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森の中にある場所

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「うわっ!何するんですか、セレス様」

「僕はこの国の王子だよ、その僕が連れて行くんだから何も言わないで欲しいな。早く開けてよ、門」

前にクロウさんが言っていた様な言葉だった…。
やはり兄弟なんだな、と私は思った。

渋々門兵は門を開け、私達を通し再び門を閉じた。

「さぁ、行こう。走るよ!」

私を連れて行きたい場所に向けセレスティを走らせた。
しかし、私はそんな急には走らせる能力は無く、アタフタしてしまうばかりだ。

『捕まってろ、走るから落とされるなよ』

「わっ!」

グンっと引っ張られる形でクロウリーは走り出した。
慣れない馬の上、手綱なんて上手く扱えず堪らず首にしがみついた。

『…バレるぞ、少しスピード落とすからしっかり手綱を持ち、姿勢を直せ』

言われた通りに首から手綱に持ち替え、鐙に力を入れ姿勢を直し、先を行くセレスさんを見ると速度を落とし私が追いつく様にしてきた。

「あやかさん…本当は乗れないよね?」

バレバレだった…。

「すみません…」

「いいよ、なんとなく分かっていたから。目指すのはあそこだよ!」

指差す方向には森が見えてきた。
なんとなくその森には見覚えがあった…。
私の速度に合わせ森に向かい、ゆっくりと木々が生い茂る場所に踏み入れていった。

(やっぱり…ここ、クロウさんに拾われた場所だ)

辺りを見渡しながら懐かしい感じに浸っていると、セレスさんが馬から降りるように私に言う。
何故だろうと不思議に思いながらクロウリーから降りた。
すると、セレスさんが手を繋いできた…。

「えっ!」

「こっちだよ」

私の手を引き、グイグイと歩かせる。
セレスティとクロウリーもそれにつられて歩く。

「ど、何処に?」

「もう少しだから」

連れて行きたい場所はあえて言わず、ただ引っ張っていく。
この先に何があるのかわからず、不安な気持ちと繋がれた手を気にしていた。
すると、水の音がして来た。

急に開けた場所に出ると上から勢いよく流れる滝がある場所に出た。

「ここだよ。ごめんね、何も言わずに連れてきて」

水が流れる滝には日が当たり虹が架りしばし見惚れている私がいた。

「あやかさん…少し座って話がしたい」

私達は虹が見える滝の前の崖に腰掛け話を始めた。
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