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違和感

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雨は止む事なく降りつづけ、次第に降り方を強くしていく。
窓にあたる雨粒が大きく、当たるのを見ている私は憂鬱な気持ちになっていく。

(二人共怒ってるんだろうな…)

そんな風に思っていると扉をノックされ、私は返事をする。

入ってきたのはクロウさんだけだった。
マリーさんも居たのに何故今は一人なんだろうと思った。
でも、二人よりは一人の方が少しだけ安心している私がいるのもまた事実である。

「く、クロウさん。今日は…」

すぐに謝ろうと声を出すが、それを遮るかのように私に話しかけてきた。

「腕、どうだ?」

今日の事を怒るのではなく、私の容態を心配してくれてた。
そう言われ、私は左腕を触り出す。

「やはりまだ痛いに決まってるよな。そんな傷、すぐに治る訳ないからな」

ゆっくり近づいてきて、窓近くに立つ私の側にあるベットに腰掛けた。
手招きをされ私をベットに座るように促してくる。

今までの私だったらそんなベットでお互いに座るなんて嫌だったが、素直にそれに応じた。

「少しだけ腕、見せてくれないか?」

包帯でぐるぐる巻きにされている腕を見せて欲しいと頼むクロウさん。
真っ赤になったドレスの下に隠れている私の刺された傷が見たいという。

「…見ると怒りが込み上げると思うから、嫌です」

「…そうか、お前は俺の気持ちとかよく分かるな」

「分かりやすいです。素直というか真っ直ぐと言うか…
誰に対しても真っ直ぐにぶつかる事が出来るのは羨ましいです。私はそんな真似できません」

「いや、お前はそんな風にしなくていい。お前はお前らしくいればいいのではないか?」

なんかいつもみたいに怒る雰囲気ではないクロウさんに少し違和感を覚えた。
優しい。というより優しすぎるくらいではないかと。

「あの、今日はすみません…
役を真っ当出来ずに終わってしまって。なんてお詫びを言ったら…」

「…気にするな、頼んだ俺も悪い」

「…変です」

「何がだ」

「何故もっと怒らないんですか?いつもなら怒鳴りちらすくらい怒りますよ。
…思ってる事、ありますよね?
言ってもらえませんか?」

不意にクロウさんは立ち上がり、座る私の前に膝まついた。
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