上 下
60 / 120

私の気持ち

しおりを挟む
たった数メートル。
それでも土砂降りの雨に打たれ私の髪や体は雨が滴り落ちる。

『なにやってるんだ?あんたは』

クロウリーの言葉が私の心を揺さぶった。
何か特別な事を言われた訳でもない。
それでも今の私にはそんな何気ない一言が心から安心できるなと思った。

「ぐすっ…」

鼻を垂らし啜る私は悲しいのか寒いのかどっちにも取れる状態だった。
しかし、クロウリーはすぐに分かったみたいだ。

『あいつに何かされたな。顔に書いてある』

「…」

『とにかく今は休め』

首で自分の馬房に入るように促し私を招く。
寝藁が敷き詰められた馬房内に足を踏み入れるとフワフワな状態だ。
そんな馬房の隅に私は座り込んだ。

『そんな隅だと寒いだけだろ。それに座るより横になればいい。ほら、ここに来い』

馬房の真ん中を開け、私にそこで休むように言う。
せっかくの好意を無下にするわけにもいかないので
ノソッと動き、開けてくれた場所に横になった。

私が横になるとクロウリーが隣に座りだす。

「ねぇ、クロウリー…私、最低かな?」

『あ?何故だ?』

「私に好意があるから色々話したり、近くに居たりしてくれる。それに男の人が望んでる事もわかる、でも…全部断ってる。少しは許すべきかな…?」

自分が思ってる事を打ち明け、そっとクロウリーに寄り掛かった。

『馬鹿か、あんた。許すべき相手以外に許したら付け込まれるだけだろうが。
断るのが悪い?とことん断ればいいんだよ。あんたが1番に想う相手以外には許すな、…ったく。
今までどんな生き方してんだよ…』

「…ごめん」

『とにかく、そんな濡れた体でいたら風邪引くだけだ、寝るぞ』

バサバサと鼻先で私の周りにある寝藁を上から掛け、クロウリーはさっさと眠りについた。

寝藁まみれになった私は話した事で少し気持ちが軽くなり、寝るクロウリーに摩りもたれるように眠った。
しおりを挟む

処理中です...