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話し相手があなた?

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ゆっくりと両肩に力が入り私を逃げられないように縛り付ける。

(まさか、本当にする気…?)

「あやかさん…」

ゆっくり顔を近づけてくるアランさん。
疑いようが無い。
キスするつもりだ。

こんな風になるなんて…付き合ってもないし、ましてやまだあまり知らない人に迫られるのは嫌だった。
アランさんはまだクロウさんより紳士だと思っていたが、私の気持ちなんて考えていないんだなと…。

このまま許すのは嫌だから私は勢いよくしゃがみ込んだ。
急に両肩の感触が無くなったアランさんはバランスを崩しよろめいた。

「あやかさん?」

「…アランさんもただ、したいだけですか?」

しゃがみながら私は言う。続けて更に。

「男の人は体だけ目当てなんですか?気持ちより先に奪いたいだけですか?そうだったら私なんて諦めてそうさせてくれる人を探してください…」

「…」

私の言葉にアランさんは何も反論しなかった…。

私はそれが答えだと判断し、一緒の空間に居たくなく部屋を飛び出していった。




私は夜の暗く寒い屋敷の廊下をただ彷徨った。
部屋の中とは違い、また雨が降っているせいかより寒い気がした。

「アランさんも、結局はしたいだけなんだ…」

好意がある様に見せて少しでもこっちが隙を見せたら…。
そんな風に考えて歩く私は涙を流し始めていた。
次第に歩く足は遅くなり、そして、立ち止まったらそのまま廊下にへたり込んだ。

「うっ……っく………帰りたい……」

私はこの国にはもう居たくないと思え、1分1秒でも早く日本に戻りたいと願った。
だから今までみたいに寝たら現実に戻れるんじゃないかと考え、寒い廊下の床に横になり始めた…。

『なにしてるの?』

泣く私の目に写るのは白い物体。
視界がぼやけてよく分からなかったが、近づいてくるそれはアッシュだと気付く。

『こんな寒いとこで横になるなんて風邪ひくわよ。…泣いてるの?』

泣く私にアッシュは近づき、お腹付近に座り込んだ。
アッシュから発する体温が私を暖め、少しだけ落ち着くことができた。

『泣くなんて余程の事があったんでしょ?私が聞くわ、言って』

「…猫じゃ解決できないよ」

『…あなた、いくつよ?』

「25」

『なんだ、私より年下じゃない。私のが人生経験長いから聞いてあげる、話して』

言われてみたら猫の5歳は人間にしたら30は超えてる…とは言え、猫だ。

アッシュが私を見る目は鋭い。
仕方なく私は起き上がり、猫のアッシュに話し始めた。
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