36 / 68
成立
しおりを挟む
驚いている私をよそにニコルは指輪を外す事に成功し、自身の手の上に置いた。
「これでお前は『妻』ではなくなったな」
指輪を私に見せながらニコルは、ふっと笑う。
「……あっ」
子供という単語に思考停止していた私はようやく我に戻り、いつの間にか無くなっていた指輪に気付いた。
「ま、待って」
「……なにを待つんだ?お前自身納得した事だろう?」
「やっぱり、私、あなたのこと」
「必死すぎるぞ、もう諦めろ。俺はイリーナを妻にする。もうお前に用はない」
突き放すようにニコルは私を押し、部屋から出ていくように促していく。
でも私はそれに従わず拒否した。
「……逆らったらどうなるのか分かってるはずだよな?
今までは妻だから何も無かったが、もう違う。いいのか?」
ニコルの冷酷な目は諫める事を躊躇う感じはなく、近寄る足音は威圧さえ感じる。
「ね、ねぇ、どうして、イリーナと」
「あ?イリーナがなんだ」
「選んだ理由……」
「理由、だ?そんなの簡単だ。お前より『良い』からだ」
「良いって、何が?」
「……はぁ」
ニコルは足を止め、大きくため息を吐くと、面倒臭そうに頭を掻き始めた。
「そういう所だ、リース。いちいち口に出して聞くな。少しは察しろ。面倒なんだよ!?
アイツは気付き察するのが上手いんだよ、だから楽で良い。でもお前はぐちぐち聞きやがる。こうやって話すのももう沢山だ」
怒りに満ちた声。
今にも私に手を下しそうな勢いであるが、私はその大声に体が動かず扉を背に預け固まるしかできなかった。
「……これにサインしろ」
そういうとニコルは一枚の紙を私に見せてきた。
だが、そこには何も書かれておらず真っ白だった。
「何も書いてない……」
「言う通りに書け」
テーブルにはペンが置いてあり、その近くに紙を置くとニコルはベットへと座り出した。
そして私がペンを持つのを待っていた。
近寄りペンを持つのを確認するとニコルが口を開いた。
「『私、リース=フィリスは夫・ニコルと離婚することを承諾します』と書け」
言われた通りに書き、ペンを置くとニコルが近づき確認をしてくる。
「……よし」
紙を取ると、納得したように頷き、それに目を落とす。
「これで本当に終わりだ、リース」
「……うん」
「なら」
ニコルは自ら部屋の扉を開き、私が出ていくようにさせた。
「あ、ありがとう」
私はニコルの部屋…いや、フィリス家を後にした。
「これでお前は『妻』ではなくなったな」
指輪を私に見せながらニコルは、ふっと笑う。
「……あっ」
子供という単語に思考停止していた私はようやく我に戻り、いつの間にか無くなっていた指輪に気付いた。
「ま、待って」
「……なにを待つんだ?お前自身納得した事だろう?」
「やっぱり、私、あなたのこと」
「必死すぎるぞ、もう諦めろ。俺はイリーナを妻にする。もうお前に用はない」
突き放すようにニコルは私を押し、部屋から出ていくように促していく。
でも私はそれに従わず拒否した。
「……逆らったらどうなるのか分かってるはずだよな?
今までは妻だから何も無かったが、もう違う。いいのか?」
ニコルの冷酷な目は諫める事を躊躇う感じはなく、近寄る足音は威圧さえ感じる。
「ね、ねぇ、どうして、イリーナと」
「あ?イリーナがなんだ」
「選んだ理由……」
「理由、だ?そんなの簡単だ。お前より『良い』からだ」
「良いって、何が?」
「……はぁ」
ニコルは足を止め、大きくため息を吐くと、面倒臭そうに頭を掻き始めた。
「そういう所だ、リース。いちいち口に出して聞くな。少しは察しろ。面倒なんだよ!?
アイツは気付き察するのが上手いんだよ、だから楽で良い。でもお前はぐちぐち聞きやがる。こうやって話すのももう沢山だ」
怒りに満ちた声。
今にも私に手を下しそうな勢いであるが、私はその大声に体が動かず扉を背に預け固まるしかできなかった。
「……これにサインしろ」
そういうとニコルは一枚の紙を私に見せてきた。
だが、そこには何も書かれておらず真っ白だった。
「何も書いてない……」
「言う通りに書け」
テーブルにはペンが置いてあり、その近くに紙を置くとニコルはベットへと座り出した。
そして私がペンを持つのを待っていた。
近寄りペンを持つのを確認するとニコルが口を開いた。
「『私、リース=フィリスは夫・ニコルと離婚することを承諾します』と書け」
言われた通りに書き、ペンを置くとニコルが近づき確認をしてくる。
「……よし」
紙を取ると、納得したように頷き、それに目を落とす。
「これで本当に終わりだ、リース」
「……うん」
「なら」
ニコルは自ら部屋の扉を開き、私が出ていくようにさせた。
「あ、ありがとう」
私はニコルの部屋…いや、フィリス家を後にした。
1
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる