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バレた黒髪

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シュルと三角巾を外し、黒髪を兵達に露わにした。

「なっ!黒髪、だと!」

口々に、黒い…とか、こんな奴を…とか言うのが聞こえて来た。

「王子、こいつは何なんです?部外者過ぎます!
排除しますが、良いですね?」

(排除…つまり、殺される…)

私は、こんな囲まれた状況で逃げれないから諦め大人しく従うしかないと落胆の色を示した。

「やれ!?」

兵達が一斉に私に槍や剣を刺そうとしてくる。

ガキンッ

ある兵の剣が弾かれ、上空に舞った…。
その音で兵達は私を襲い掛かるのをやめ、音のした方に注目し始めた。

そこには腰から剣を抜き、兵の剣を弾いた王子がいた。

「おい、俺が気に入ったから連れてきたんだ。文句は言わせねぇよ。そいつを解放しろ」

「しかし…」

「何回も言わせるな。それとも俺とやるか?」

凄味がある言葉で兵達を圧倒し、門を開ける様に力強くいい、開けさせた。

「おい、いくぞ。ついて来い」

私はクロウさんに少し怖さを覚え、立ちすくんでしまいなかなか歩けなかった。

『付いて来ないと、厄介になるぞ、動け』

クロウリーの言葉に促され、私は兵達の間をすり抜けクロウさんについて行く様に門の中に入っていった。

(ドキドキしてる…何故…)

私は鼓動が早くなるのを抑えようと歩きながら深呼吸をしていた。
その様子を見て、クロウさんは馬を止める。

「俺に惚れたな、お前」

「ち、違います!ビックリしただけです!」

私は王宮へと歩みを進めた。
先程まで隠していた頭はもう隠さず、黒髪を靡かせながら…。

「おい、ここからは歩きでは遠すぎる。乗れ」

「遠すぎるって…何処に向かってるんですか?」

「もちろん、俺の屋敷だが?…とにかく乗れ!」

走るクロウリーの馬上から手を伸ばし、私の茶色のカーディガンを掴み、勢いよく引っ張り馬に乗せた。

そして、一路クロウさんの屋敷を目指し、走らせた。

(王宮って…女性が多いんだ…)

私は馬上から王宮の様子を見渡した。
やっぱり私と同じ髪色の人は誰一人おらず、目立つなぁと思い再び白い布で、髪を隠した。

それからしばらく走らせ、金色の装飾がふんだんに使われている門が目に飛び込んできた。

「綺麗…」

「そうだろう!父は質素な感じが良いらしいが俺は煌びやかな方がいいからな。だから作り直させたんだ」

(この人…自分の意見を曲げそうにないなぁ…)

自己中…と言う言葉がピッタリかもしれない。こんな人に好かれたんだと思うと、私は軽く息を吐いた。

「なんだ、綺麗と言ったのにため息なんかつくな」

「…すみません」

豪華な門を入り、私はクロウさんの屋敷にお邪魔した。
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