寝取られ辺境地へと追いやられましたが平気ですっ

mock

文字の大きさ
上 下
28 / 50

28

しおりを挟む
それから、私はルーベルト家での生活を続けた。
といってもこの家でする事はほとんどなく、部屋にいては持ってきた本を読み、たまに外に出て散歩をするような日々が続いた。

「お嬢様」
「なに、メリッサ?」
「あれから、何もないですね。なんかそれがかえって不気味というか……」
「不気味って……まだ疑ってるの?」
「だって、急に優しくなったのにそれ以上何も接触してこないっておかしくないですか?」
「……もしかしてメリッサがそういう目で見てるから来ないのかもしれないね」
「えっ!?私!?」
「……嘘よ。なにかやることがあるんでしょ、一応なんだし」
「それはそうですけど……」

でも私も少しは気にはなっていた。
あの日以降、アドルフと同じ本宅にいるのにまったく姿を合わせない。
引き篭もっている……といえばそれまでだが、ここまで何もないのは少し心配にもなってくる。

「……あの日、落ちたんですよね?お嬢様」
「えぇ……それは私が悪いから……」
「病気、なんてことないですよね??」

(病気……。でもそれも無くは無いかも)

「キサラさんに聞いても『忙しい』としか教えてくれませんし。もしかして寝込んでいるとか?」
「ん~……」

何も行動しなければ始まらないし、分からない。
行動をするべきだと思い、私はアドルフの部屋へと向かった。



コンコンッ



「……入れ」

(あれ?普通に声がした。寝込んでいるわけじゃない??)

恐る恐る私は扉を開いた。

「なんだ?」
「……起きてるんだ」
「はぁ??今、何時だと思ってる、昼過ぎだぞ」

開いた先のテーブルの上には幾つも本を重ね読んでいたアドルフがいた。

「何しに来た?」
「別に用はないんだけど……」

開いた扉の取手に手を付けたまま話す私にアドルフは中に入ってこいと言う。

「えっ」
「そのまま引き下がるのか、……フェリスは」

(いま、なんて……??)

思わず私は強く扉を閉め、中へと入っていった。

「私の事、フルネームで呼んでない……?」
「それがどうした?」
「どうして???」

「どうしてって……」

開いていた本をぱたんと閉じると、自身の隣の椅子を引いていった。

「……とりあえず座れ」
「先に私の質問を!?」
「そんな重要な事か、名を呼んだだけだぞ」
「だからそこが重要なの!なんで急に呼ばなくなったの?」

照れ隠しなのか後頭部を掻きつつ答えてきた。

「……お前とは、仲良くしていきたいからだ。呼ばれて嫌だったら元に戻す」

「ふぅ~ん」
「答えたぞ、なのにそんな態度か?」

何故かその時、私は強がり目を細め、座るアドルフに余裕そうな顔を見せた。

「そっか」
「そっか、って。お…………………フェリスはどうなんだよ?」

もう一度名を呼んだのを聞くと、私はゆっくり引いてくれた椅子へと向かい、隣に座った。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

落ちぶれて捨てられた侯爵令嬢は辺境伯に求愛される~今からは俺の溺愛ターンだから覚悟して~

しましまにゃんこ
恋愛
年若い辺境伯であるアレクシスは、大嫌いな第三王子ダマスから、自分の代わりに婚約破棄したセシルと新たに婚約を結ぶように頼まれる。実はセシルはアレクシスが長年恋焦がれていた令嬢で。アレクシスは突然のことにとまどいつつも、この機会を逃してたまるかとセシルとの婚約を引き受けることに。 とんとん拍子に話はまとまり、二人はロイター辺境で甘く穏やかな日々を過ごす。少しずつ距離は縮まるものの、時折どこか悲し気な表情を見せるセシルの様子が気になるアレクシス。 「セシルは絶対に俺が幸せにしてみせる!」 だがそんなある日、ダマスからセシルに王都に戻るようにと伝令が来て。セシルは一人王都へ旅立ってしまうのだった。 追いかけるアレクシスと頑なな態度を崩さないセシル。二人の恋の行方は? すれ違いからの溺愛ハッピーエンドストーリーです。 小説家になろう、他サイトでも掲載しています。 麗しすぎるイラストは汐の音様からいただきました!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

処理中です...