寝取られ辺境地へと追いやられましたが平気ですっ

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それから逆に私の方がアドルフを避けるような生活になってしまった。

(……はぁぁ、気が重いな)

自分の心が少し動いてしまったせいでアドルフの部屋には近寄らず、私は天気が良い時は外で過ごす事にした。



「ここにあったんだ」

本宅の裏手の隅を曲がった場所に花が植えられており、その上を見上げるとアドルフの部屋の窓が見えた。

(また本でも読んでいるのかな?)

見上げる窓には人影がなく少しホッとした。
だが、あまり見上げていて見つかるのも嫌だからすぐに首を下げ、花に目を落とした。

赤、黄色、白、……色とりどり咲き誇っているが、私は花の種類は詳しくないから『綺麗』という感情だけで見ていた。

「ここにいたんですね」

ひょこっとキサラさんが顔を覗かせてきた。

「え、えぇ。……キサラさんは何故ここに?」
「私は、それを」

いま私が見ていた花へと指差してくる。

「これを、……どうするんですか?」

するとキサラさんはしゃがみ込み、咲いている花の周りを弄り出した。
よく見ると、根っこに生えている雑草を取っているようだ。

「えっ、そんなことまで!?」
「えぇ、取らないと枯れますからね」
「いや、そこじゃなくて……キサラさんがそこまで手入れを??」

一瞬、間を置くと、あはははっと笑い出してきた。

「どうして笑うんです??」
「多分、他にも召使いがいて、その者がやると思ったんですよね」
「それは、まぁ……」
「他にも召使いはいますよ、もちろん。でもここは」

雑草をとっていたキサラさんは立つと、少し手招きをして広大な運動場と厩舎の方を指さしていく。

「ほとんど馬の世話に回ってます」

見ると沢山の人が馬を引いたり、走らせたりしており、本宅内の事をしている人は少なそうに見えた。

「中では食事の世話したりする者とかだけですからね、だからここまで手が回りません。
まぁ、幸いというか、今はメリッサさんも手伝ってくれますから助かってます」
「そうですか……ごめんなさい」
「なんで謝るんです??」
「私は、何もしてないから」

「そんな事無いですよ。ここにあなたが来てからアドルフは変わったんですから。今までずっと威圧し追い出していたのがピタリと止まった。あなたのおかげです」

「あの……」
「はい?」

「アドルフが追い出して行った人って……どんな人なんですか?」

私の質問にキサラさんは持っていた雑草を落とし、手を払うと、少し周りを気にしだしキョロキョロすると『こっちへ』と私を連れ出した。







連れてこられた場所は運動場から程近く、背を森がすぐに迫り木々の葉によって日陰が出来ている場所だった。

「どうぞ」

その近くには休憩するためなのか、木の小さな椅子が置かれており、その一つを私に渡してきた。

「ありがとうございます。でもどうしてここに??」

キサラさんは徐ろに本宅の方を見上げ、どうやらその方向にはアドルフの部屋のようだった。

(なるほど……)

「ここなら木の影にもなるし、分かりませんからね」
「心遣い、ありがとうございます……」
「いいえ、それで知りたい事はさっきので?」
「え、えぇ」

膝の上に置いた手をしきりに触り、どんな事を言われるのだろうかとソワソワした。

「じゃあ、ゆっくり一つずついきましょうか」
「……お願いします」


そして口を開いたキサラさんの言葉に私は耳を傾け聞いた。
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