寝取られ辺境地へと追いやられましたが平気ですっ

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ゆっくりと近づくのを私は目を離さず対峙した。
そして、目の前にやってくると私の両肩を掴み、力強く敷いたマントへと押し倒してくる。

「叫べよ、大声出せば誰かしら気づくはずだ」
「……」
「だんまりか、いいぜ。とことん追い詰めろと言ったのはお前だ。後悔するなよ」
 
アドルフは私に覆い被さり体を触り犯そうとしてきた。
だけど、迷いがあるようで太もも辺りを触る手はどこか震えているようにも感じた。

「どうしたの?……したいんじゃないの?まだ私は追い詰められてないけど」
「……」

太ももを触っている手の上にそっと添わせるとピクリと動いた。

「やっぱりあなたは優しい。でも、それを表現する方法が分からないんでしょ?
だから強がって隠し、近づいた人を遠ざけている」
「分かったような口を聞くな!」
「なら続けて」
「お前、男を……俺を舐めてるだろ!?」

アドルフは体を起こし、馬乗りの状態になると私が着るワンピの胸辺りから引き裂こうとした。
グッと力を入れ横にズラせば破れるのに、それ以上力を込めず、見下ろす顔の表情は困惑していた。

「もういい、アドルフ。あなたは無理矢理するのは出来ない。優しいから」
「……くっ」

顔を横に背け、裂こうとした手を離し、馬乗りの状態をやめ、座り込んだ。

「なんなんだ、お前は……。泣き騒び、そして俺の前から逃げればいい。皆そうだった」

ゆっくり私は体を起こし、乱れた着衣を直すとまた膝を抱えて座った。

「そうやってずっと隠し続けていたのね、私と似てる」
「あぁっ??」
「私もちゃんとしようとした。でもやり方も雰囲気の持って行き方なんて知らなかった。
だからニコラスから来て欲しいと願った。でも、私に魅力が無いからリスティアに奪われた。
あの子は、積極的だから…」
「なんだよ、お前の昔話なんか……」
「アドルフ、私はあなたから逃げない。逃げても帰る場所なんか無いから」
「ふんっ、勝手にしろ」
「えぇ、勝手にする。しばらくあなたの厄介になるけど、宜しく」

話を終えるとアドルフは立ち上がり、馬の方へと移動していく。
私も連れて立ち上がるが、下に敷いたマントに足を滑らせ、湖へと体を落とした。

「おいっ!?」

バシャーンと音を立て落ちた私をアドルフはすぐに湖へと飛び込み、鳩尾辺りに手を潜らせると一気に引き上げ
ほとりへと捕まらせた。

「なにやってんだ、お前は」
「ふふっ」
「なんなんだ?この状況で笑うやつがあるか?」
「ほっとくなんて出来ない」
「当たり前だろうが、目の前であんな事あれば体が動くに決まってるだろうが」
「そうね、でもあのまま馬に乗って去ることもできた。でも、あなたはしなかった。やっぱり心の奥は優しいんだと思う」
「……」

ざばっと音を上げながら私は湖から這い上がると右手を差し出した。

「ありがとう、助けてくれて」
「ふんっ」

お互いずぶ濡れになってしまったのですぐに馬に乗り帰ろうとした。
すると、アドルフが敷いたマントをグルグルと私の体に巻きつけてくる。

「……少しは恥じらえ」
「ふふっ」
「もういい……お前には負けた、完敗だ……」

私はアドルフの本心を知れた気がした。
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