53 / 120
辿り着いた目的地
しおりを挟む
森を抜けると開けた大地に出た。
地面は石や草が少し生えてる程度で周りには岩や川しかなく遠くまで見渡す事ができ、前を走るセレスさんが小さいながら見えた。
「もうあんなとこまで…」
まだ雨は本降りではなく先程から強くはなってなかった。
でも上空は厚い雲もこちら側に流れているのが分かりいつ降り出してもおかしくなかった。
『はぁはぁはぁ…』
「く、クロウリー?大丈夫?」
明らかに速度は落ちていた…。追いつこうとし、更には雨が降る前にと無理している。
ふと、私はミハエルさんの言葉が頭をよぎる…。
怪我だけはさせないで欲しい…と。
そう思ったら手綱を引いて速度を落とす様に指示する。が、クロウリーは緩めようとはしなかった。
「無理したらダメ!速度落として。怪我するから」
『はぁはぁはぁ…、大丈夫だ。あと少しで着く。喋るな』
またグンっと力を入れて走り出す。
少しずつだが、セレスさんの背中は大きくなってきて、だいぶ近づいたみたいだ。
前には灯りが灯っている街並みが見え、どうやらそこが目的地みたいだった。
でも、クロウリーは限界を迎えつつあり、右、左に歩様が乱れていった。
ポカッ!
私はついクロウリーの頭をグーの手で叩いていた。
しかも、それは私の意図する気持ちではなく、無意識の内に叩いていた。
『なっ、なにすんだ、あんた…』
「あっ…ご、ごめん。なんか叩いてた…」
『……ふっ。あいつなんかより厄介だな、あんたは』
「あいつ、って?」
『クソ王子に決まってるだろ』
「あ、あぁ…。ってそれより私、厄介!?」
『さぁな…』
怒ってるのかそうじゃないのか分からないが、とりあえず大丈夫そうだなと思った。
そんなやり取りをしながら私達は目的地になんとか雨が降り出す前に着いた。
そんな様子をセレスさんはずっと待っていた。
「あやかさん、良かった。降る前で…」
「ちっとも良くないです!あんな全速力で走られたら困ります!…アッシュ、落ちてましたよ」
「えっ…あ…」
セレスティの背中に乗せていたつもりなんだろうか、目線をそこに移すが、アッシュの姿は無い。
「…ここにいます」
私のお腹付近に巻かれたストールから顔を出すアッシュ。
その顔はセレスさんを睨んでいる様だ。
もちろん、私も一緒だ。
「ごめん…全く気付かなくて…」
馬上から頭を下げ謝るが、今は許す気にはなれなかった。
「おい、誰だ?」
街並みを囲う塀の外にいる人に話しかけられた。
見たところ兵とかではなく、街の住人だろうか?
武装とかは一切していなかった。
「僕はローツェ国の第3王子、セレス。
貴国の令嬢、リリィに会いに来た。中に入れて欲しい」
「…じゃあそっちのあんたは?」
「わ、私は…」
「この人は僕のメイドだ。訳あってついて来てもらってる。構わないかい?」
ジロッと私を見るその人の視線は上の方に向かっていた。
(あっ、ヤバイ!)
すぐにお腹付近に巻かれたストールを外し、頭を隠した。
「メイドか…まぁ、いい。ただし、屋敷までは馬を走らせるな。いいな?」
「分かってる。ありがとう、行こう、あやかさん」
私はローツェ以外の街に初めて足を踏み入れていった。
地面は石や草が少し生えてる程度で周りには岩や川しかなく遠くまで見渡す事ができ、前を走るセレスさんが小さいながら見えた。
「もうあんなとこまで…」
まだ雨は本降りではなく先程から強くはなってなかった。
でも上空は厚い雲もこちら側に流れているのが分かりいつ降り出してもおかしくなかった。
『はぁはぁはぁ…』
「く、クロウリー?大丈夫?」
明らかに速度は落ちていた…。追いつこうとし、更には雨が降る前にと無理している。
ふと、私はミハエルさんの言葉が頭をよぎる…。
怪我だけはさせないで欲しい…と。
そう思ったら手綱を引いて速度を落とす様に指示する。が、クロウリーは緩めようとはしなかった。
「無理したらダメ!速度落として。怪我するから」
『はぁはぁはぁ…、大丈夫だ。あと少しで着く。喋るな』
またグンっと力を入れて走り出す。
少しずつだが、セレスさんの背中は大きくなってきて、だいぶ近づいたみたいだ。
前には灯りが灯っている街並みが見え、どうやらそこが目的地みたいだった。
でも、クロウリーは限界を迎えつつあり、右、左に歩様が乱れていった。
ポカッ!
私はついクロウリーの頭をグーの手で叩いていた。
しかも、それは私の意図する気持ちではなく、無意識の内に叩いていた。
『なっ、なにすんだ、あんた…』
「あっ…ご、ごめん。なんか叩いてた…」
『……ふっ。あいつなんかより厄介だな、あんたは』
「あいつ、って?」
『クソ王子に決まってるだろ』
「あ、あぁ…。ってそれより私、厄介!?」
『さぁな…』
怒ってるのかそうじゃないのか分からないが、とりあえず大丈夫そうだなと思った。
そんなやり取りをしながら私達は目的地になんとか雨が降り出す前に着いた。
そんな様子をセレスさんはずっと待っていた。
「あやかさん、良かった。降る前で…」
「ちっとも良くないです!あんな全速力で走られたら困ります!…アッシュ、落ちてましたよ」
「えっ…あ…」
セレスティの背中に乗せていたつもりなんだろうか、目線をそこに移すが、アッシュの姿は無い。
「…ここにいます」
私のお腹付近に巻かれたストールから顔を出すアッシュ。
その顔はセレスさんを睨んでいる様だ。
もちろん、私も一緒だ。
「ごめん…全く気付かなくて…」
馬上から頭を下げ謝るが、今は許す気にはなれなかった。
「おい、誰だ?」
街並みを囲う塀の外にいる人に話しかけられた。
見たところ兵とかではなく、街の住人だろうか?
武装とかは一切していなかった。
「僕はローツェ国の第3王子、セレス。
貴国の令嬢、リリィに会いに来た。中に入れて欲しい」
「…じゃあそっちのあんたは?」
「わ、私は…」
「この人は僕のメイドだ。訳あってついて来てもらってる。構わないかい?」
ジロッと私を見るその人の視線は上の方に向かっていた。
(あっ、ヤバイ!)
すぐにお腹付近に巻かれたストールを外し、頭を隠した。
「メイドか…まぁ、いい。ただし、屋敷までは馬を走らせるな。いいな?」
「分かってる。ありがとう、行こう、あやかさん」
私はローツェ以外の街に初めて足を踏み入れていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
62
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる