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意外な弱点

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フォークを入れられすぐに口を閉じるとクロウさんはフォークを素早く引き抜く。
そして私の口の中にはポテトだけが残った。
よく料理に備え付けられている少し大きめなガーリック風に味付けされたポテトが。

美味しい…じゃなく、なんて強引に食べさせるんだろうかと考える方が上回っていた。

口に入ったポテトをモグモグとしながら私は怒った。

「そんな、食べさせ、方ありますか?!」

「…食べるか喋るかどちらに絞れ。マナーの欠片もない」

確かに…とここは私でも間違ってると思い反論よりもまずは口の中のポテトを食べる事に集中した。
でも早く反論したいから普段よりも咀嚼するスピードは早めである。

ゴクン

(よし!)

私はすぐに反論しようと口を開くが…

「まだ食べるか?」

クロウさんは私が飲み込むのを見越し、次に食べさそうとしている物にフォークを刺していた。

「…私は鳥の雛ではありません」

「ふっ、餌付けみたいで面白いが?」

「馬鹿にしないでください!自分で食べますからそれ、渡してください!」

私はクロウさんが持つ皿を渡すよう手を出すが、クロウさんは皿を地面に対し90°傾けた…。

「なにやっ…」

しかし、皿からはなにも落ちてこず、フォークに刺さった物だけが宙を浮いていた。
しかも…またポテトだ。

「もうこれ以外には無いが?」

さも当然と言った顔で答えるが、私はふと思った。
あれだけ一人で黙々と食べていたのに、ポテトだけは食べずに私に差し出す。

まさか…

「ポテト、嫌いなんですね」
 
どうやら図星らしい。
持つフォークが一瞬、ピクリと動いたのを私は見逃さなかった。
何が嫌なんだろう、ポテトの。

弱みを見せたくないのか私にフォークを渡し、振り返ると椅子へと戻って行った。

ポテトが刺さったフォークを見ながら少しだけニヤッと私は笑う。

「どうした、早く食べろ!もう行くんだからな!」
 
私に突っ込まれるのは面倒だ、といった感じで私に命令してくる。
しかし、私は食べずにフォークを持ちながらクロウさんの前に近づいた。

「意外…お子さまなんですね」

「うるせぇ…」

「なにがダメなんです?コレの」

「…味だ。…さっさと食え!行くぞ!?」

これ以上詮索されたくない!といった感じでクロウさんは立ち上がり私を置いて部屋を出た。
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