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「んん~っ!?」
「す、すぐに外します!」
メリッサは私の口に付けられた縄を慎重に外し、ようやく私は解放され声を出すことが出来た。
「はぁっ、はぁっ。……ありがとう、メリッサ」
「い、いえ。でもなんでこんな場所に?」
「それは後で。次はこっちを外してくれない?」
私は縛られた腕と足を動かしていく。
「はぁ……ありがとう、助かったわ」
ようやく全身を解放された私はクローゼットから一歩出て部屋の様子を見渡した。
扉を入って、左に今いるクローゼット、そして右手には休む為のダブルベットがあり、その脇にはクリーム色をした長方形の二段の引き出しがある小さなボックスで高さは大体膝くらい。
そしてベットから程近い場所に設置された円卓のガラスのテーブル、それを囲むように四つ置かれた背もたれ付きで座面が円形の木の椅子。
そのテーブルの上には昨日のお茶会の名残りだろうか。
銀色で注ぎ口までがS字の形になっているポットが一つ、両方に片割れハート型の取っ手が付いた白いティーカップが三つ、持ってきた際に使用したのだろう銀色のお盆が残ってる。
「あの、フェリス様?」
助けてくれたメリッサは私と背格好は殆ど同じくらいでこの家では小さい方だ。
それに髪色だって同じ栗色をしており、メリッサはショートボブで、私は胸辺りまで伸ばした長髪。
ちらっと見てくる目は青く、とっても澄んでおり、いつも顔合わせているが何処か安心感がある。
全身白色のワンピを着用し、汚れても良いように重ねて着ている濃紺のエプロンはとても似合っており、この家で唯一なんでも話せるし、頼りになる侍従だ。
「ねぇ、メリッサ、聞きたいのだけど」
私は少しだけキッとした感じでエメラルドの瞳をメリッサに差し向けた。
「な、なんでしょう……?」
「昨日、ニコラス様が来たわよね。その時、あのポットを持ってきたのはあなた、よね?」
「え、えぇ」
「あのお盆は、誰が?」
「えぇっと、あれは……レスティア様です」
(……まさか、そこで薬を?)
でも、私はすぐにその考えを改めた。
だってあのお盆には三つのティーカップが載っていたんだから片手で持とうとすればバランスを崩し、地面へと落ちる。
(どこで……?)
「あの、フェリス様、それよりもドレスが……」
「ドレス?」
私はメリッサに言われ、目線を下に向けるとお呼ばれの際に着る赤いドレスを見た。
前面のスカート部分から左右に分かれ、真ん中部分だけが白いプリーツ状になったドレス。
これはニコラス様のお気に入りで会う際はこれでいて欲しいと言われていたから着用していた。
でも、その白い部分に下へと波打ちながら薄く黄色のシミが形成していた。
「なに、これ……」
「もしかして、昨日の紅茶の……」
すぐメリッサは濃紺のエプロンに付けられたポケットから真っ白のハンカチを出し、トントンと叩くが、時間が経っているためか全く取れなかった。
(これを汚したのは、レスティアだ。絶対。昔からこのドレスを着るといちゃもんをつけてくるし、なんなら欲しがったりもしていたし)
「フェリス様、申し訳ありません。これはすぐに洗わないと取れません」
しゃがんで叩いてくれていたメリッサは土下座をする様に頭を床へと近づけていたが、すぐに私はやめさせた。
「いいのよ、あなたが悪いわけじゃない。……レスティアよ」
「えっ?」
「こんな場所に閉じ込めたのも、あの子。そうに違いない。お願い、メリッサ。昨日のことを詳しく教えて」
私はしゃがみ込んだメリッサと同じ高さになる様に座り込んだ。
「す、すぐに外します!」
メリッサは私の口に付けられた縄を慎重に外し、ようやく私は解放され声を出すことが出来た。
「はぁっ、はぁっ。……ありがとう、メリッサ」
「い、いえ。でもなんでこんな場所に?」
「それは後で。次はこっちを外してくれない?」
私は縛られた腕と足を動かしていく。
「はぁ……ありがとう、助かったわ」
ようやく全身を解放された私はクローゼットから一歩出て部屋の様子を見渡した。
扉を入って、左に今いるクローゼット、そして右手には休む為のダブルベットがあり、その脇にはクリーム色をした長方形の二段の引き出しがある小さなボックスで高さは大体膝くらい。
そしてベットから程近い場所に設置された円卓のガラスのテーブル、それを囲むように四つ置かれた背もたれ付きで座面が円形の木の椅子。
そのテーブルの上には昨日のお茶会の名残りだろうか。
銀色で注ぎ口までがS字の形になっているポットが一つ、両方に片割れハート型の取っ手が付いた白いティーカップが三つ、持ってきた際に使用したのだろう銀色のお盆が残ってる。
「あの、フェリス様?」
助けてくれたメリッサは私と背格好は殆ど同じくらいでこの家では小さい方だ。
それに髪色だって同じ栗色をしており、メリッサはショートボブで、私は胸辺りまで伸ばした長髪。
ちらっと見てくる目は青く、とっても澄んでおり、いつも顔合わせているが何処か安心感がある。
全身白色のワンピを着用し、汚れても良いように重ねて着ている濃紺のエプロンはとても似合っており、この家で唯一なんでも話せるし、頼りになる侍従だ。
「ねぇ、メリッサ、聞きたいのだけど」
私は少しだけキッとした感じでエメラルドの瞳をメリッサに差し向けた。
「な、なんでしょう……?」
「昨日、ニコラス様が来たわよね。その時、あのポットを持ってきたのはあなた、よね?」
「え、えぇ」
「あのお盆は、誰が?」
「えぇっと、あれは……レスティア様です」
(……まさか、そこで薬を?)
でも、私はすぐにその考えを改めた。
だってあのお盆には三つのティーカップが載っていたんだから片手で持とうとすればバランスを崩し、地面へと落ちる。
(どこで……?)
「あの、フェリス様、それよりもドレスが……」
「ドレス?」
私はメリッサに言われ、目線を下に向けるとお呼ばれの際に着る赤いドレスを見た。
前面のスカート部分から左右に分かれ、真ん中部分だけが白いプリーツ状になったドレス。
これはニコラス様のお気に入りで会う際はこれでいて欲しいと言われていたから着用していた。
でも、その白い部分に下へと波打ちながら薄く黄色のシミが形成していた。
「なに、これ……」
「もしかして、昨日の紅茶の……」
すぐメリッサは濃紺のエプロンに付けられたポケットから真っ白のハンカチを出し、トントンと叩くが、時間が経っているためか全く取れなかった。
(これを汚したのは、レスティアだ。絶対。昔からこのドレスを着るといちゃもんをつけてくるし、なんなら欲しがったりもしていたし)
「フェリス様、申し訳ありません。これはすぐに洗わないと取れません」
しゃがんで叩いてくれていたメリッサは土下座をする様に頭を床へと近づけていたが、すぐに私はやめさせた。
「いいのよ、あなたが悪いわけじゃない。……レスティアよ」
「えっ?」
「こんな場所に閉じ込めたのも、あの子。そうに違いない。お願い、メリッサ。昨日のことを詳しく教えて」
私はしゃがみ込んだメリッサと同じ高さになる様に座り込んだ。
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