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森を抜けるとそこは一面広大な荒野だった。
見渡す限り大小大きさの違う岩が散乱し、さっきまで有った緑が全く姿を見せなくなっていた。
「こんな場所に出るなんて……」
「あっ、お嬢様、あそこ!」
メリッサが慌てて右手の方を指差すと黒い煙が見え、何かが燃えてるようだった。
「あそこに人がいるんでしょうか?」
「……多分」
だけど馬車はそのまま直進し、煙からは遠ざかっていく。だが、岩と土だけの道が続き、その間には人影らしい物は一向に現れなかった。
(ここはなに??)
誰とも出会わずただ前へと進む事に不安が強まっていく。
車輪の音が時折岩を乗り上げ大きな音を立てるが客車の中の私達はキョロキョロと落ち着かない様子で過ごした。
「……本当にこの先にいるんでしょうか?」
「不安になるわね」
すると、遠くに建物らしき物が見えてきた。
「あれでしょうか」
「他に建物がないから、そうだと思う」
まだ距離があり大きさは分からないが、それでも開けた場所に立つ建物、それはアドルフ=ルーベルトの家だと思われた。
そう思うと一気に緊張感が増し、椅子に座り直すと膝に手を置き、ギュッと握り込んだ。
「お嬢様」
「……大丈夫」
(私は負けない、絶対にニコラスやリスティアの思い通りの結末なんて迎えない)
ーーーーーーー
その後、馬車は進んでいき、周りを大きな岩盤がいくつも聳え立つ場所に着くとその近くにあの建物が姿を見せた。
煉瓦造りだろうか…。
赤茶色と白色が不規則に積み重なって出来ており、高さは窓が三段ある事から3階立てかと推測できる。
雨風に当たったからか、所々ヒビが入っており朽ちている部分もある。
敷地内には何メートルあるか分からない物見櫓が一つ置かれ、あれでニコラス達がやってきたのを知るのだろう…。
門は無く、私達は建物のすぐ近くまで移動すると屋敷から人が出てきた。
この領地に来て初めての人。
ゆっくりと歩みつつやってくる人は黒のタキシードにノータイ姿で真っ白なマントを掛けている。
背も高いみたいだ。
馬車にいる私と目線はほとんど変わらない。
(侍従?……でも男性)
「……お嬢様、もしかして、アドルフ様では??」
「えっ」
「マントを付ける侍従や召使いなど聞いた事ありません」
「じゃあ。……あれが」
男性は馬車の近くまで来ると、私はその顔を視認した。
グレー色の髪を真ん中で分け、肩に触れるくらいありそうだ。
真っ直ぐに整えられた眉、キツめの目は少し釣り上がりその目は赤い。
小鼻に血色の薄い唇。
右頬には切られた跡だろうか、鼻近くから耳まで一直線状に伸び、赤みを帯びている。
男性は私の馬車に辿り着き、レース状のカーテンを隔てて私と対面した。
(……なんだか怖い)
目は真っ直ぐ向けられ、何も言葉を発せず仁王立ちしている。
「……出ろってことじゃないですか?お嬢様」
「そ、そうなのかな」
「ずっとここにいるわけにも……」
「そう、よね……」
私達は恐る恐る客車の扉へと向かうと男性の姿も移動をし始めていた。
ガチャっと扉を開けるとすぐに男性の姿が目の前にあった。
「キャアァァァア」
私達は同時に声を響かせると、男性は鬱陶しそうに声を上げてきた。
「うるせぇ。……どっちがフェリス=ハーベストだ?」
「あの、私ですが……」
メリッサの背に隠れるように声を出した私を覗き込み、『お前か』と告げてくる。
「あの、……もしかしてアドルフ=ルーベルト様、ですか?」
「あぁ」
(やはり……。でも普通は侍従なりが迎えに来ると思うのに、なぜ本人が?)
「そんな所で固まっていたら話が進まんだろうが、降りてこい」
扉を手で押さえ、私達が降りるのを待っていた。
見渡す限り大小大きさの違う岩が散乱し、さっきまで有った緑が全く姿を見せなくなっていた。
「こんな場所に出るなんて……」
「あっ、お嬢様、あそこ!」
メリッサが慌てて右手の方を指差すと黒い煙が見え、何かが燃えてるようだった。
「あそこに人がいるんでしょうか?」
「……多分」
だけど馬車はそのまま直進し、煙からは遠ざかっていく。だが、岩と土だけの道が続き、その間には人影らしい物は一向に現れなかった。
(ここはなに??)
誰とも出会わずただ前へと進む事に不安が強まっていく。
車輪の音が時折岩を乗り上げ大きな音を立てるが客車の中の私達はキョロキョロと落ち着かない様子で過ごした。
「……本当にこの先にいるんでしょうか?」
「不安になるわね」
すると、遠くに建物らしき物が見えてきた。
「あれでしょうか」
「他に建物がないから、そうだと思う」
まだ距離があり大きさは分からないが、それでも開けた場所に立つ建物、それはアドルフ=ルーベルトの家だと思われた。
そう思うと一気に緊張感が増し、椅子に座り直すと膝に手を置き、ギュッと握り込んだ。
「お嬢様」
「……大丈夫」
(私は負けない、絶対にニコラスやリスティアの思い通りの結末なんて迎えない)
ーーーーーーー
その後、馬車は進んでいき、周りを大きな岩盤がいくつも聳え立つ場所に着くとその近くにあの建物が姿を見せた。
煉瓦造りだろうか…。
赤茶色と白色が不規則に積み重なって出来ており、高さは窓が三段ある事から3階立てかと推測できる。
雨風に当たったからか、所々ヒビが入っており朽ちている部分もある。
敷地内には何メートルあるか分からない物見櫓が一つ置かれ、あれでニコラス達がやってきたのを知るのだろう…。
門は無く、私達は建物のすぐ近くまで移動すると屋敷から人が出てきた。
この領地に来て初めての人。
ゆっくりと歩みつつやってくる人は黒のタキシードにノータイ姿で真っ白なマントを掛けている。
背も高いみたいだ。
馬車にいる私と目線はほとんど変わらない。
(侍従?……でも男性)
「……お嬢様、もしかして、アドルフ様では??」
「えっ」
「マントを付ける侍従や召使いなど聞いた事ありません」
「じゃあ。……あれが」
男性は馬車の近くまで来ると、私はその顔を視認した。
グレー色の髪を真ん中で分け、肩に触れるくらいありそうだ。
真っ直ぐに整えられた眉、キツめの目は少し釣り上がりその目は赤い。
小鼻に血色の薄い唇。
右頬には切られた跡だろうか、鼻近くから耳まで一直線状に伸び、赤みを帯びている。
男性は私の馬車に辿り着き、レース状のカーテンを隔てて私と対面した。
(……なんだか怖い)
目は真っ直ぐ向けられ、何も言葉を発せず仁王立ちしている。
「……出ろってことじゃないですか?お嬢様」
「そ、そうなのかな」
「ずっとここにいるわけにも……」
「そう、よね……」
私達は恐る恐る客車の扉へと向かうと男性の姿も移動をし始めていた。
ガチャっと扉を開けるとすぐに男性の姿が目の前にあった。
「キャアァァァア」
私達は同時に声を響かせると、男性は鬱陶しそうに声を上げてきた。
「うるせぇ。……どっちがフェリス=ハーベストだ?」
「あの、私ですが……」
メリッサの背に隠れるように声を出した私を覗き込み、『お前か』と告げてくる。
「あの、……もしかしてアドルフ=ルーベルト様、ですか?」
「あぁ」
(やはり……。でも普通は侍従なりが迎えに来ると思うのに、なぜ本人が?)
「そんな所で固まっていたら話が進まんだろうが、降りてこい」
扉を手で押さえ、私達が降りるのを待っていた。
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