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挨拶
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私の部屋へと向かうニコルを私は追い、そして扉の前で足を止め、追ってくる私を見てくる。
追いつき、私も足を止めると首をクイっと右に向け合図を出す。
開けろ、と。
小さく頷き扉を開けると先に入り出迎え形を取るが、どうやら不満なのか舌打ちをしてくる。
「普通、物を持つ物が先に入らせるだろうが、そんな事も分からんのか?」
言い方をもう少し優しくしてくれたら頭に来ないのに、この言い草はやはりカチンと来てしまう。
「……ごめ、」
「まぁ、いい。置くからそのポットを退かせ」
言い終わるの待たず入って来ては命令し、すぐに移動させる事を要求してきた。
早くしろと左足をトントンとリズムよく打ち待っている。
「ま、まって」
私はポットを取り、ベット近くのテーブルに置くと、その間にニコルはお盆を下ろし『喰えよ』と言い出て行こうとした。
「あ、あの」
「なんだ?」
「……ありがと」
私のお礼を聞くなり、出て行こうとした足を振り返り私の方へと向かってきた。
「なに?」
「お前、両親をここに呼べるか?」
「両親、って親の事?」
「それ以外いるのか?」
「い、いないけど……」
「なら、呼べるなら呼べ。食べた頃にまた来る」
それだけを言い残すとまた振り返り、そのまま出ていこうとする。
『待ってよ、どういう事!?』と呼び止めるがニコルはその言葉に反応することなく扉をバンっと音を鳴らして出ていった。
「な、なんなの……」
両親?呼ぶ?
考えても栄養が回ってない頭では考えがつかず、とりあえず食べてから考える事にした。
だが、ニコルが持ってきたお盆の上は散々な物だった。
コーンスープが入った白いカップからは四方八方に汁が飛び散り、ロールパンにも鮭の切り身にもその跡があった。
自分勝手な性格を表しているかのようでもあり、その汚れた状態から『気にするな』とも聞こえてくる感じがした。
でも今の私には久しぶりのご飯なので口にした。
マナーの欠片もなく、駆け込むように食べ、あっという間に終えた。
はぁ……と一息つくと、今度は眠さが襲ってくる。
昨日の事で眠れなかった事、そして今のご飯。
条件が揃ってしまい、椅子に座ったまま私は頭をこっくりこっくりとし始め、とうとうテーブルに額をつけ目を閉じた。
***
「おい!?」
ニコルの怒号で私はハッと目を覚ました。
「食べた頃に来るといっただろうが、まさか寝るとは。……ははぁん、まさかお前、昨日の」
寝ぼけつつあった頭はその言葉を聞くなり、立ち上がり『違うっ!?』と否定したが、少し顔は赤かった。
だが、それは寝て起きたからであって、昨日の事ではないのに、ニコルにとってはそう捉えてしまっていた。
「そうか、お前も意外と『うぶ』だな。くくくっ」
「違うって言ってるでしょ!」
「ふっ、まぁお前の強がりとして受け取っておく。それより、迎えに行ってこい。外に馬車を用意させた」
「迎えってなに?なんで両親を呼ばないと?」
「……挨拶をするためだ」
「あい、さつ?」
「結婚するのに相手の親にもいるだろうが、それなりに。……ここで言い合うより行け」
「嫌だよ。なんでそんな急に。焦りすぎというかまだ会ったばかりでしょ」
「いいから行け!?」
嫌がる私の右手を掴むと無理矢理飛び出し、馬車が待
つ扉へと向かっていった。
追いつき、私も足を止めると首をクイっと右に向け合図を出す。
開けろ、と。
小さく頷き扉を開けると先に入り出迎え形を取るが、どうやら不満なのか舌打ちをしてくる。
「普通、物を持つ物が先に入らせるだろうが、そんな事も分からんのか?」
言い方をもう少し優しくしてくれたら頭に来ないのに、この言い草はやはりカチンと来てしまう。
「……ごめ、」
「まぁ、いい。置くからそのポットを退かせ」
言い終わるの待たず入って来ては命令し、すぐに移動させる事を要求してきた。
早くしろと左足をトントンとリズムよく打ち待っている。
「ま、まって」
私はポットを取り、ベット近くのテーブルに置くと、その間にニコルはお盆を下ろし『喰えよ』と言い出て行こうとした。
「あ、あの」
「なんだ?」
「……ありがと」
私のお礼を聞くなり、出て行こうとした足を振り返り私の方へと向かってきた。
「なに?」
「お前、両親をここに呼べるか?」
「両親、って親の事?」
「それ以外いるのか?」
「い、いないけど……」
「なら、呼べるなら呼べ。食べた頃にまた来る」
それだけを言い残すとまた振り返り、そのまま出ていこうとする。
『待ってよ、どういう事!?』と呼び止めるがニコルはその言葉に反応することなく扉をバンっと音を鳴らして出ていった。
「な、なんなの……」
両親?呼ぶ?
考えても栄養が回ってない頭では考えがつかず、とりあえず食べてから考える事にした。
だが、ニコルが持ってきたお盆の上は散々な物だった。
コーンスープが入った白いカップからは四方八方に汁が飛び散り、ロールパンにも鮭の切り身にもその跡があった。
自分勝手な性格を表しているかのようでもあり、その汚れた状態から『気にするな』とも聞こえてくる感じがした。
でも今の私には久しぶりのご飯なので口にした。
マナーの欠片もなく、駆け込むように食べ、あっという間に終えた。
はぁ……と一息つくと、今度は眠さが襲ってくる。
昨日の事で眠れなかった事、そして今のご飯。
条件が揃ってしまい、椅子に座ったまま私は頭をこっくりこっくりとし始め、とうとうテーブルに額をつけ目を閉じた。
***
「おい!?」
ニコルの怒号で私はハッと目を覚ました。
「食べた頃に来るといっただろうが、まさか寝るとは。……ははぁん、まさかお前、昨日の」
寝ぼけつつあった頭はその言葉を聞くなり、立ち上がり『違うっ!?』と否定したが、少し顔は赤かった。
だが、それは寝て起きたからであって、昨日の事ではないのに、ニコルにとってはそう捉えてしまっていた。
「そうか、お前も意外と『うぶ』だな。くくくっ」
「違うって言ってるでしょ!」
「ふっ、まぁお前の強がりとして受け取っておく。それより、迎えに行ってこい。外に馬車を用意させた」
「迎えってなに?なんで両親を呼ばないと?」
「……挨拶をするためだ」
「あい、さつ?」
「結婚するのに相手の親にもいるだろうが、それなりに。……ここで言い合うより行け」
「嫌だよ。なんでそんな急に。焦りすぎというかまだ会ったばかりでしょ」
「いいから行け!?」
嫌がる私の右手を掴むと無理矢理飛び出し、馬車が待
つ扉へと向かっていった。
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