った。
だけど、いつまで待ってもアドルフは思った行動をしてこなかったので私は目をゆっくりと開けた。
すると、目の前に顔があった。
「わぁぁ!」
「……キスすると思っただろ?」
ズバリそうだから頷くしかなかった。
「ここではするつもりはないぞ」
「……それ、前も聞いた気がする」
「ふっ、かもな。……乗れよ、行くぞ。キサラもそろそろ撒く頃だ」
ひらりと馬に乗ると私に手を差し出し、掴むと一気に引いた。
そしてまた腹を蹴り、施設を後にしていく。
荒野を少しゆっくり目に走り続けているが、その道中、私達の会話は無かった…。
私のすぐ後ろにいるアドルフがいま何を思ってるのか全くわからない。
息遣いが乱れる事もないし、心臓の音がはっきり聞こえるわけでもない。
至って普通だ…。
(さっきのは告白、だよね。認めてるし、でもその後が…)
私を好き。
これは間違いない。だって言ったんだから…。
でもおちょくるようにキスを拒んだ。
場所だけの問題なのだろうか…?
モヤっとした感じを抱えつつ走っていると後ろから声がしてきた。
「あぁ、良かった、追いついた」
「キサラ、さん」
「遅かったな」
「いやぁ、なかなか撒くのも大変だね、久しぶりだったし」
「……そうだったか?悪いな」
「それで?」
「あぁっ?何が言いたい?」
「もう、とっくに森へ行ったかと思ったけど、まだこの辺にいたからなんでかなぁっと」
「別に……」
アドルフはキサラさんから顔を背けていく。
「その、私がお腹空いてしまって……」
「そう、それで施設にいたって事ね。……それよりちょっと嫌なこと聞いたんだけど」
「なんだ?」
「ニコラスが攻めてくるって聞いた。撒きつつ話すのを聞いたんだけど」
「あっ!」
「どうかしました?」
「ごめんなさい。言い忘れていて……」
「……言ってみろ」
「ニコラスが休戦を破り、攻めてくる。それも今まで使ってこなかったような武器を使うとか」
それを聞いたアドルフは『ふふっ』と笑った。
「なんで笑うの?」
「あいつらしいなと。お前を監禁した事といい、自身から言い出した休戦を破るとは。
まぁ、それならそれでこちらにも大義名分が出来た訳だから遠慮はいらんな」
ギュッと手綱を握り込んでいく。
「キサラ、帰ったらすぐに周りに伝えてくれ。近々大掛かりな事になるとな」
「……それはいいとして、怪我はいいのかい?」
「ふっ、どうって事ない。折れてるわけでもないしな」
私達はその後、森を抜け、本宅へと戻って行った。
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