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再び
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手を繋いだジャックさんは嬉しそうで陽気な態度で歩いている。
が、私は複雑だった。
隣にいるのは殺人者。いつ、その陽気さが変化し牙を向くか分からないからだ。
そんな気持ちを抱えつつ歩き続け…。
「こっちです」
連れてこられた場所は川だった。
「あそこであなたは引っ掛かっていたんですよ」
指を差す場所は大きな岩。
どうやらあの場所に私はおり、そこを拾ってもらったらしい。
「……ありがとうございます」
私のお礼の言葉にジャックさんは不意に手を離し、川へと近づいていった。
「あの、何をしに?」
「どうですか、川に入るのも良いものですよ」
「いや、行く場所があるって……」
「あぁ……」
問いかけに川の周囲を見渡すと大丈夫だと告げてくる。
行く場所が何処かさえわからないこっちの身も考えて欲しくなった。
だから私は川に近づかずそこで待った。
「ほら!良いものですよ、リースさん」
「私は、……結構です」
断る私を見てザブザブと音を立てながら川から上がり近づいてきた。
(しまった…)
怒らせてしまった、と感じ顔を見ると真顔でどんな感情を今持っているのか分からなかった。
「リースさん」
「はい……」
「いま、ここには私とあなただけです。……意味、分かりますか?」
なんだ、この質問は……。
殺される、もしくは犯される…。
どっちなんだと頭を巡らせ、それが体にも波及し、手足は震えていく。
黙りこみジャックさんの足元を見て考える私の耳元に近づけて言う。
「どっちだと思います?」
「はぁ……はぁ……」
荒く呼吸をし始めた私は過呼吸気味になり、胸が苦しくなってきて視界が狭まってきた。
「あなたにとって嫌な方ですよ」
どっちも嫌だ、絶対に。
頭をフラフラと前後に動かした後、私は膝から崩れ落ち意識を失った。
ーーーーーー
気づくと私はジャックさんの背中にいた。
「えっ」
「起きましたか」
「な、なんで!?」
「二つのうちの一つですよ」
「……意味が分かりません。ころ……」
言いかけた時、ジャックさんは笑い『そんな事はしない、約束もした』と言う。
「じゃあ何と何を?」
「無理矢理引っ張るか背負うか、どっちかです。あなたの態度を見るに距離を取りたいと思ってるはずだから背負われるのは嫌だと」
確かにこうやって背負われると逃げ場は無い。
私にとっては『嫌な方』だ。
「ただ行く場所は少し険しい部分もあるからこの方が安全でもあるので無理矢理です」
「あの……もう諦めましたから、教えてください。何処に?」
「もう一つの家です」
「もう、一つ?」
「えぇ、街に程近い場所に作った隠れ家です。今日はそこまで行き、明日街を行きます」
「街……」
背負われたまま歩き続け、ジャックさんの言う険しい部分という大きな崖をゆっくり登っていく。
下を見るとクラクラしてしまうくらいの高さだ。
それを背負いながら登るこの人は……。
登りきった所から左手に指差す方にその隠れ家があると教えてくる。
(……ここ、見覚えが)
そう、そこは私は落ちた川の近くでその向こうはあの二人組に追われた場所だった。
「さぁ、後少しです」
また私を背負おうとしゃがみ込むのを私は断った。
「もう、ここからは歩きます」
「なぜ?」
「だって、こんな崖を登った後なのに、またなんて」
「いいえ、気にしないで。……さぁ」
背中を見せ乗るように言うジャックさんを拒み続けた。
だって、もしかしたらまだあの二人組がおり、いざって時に逃げれなくなるかもしれないと考えたからだ。
「大丈夫です」
私の言葉と態度を感じ取り、諦めスッと立つとゆっくり歩き出した。
が、私は複雑だった。
隣にいるのは殺人者。いつ、その陽気さが変化し牙を向くか分からないからだ。
そんな気持ちを抱えつつ歩き続け…。
「こっちです」
連れてこられた場所は川だった。
「あそこであなたは引っ掛かっていたんですよ」
指を差す場所は大きな岩。
どうやらあの場所に私はおり、そこを拾ってもらったらしい。
「……ありがとうございます」
私のお礼の言葉にジャックさんは不意に手を離し、川へと近づいていった。
「あの、何をしに?」
「どうですか、川に入るのも良いものですよ」
「いや、行く場所があるって……」
「あぁ……」
問いかけに川の周囲を見渡すと大丈夫だと告げてくる。
行く場所が何処かさえわからないこっちの身も考えて欲しくなった。
だから私は川に近づかずそこで待った。
「ほら!良いものですよ、リースさん」
「私は、……結構です」
断る私を見てザブザブと音を立てながら川から上がり近づいてきた。
(しまった…)
怒らせてしまった、と感じ顔を見ると真顔でどんな感情を今持っているのか分からなかった。
「リースさん」
「はい……」
「いま、ここには私とあなただけです。……意味、分かりますか?」
なんだ、この質問は……。
殺される、もしくは犯される…。
どっちなんだと頭を巡らせ、それが体にも波及し、手足は震えていく。
黙りこみジャックさんの足元を見て考える私の耳元に近づけて言う。
「どっちだと思います?」
「はぁ……はぁ……」
荒く呼吸をし始めた私は過呼吸気味になり、胸が苦しくなってきて視界が狭まってきた。
「あなたにとって嫌な方ですよ」
どっちも嫌だ、絶対に。
頭をフラフラと前後に動かした後、私は膝から崩れ落ち意識を失った。
ーーーーーー
気づくと私はジャックさんの背中にいた。
「えっ」
「起きましたか」
「な、なんで!?」
「二つのうちの一つですよ」
「……意味が分かりません。ころ……」
言いかけた時、ジャックさんは笑い『そんな事はしない、約束もした』と言う。
「じゃあ何と何を?」
「無理矢理引っ張るか背負うか、どっちかです。あなたの態度を見るに距離を取りたいと思ってるはずだから背負われるのは嫌だと」
確かにこうやって背負われると逃げ場は無い。
私にとっては『嫌な方』だ。
「ただ行く場所は少し険しい部分もあるからこの方が安全でもあるので無理矢理です」
「あの……もう諦めましたから、教えてください。何処に?」
「もう一つの家です」
「もう、一つ?」
「えぇ、街に程近い場所に作った隠れ家です。今日はそこまで行き、明日街を行きます」
「街……」
背負われたまま歩き続け、ジャックさんの言う険しい部分という大きな崖をゆっくり登っていく。
下を見るとクラクラしてしまうくらいの高さだ。
それを背負いながら登るこの人は……。
登りきった所から左手に指差す方にその隠れ家があると教えてくる。
(……ここ、見覚えが)
そう、そこは私は落ちた川の近くでその向こうはあの二人組に追われた場所だった。
「さぁ、後少しです」
また私を背負おうとしゃがみ込むのを私は断った。
「もう、ここからは歩きます」
「なぜ?」
「だって、こんな崖を登った後なのに、またなんて」
「いいえ、気にしないで。……さぁ」
背中を見せ乗るように言うジャックさんを拒み続けた。
だって、もしかしたらまだあの二人組がおり、いざって時に逃げれなくなるかもしれないと考えたからだ。
「大丈夫です」
私の言葉と態度を感じ取り、諦めスッと立つとゆっくり歩き出した。
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