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「ちょっと待って!?」
声を上げる私にニコラスは少し足を止めると振り返ってくる。
「なんだ?もう話など無い。……いや、忘れていた。一つだけあったな」
「ニコラス様??」
再度こちらへと戻ってきた。
「なに?忘れていた事って……」
「近々、アドルフへの攻撃を開始する。リスティアとの婚姻も済んだ事だしな。
それに以前より作っていた物が完成し、それを使って勝利しようと思う。驚く顔が早く見たいものだな!」
「……あなた、自分から休戦を申し出たのにそれを破る気?」
「なんだ、知っていたのか。アドルフから聞いたのか?」
「えぇ、聞いたわ」
「ふっ、まぁいい。聞いた所でお前に何かできる訳じゃないからな、そこで大人しくくたばってくれ。……すまないな、リスティア、長々と」
「いいえ。……それじゃあ、お姉様、さようなら」
「リスティア!?」
それ以上何も言わずに二人は階段を登っていってしまった。
登る二人へ向けた悲痛な叫びなどもう聞こうともせず…。
誰も居なくなった牢屋。
(このまま私は死ぬの……?)
薄暗い空間の中、蹲る私は些細な音に過敏になり、寝ることすら出来なかった。
ーーーーーーー
その後、時間だけが過ぎていき、今が何時であるかもわからなかった。
ただ、喉が渇き、お腹が鳴るのでぶち込まれてから長い時間が経っているのだけは分かった。
私はもう座るのも疲れ、体を横にし冷たい床をボォッと見るだけになっていた。
だけど、誰もこの牢屋に来る事もなくさらに時間だけが経過していく…。
空腹から爪をつい噛んでしまった。
その際触れる唇がとてもカサカサしており、爪が引っかかると痛さを感じた。
多分、血が出たのだろう。
(……頭も痛い)
空腹すぎて頭痛も発生し、さらには生あくびも頻発するようになってきた。
(このまま死んだ方が、楽、かな……)
次第に諦め、目を瞑っていく。
すると、今まで誰も来なかった階段を降りる足音がしてきた。
その足音は普通に降りる感じではなく、まるで何かを探すようにゆっくりと慎重に降りてくる感じがした。
そして階段を降り姿を見せたのはあの騎士だった。
どうやら一人のようだ。
(一人?……前は複数いたはず)
声をかける力はほとんどなく、来た騎士を見ていた。
そうしていると騎士は牢屋にいる私の鍵をいきなり叩き始めた。
「えっ」
思わず声が漏れ、倒していた体を起こし、隅へと逃げた。
一心不乱に掛かってる南京錠を何度も右腕に付けた甲冑で叩いてくる。
「……あなた、誰なの?」
一瞬、動きが止まるも、すぐに叩くのを再開する。
そして、バキっと音を鳴らし南京錠を壊すとゆっくりと入ってきた。
「こ、来ないで!?」
ぬっと入ってきた騎士は大きくすぐに隅にいる私を追い込んでくる。
私は開けられた鍵の方を見て逃げる算段を考えた。
しかし、そんなことを考えた私との距離を一気に詰めてきてあっという間に捕まってしまった。
「やめてっ!?」
覆い被さるように捕まえてきた騎士に対し、抵抗する力はほとんどなく手足をバタつかせるだけだった。
「静かにしろ。騒ぐと、殺す」
その言葉に私はもうダメだと思った。
その真意は犯すんだ、と。
動かしていた手足の抵抗をピタリと止め、大人しくなった。
歯をガチガチと鳴らし、その瞬間が来てしまうのを恐れた。
「……するかよ」
意外な言葉だった。
騎士がゆっくり体を離すとその顔を見せてきた。
「帰ってこねぇと思ったら、こんなことになってるとはな。まぁ、ニコラスがやりかねん事だな」
「……あ、アドルフ?」
「声を上げるな、今は夜だ。今のうちに出るぞ」
来た人物がアドルフである事に驚くと共に私は大粒の涙が自然と出てきた。
声を上げる私にニコラスは少し足を止めると振り返ってくる。
「なんだ?もう話など無い。……いや、忘れていた。一つだけあったな」
「ニコラス様??」
再度こちらへと戻ってきた。
「なに?忘れていた事って……」
「近々、アドルフへの攻撃を開始する。リスティアとの婚姻も済んだ事だしな。
それに以前より作っていた物が完成し、それを使って勝利しようと思う。驚く顔が早く見たいものだな!」
「……あなた、自分から休戦を申し出たのにそれを破る気?」
「なんだ、知っていたのか。アドルフから聞いたのか?」
「えぇ、聞いたわ」
「ふっ、まぁいい。聞いた所でお前に何かできる訳じゃないからな、そこで大人しくくたばってくれ。……すまないな、リスティア、長々と」
「いいえ。……それじゃあ、お姉様、さようなら」
「リスティア!?」
それ以上何も言わずに二人は階段を登っていってしまった。
登る二人へ向けた悲痛な叫びなどもう聞こうともせず…。
誰も居なくなった牢屋。
(このまま私は死ぬの……?)
薄暗い空間の中、蹲る私は些細な音に過敏になり、寝ることすら出来なかった。
ーーーーーーー
その後、時間だけが過ぎていき、今が何時であるかもわからなかった。
ただ、喉が渇き、お腹が鳴るのでぶち込まれてから長い時間が経っているのだけは分かった。
私はもう座るのも疲れ、体を横にし冷たい床をボォッと見るだけになっていた。
だけど、誰もこの牢屋に来る事もなくさらに時間だけが経過していく…。
空腹から爪をつい噛んでしまった。
その際触れる唇がとてもカサカサしており、爪が引っかかると痛さを感じた。
多分、血が出たのだろう。
(……頭も痛い)
空腹すぎて頭痛も発生し、さらには生あくびも頻発するようになってきた。
(このまま死んだ方が、楽、かな……)
次第に諦め、目を瞑っていく。
すると、今まで誰も来なかった階段を降りる足音がしてきた。
その足音は普通に降りる感じではなく、まるで何かを探すようにゆっくりと慎重に降りてくる感じがした。
そして階段を降り姿を見せたのはあの騎士だった。
どうやら一人のようだ。
(一人?……前は複数いたはず)
声をかける力はほとんどなく、来た騎士を見ていた。
そうしていると騎士は牢屋にいる私の鍵をいきなり叩き始めた。
「えっ」
思わず声が漏れ、倒していた体を起こし、隅へと逃げた。
一心不乱に掛かってる南京錠を何度も右腕に付けた甲冑で叩いてくる。
「……あなた、誰なの?」
一瞬、動きが止まるも、すぐに叩くのを再開する。
そして、バキっと音を鳴らし南京錠を壊すとゆっくりと入ってきた。
「こ、来ないで!?」
ぬっと入ってきた騎士は大きくすぐに隅にいる私を追い込んでくる。
私は開けられた鍵の方を見て逃げる算段を考えた。
しかし、そんなことを考えた私との距離を一気に詰めてきてあっという間に捕まってしまった。
「やめてっ!?」
覆い被さるように捕まえてきた騎士に対し、抵抗する力はほとんどなく手足をバタつかせるだけだった。
「静かにしろ。騒ぐと、殺す」
その言葉に私はもうダメだと思った。
その真意は犯すんだ、と。
動かしていた手足の抵抗をピタリと止め、大人しくなった。
歯をガチガチと鳴らし、その瞬間が来てしまうのを恐れた。
「……するかよ」
意外な言葉だった。
騎士がゆっくり体を離すとその顔を見せてきた。
「帰ってこねぇと思ったら、こんなことになってるとはな。まぁ、ニコラスがやりかねん事だな」
「……あ、アドルフ?」
「声を上げるな、今は夜だ。今のうちに出るぞ」
来た人物がアドルフである事に驚くと共に私は大粒の涙が自然と出てきた。
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