寝取られ辺境地へと追いやられましたが平気ですっ

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「ふぅ」

踏み外すことなく三階へと来た私に、腕を組み、ふぅ~と深く大きなため息を吐くアドルフがそこにいた。

(来いって言ったのはそっちでしょ……)

「お前、そんなにとろいから捨てられるんだ」
「私は捨てられてません」
「どうだか。……それにその体型」

私はついニコラスとリスティアの会話を思い出し、口をキュッと噛んだ。

「なんだ?お前にとってのコンプレックスだったか??」

気にする部分を言い当てたと思い、右頬を上げ『ふふふっ』と笑った。

「……別に」
「そうか?」

少し上機嫌でアドルフは左手に進みだすと、やはり私の事を見てきた。




「入れ」


黄土色をした扉を開くと、中はこじんまりとした部屋だが、その光景は異様だった。
小さな円卓木製テーブルと背もたれの無い二つの椅子、そして使い古され少し黄色味がかった白い毛布が乗るベット。
それに、壁には十字の形をした刃渡りの長い長剣がいくつも置かれ、側には腕や体に身につける銀色の甲冑が転がっていた。

「あの……ここ、アドルフ様の部屋ですか?」

質問よりも前に椅子を一つズラし座り出していた。

「だとしたらどうする?」
「いや、なんというか、殺伐としてるといいますか……」

部屋の入り口で周りを見渡す私に対し、急に笑い出してきた。

「なんですか……?」
「ここは部屋というより監視部屋だ」
「監視部屋?」
「お前、ここがルーベルト家の『本宅』だと思ってるだろ。違う、ここは軍事施設だ。とりあえず入ってこっちを見てみろ」

言われるがまま私は先を進むと、部屋の奥にある大きな窓からは私達が来る時に通った森が見えた。

「ここは周りに何もないから侵入者がきたらすぐに分かる」
「はぁ……」
「お前はニコラスと俺が争ってるのは知ってるな?」
「え、えぇ……」
「一つ教えておいてやる。ニコラスは自身が負けると思い休戦なんかを提案してきやがった。
その条件にお前を俺に送ってきた。いわば人質みたいな物だ」
「えっ」
「女を送れば一時いっとき黙ると思ってるんだろうな。……まぁ、簡単に勝ってもつまらんからな」
「じゃあ、私は……」
「俺の退屈しのぎだ」

手紙には『休戦』の事など一切書かれていなかった。

(ニコラス……あなたって人は……)

「だからお前にあったら休戦は終わりだ。せいぜい俺を怒らすなよ、フェリス=ハーベスト」

隣でフルネームを呼ぶアドルフなんかよりもニコラスに対する怒りが強かった。
窓の外に見える森、そしてその先にあるアーデルハイト家の方を私はジッと見ていた。





「さて、休戦とはいえ、たまにはこの施設に来ている」
「あの煙は?」

私は道中、メリッサと見かけた煙について尋ねた。

「煙?……あぁ、あれか」

森を抜けた辺りに見えたあの煙。
いまだに黒い煙を出し続けているが、来る際よりも幾分勢いは弱くなっているように見えた。

「あれはなんですか?」
「ここら辺に住む先住民たちだ。動物を狩っていると聞くからそれを焼いているんじゃないか?」
「そうですか。……あっ」

屋敷に入る際に見えた黒い雲から雨が降り出し、次第に窓からの景色も見えづらくなってきた。

「お前を楽しむならここより本宅だからな」
「……変な気起こさないでください」
「はっ!?よく言う、そんな体で」

だが横にいるアドルフは私の体の事を横目でジッと見ているようだった。

「や、やめてくださいっ」

すぐに私は一歩下がり両手を胸の前に構えガードした。

「しねぇよ」

その後、キサラさんが私達の元へ来て、メリッサのいる部屋へと案内され、ホッと一安心した。

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