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練習?

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「クロウ様、まだ準備…」

カリファさんの引き止める言葉も虚しく響き、扉は閉まった。

私は手を引かれグイグイと歩かされる。

「い、痛いです。行く場所さえ教えてもらえたら自分で歩きますから…」

「…」

「なんで黙るんです?何処に行く気ですか?!変な場所連れ込む気?」

怖くなった私は引かれた手を力強く振り払った。
それを見たクロウさんは何も言わずに私とは関係ない方を向き、答えた。

「綺麗だ…」

私がした質問ではない答えが返ってきた。
言われて嬉しいなんて無かった。むしろムカムカした。

「私が欲しい答えはそんなんじゃありません。
どこ?場所!?」 

「…俺の部屋だ。ダンスを教えてやる。
時間が無いから一つだけだが」

「そうですか、なら初めからそう言って!
なにが『綺麗だ…』ですか」

私の口答えにムッとしたのか、いつもの様に先をスタスタと歩き出した。

(また、戻った。いつもの感じに…)

ダンスなんてもう知らない!って感じになったが、曲がり角でこちらを振り向き、ジッと見て、待ってる様子が目についた。

はぁ…

行くしか無かった…。


ーーーー



部屋の前で私に告げた。

「いいか?後2時間くらいしたら招いた客人達が屋敷に来る。
それまでに覚えろ」

「2時間って…」

ド素人にたった2時間でダンスを1つ覚えろと無理難題を言い、部屋の中へ私を入れた。

「さぁ、やるぞ」

ズイッと私に距離を詰めてきて、手を握ろうとしてきた。

「な、何するんですか?!いきなり」

「…お前、ダンスを手も握らず踊るのか?そんな事も知らんのか?」

知ってる…手を握る事くらい。
しかし、相手が好きでもない相手だから体が拒否してしまう。
だから私は手を差し出す事が出来ず、手をグーにしていた。

「ほら!やらないと覚えれんだろ!?」

グーになった私の右手をクロウさんは左手で掴み、体に引き寄せた。
そして、右手は腰辺りに…。

急に体が密着した事でドキドキしてしまった。
それに腰に回された手で更にグッと寄せられた…。

「ちょ…ま、待って…」

ヤバイ…心臓の鼓動が人生で一番早いかも知れない。

気付かれたら…と思い、顔はクロウさんの首元を巻いたスカーフばかり見ていた。

スン…

(え、まさか…)

顔を上げたくはないが私は上げた…。
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