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借りたものは返すべきだが…

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ローツェに向かう最中はお互い一言も喋らなかった。
ただ馬の蹄の音だけが響く。

シーンとしたまま歩き続けるとローツェの街並みが見えてきた。
やっと帰ってこれた…とホッとすると、セレスさんが口を開いた。

「付いてきてくれてありがとう」

一言だけお礼を言うとまた黙り込んでいた。


門兵は帰って来た私達をすんなりと通し、街中にいれた。
ガヤガヤとする街を横目で見ながら屋敷へと進めていく。

『いいのか?頭は?』

クロウリーが隠すことを薦めてくるが、私は頭を摩りながら答える。

「…私は私、でしょ?」

私の返答にピタッと足を止め、少し首を曲げて私を見て来た。

『少し変わったな、あんた』

自分が伝えた事がちゃんと伝わっていると感じ、嬉しく感じたみたいで、再び歩くが、その足取りは軽そうだった。

屋敷の門が見えると男性が腕を組みながら周りを見ている。
キョロキョロしては下を向く、そしてまた同じ繰り返しを何度も…。
その傍らでは背中を丸め萎縮しっぱなしの人もいる。

そして、私達の姿を見つけると腕を組んでいる人はずっとこっちを見続けてくる。

なんとなく出迎える人の想像はついた。

「おい、今までどこに行っていた?それに、俺の馬を
乗っていくとはな…誰が許可した?あ?」

「クロウさん…」

すぐにクロウリーに近づくのはやはりミハエルさんだ。

「だ、だ、大丈夫ですよね??怪我は無いですよね?」

「えぇ、ただ…お腹は空いてると思います。私も何も食べてないので空きました…」

「お前の腹具合なんてどうでもいい。まずは俺の質問に答えろ。だ、れ、が、許可した?」

「僕だよ、兄さん。ごめん。あやかさんは悪くないからそこまでにして」

「そうか、とりあえず降りろ、あやか」

降りるとミハエルさんはクロウリーを引き、馬房の方へと戻っていった。

「セレス、お前に今は用はない。さっさと行け」

「いや…2人きりにさせたくない。兄さんはあやかさんに厳しいよ。もっと優しくしないと」

私を庇うつもりなのか、それとも少しでも良く思われたいのか反論していた。
もっと口論に発展するかと思ったが、意外にもそうはならなかった。

「…あぁ、わかった。気をつける。だが、今はあやかに話をさせろ、いいな?」

微妙な違和感を私は感じた。
今までならもっと俺様気質を出し、人に当たるはずなのに素直に謝る姿は初めて見た。

「勝手に乗った事はもういい…だが、一つ借りが出来たな。早めに返した方がいいぞ、あやか」

「なんだか裏がありますね…しっかり言った方が男らしいですよ?」

「…そうか、なら言うが俺の妻としてパーティーに出ろ」

「…は?」

戸惑う私だが、クロウさんは至って真面目に誘って来た。
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