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「あ、あやかさん!」

ピクリと動かない私をすぐにでも助けたいセレスさんだったがリリィさんがそれを止めた。
体にひっつき必死に私の元へは行かせないといった感じに…。

「どいて、リリィ!早く助けないとあやかさんが死んでしまう!?」

「なんで…なんで私よりそっちを…私だけ見てよ…」

「うるさい!?」

リリィさんを押し除け、私の元へとかけて来た。
グッタリとした私を抱き抱え何度も呼びかけてくる。

そんな行動するセレスさんにリリィさんは納得行かず
後ろから近づいてナイフを首に押し付けた。

「セレス…私の元に戻るって言ったよね…?
なんで?なんでなの?嘘ついたの?ねぇ…?」

「…」

「なぜ黙るの?私の事好きなんでしょ?
もうそんな人いい…」

バシッ

首に押し付けていたナイフをはたき落とし、怒鳴り出した。

「もうウンザリだ!?君は…最低だ。
もう見たくない、どこかいけよ?!」

私をベットに横たわらせると落としたナイフを拾い、邪魔するなら…刺すと言った。

見た事ない顔だったんだろう、リリィさんは慄き、セレスさんから距離を取り壁に張り付いた。

医師を呼びに行くと言うセレスさんだったが、私とリリィさんを二人きりにさせるのは良くないと思い、
ナイフを突きつけ、付いてくるように言った。

コクコク…と素直に応じ、二人は部屋から出ていった。


私は意識を取り戻したが、ベットにいる事に驚いた。

(セレスさんだろうな…)

左腕の痛みはまだあるが、血は大分止まったみたいだった。
ただ、動かす事は多少は出来ても力を入れる事はほとんど出来なかった。

バタバタとこちらに向かって走る音がしてきた。
そして勢いよく扉を開けてきた。

「あやか!」

く、クロウさんだった…。
しかも息を切らしながら入ってきた。
当然か…。トイレに行くと言いながらかなりの時間戻らなかったから。
でも今、ここにいて良いのだろうかと思った。

「お前、なんでこんなとこで休んでいる!
早くこ……」

クロウさんは私のドレスが真っ赤になってるのに気付き、黙りだす。
そしてゆっくり近づき、傷ついた左腕を触ってきた。

「い、痛い…触らないで…」

「なんだ…この傷は…誰にやられた?」

「…」

「なぜ黙るんだ!?言え!早く!」

「…自分でうっかり切っただけです」

しょうもない嘘をつく私にクロウさんは怒るのでは無く、傷口を見て、ナイフだな…と呟いた。
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