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無邪気さと願望

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「ありがとう、ございます…」

ぎこちない言葉で私は返事をする。
正直今すぐにでも着替えたい…今ならアッシュに踏まれていた服を取り返すことはすぐにでも出来る。
しかし、「似合う」と言われたのに着替えるのはそれはそれで失礼ではないか…とも考える。

少しセレスさんを見ると私の方を見ていた。
目線は下の方を見ている感じだ…。

(足を見られてる…?恥ずかしい!)

そう思ったらワンピースの裾を伸ばし、膝が隠れるような仕草を私は取った。

「見ないでください…それに他人の服だからすぐ着替えないと!」

「まぁ…そうだけど、なんで着たの?」

「それは…」

セレスさんの質問に私はしどろもどろになり答えれなかった。
アッシュに言われて…なんて言っても着たのは私自身だから…。

「…少しだけ借りちゃえば?似合ってるし、早くあやかさんと出かけたいから、さぁ、ご飯食べよう?」

持って来てくれたご飯を囲み、食事を始める。
しかし、私は悩んでいた。
似合うから借りちゃえと言うセレスさんは凄い笑顔だが、他人のを勝手に着て、さらにそのまま出かけようとしている事に罪悪感があった。
そんな私の気持ちを察したのかセレスさんが言う。

「あやかさん、カリファは知ってますか?」

「カリファ…?あ、服を作ったりしている人ですよね?一回会ったことありますが、それが…?」

「人のよりあやかさん自身のが一つはあった方が良いと思うから食べたらまずはカリファのとこに行きましょう、良い服があるはずです。僕からのプレゼントって事で!」

以前クロウさんから断った出来事がまたやってくるとは思わなかった。
それと同時に貰うとなったらクロウさんには内緒にしないとマズいな…とも思った。
見つかったら絶対何か一悶着起こるはずだ。

「嬉しいですが、なんか悪いので…」

丁重に謝ろうとするが、セレスさんは譲らなかった。

「出かけようと誘ったのはこっちだし、それに…」

「それに?」

私はセレスさんを見たが、テーブルの上に置かれた手をしきりに触ったり、下を向き目をキョロキョロと動かし、落ち着かない様子だった。

「兄達より仲良くなりたい、から…」

ポツリと言ったつもりだろうが、しっかりと私の耳に届いていた。
これもまた嫉妬なんだろうか。

クロウさんやアランさんみたいにこの人も変な気を起こすのでは…と少し不安もあるが、大好きな人がいると公言しているセレスさんなら大丈夫かな…と私は少し歩みよる事にした。
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