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「アンタの今着てる服、魔法で作ったものなんだけど?」

「……お前が勝手に作ってきただけだしー」

喜々とした様子で得意の煽り口調で人の揚げ足取りをすることも、ちょっと言い返されるとタジタジになることも、いつもの光景だ。

彼のそれは出会った頃から既に身につけられており、今に始まったことではない。

だから私もいちいち苛立たないし、普段はぶっきらぼうな態度を取っていても実は彼がとても優しくて常日頃から私に心を砕いていることを知っているので、こういう言葉の会話は嫌いではないのだ。

けれど今は、疲労感のあまり彼のテンションについていくことができない。

そのため普段の調子が出なくて弱々しい語尾になってしまった。

目ざとくそれに気づいた彼は、‘‘なんでそんなに調子悪そうなんだよ‘‘、という不服そうな声を上げる。

顔を上げて青年を見なくてもバツの悪そうな顔をしていることがわかった。

なんだかんだで結構心配してくれているらしい。

「ほら、さっさと魔法で体調直せってば」

「さっきと言ってること全然違うじゃない、ふふふっ」

彼の掌の返しようをからかうと、"だって......"とボソボソ言いながら拗ね始めてしまった。

「早く元気になれってばー…………くそっ、」

やり場の無い悪態と共にやるせないというような溜息が近くで聞こえた。

ふと体の下に腕が差し込まれる。

"動かすぞ"と頭上から青年の声が聞こえた。

されるがままにしていると、視界がくるりと反転する。

「ずっとうつ伏せになってるけど苦しくねぇのかよ」

うつ伏せになっていた体を優しい腕が抱きかかえられたかと思うと、次の瞬間には仰向けでベッドの上に横になっていた。

ゆっくり目を開けると、黒髪に金色の瞳を持った青年が私を覗き込んでいる。

なんとなく見つめていると、彼の手がこちら側に伸びてきた。

額に冷たい掌がすべる。ひんやりした温度が気持ち良くて再び瞼を閉じた。

しばらく額に留まっていた青年の手は、するりと頬を滑り顎の位置まで降りてくる。

「熱はねぇんだけどな…」

どうやら私の体温を確かめていたらしい。

「おいおい、今までお前体調崩したときなんてなかっただろ。僕、お前が風邪を引いても看病できる自身が……」

「別に、大丈夫だよ」

「嘘つけ、こんなにぐったりしやがって。目も開けることさえできてねぇじゃねーか」

「きょーはもう疲れただけだって」

「ああ?まだ真っ昼間だろうが。いつもなら今頃森に散策に行く頃だろ……」

大丈夫だからと繰り返すが、どうしても不安が払拭できないのか青年は私の側を離れようとしなかった。

どうすればいいか思案していたそのとき、再び強い眠気が襲ってきたため思考が止まってしまう。

そぼ眠気に抗えず、もう青年を無視して寝てしまおうと目を閉じると、不機嫌な彼が再び体を揺すってきた。

「なんで目ぇ閉じるんだよ。起きろってば」

「ちょっと……珍しいじゃない、アンタがこんなにごねるなんて。何かあったの?」

「どうもしてねぇよ」

どこか焦ったようなその様子に、違和感を感じる。

話は明日ゆっくり聞いてあげるから、今は寝かせて欲しい。

そんな切実な願いは届かず、‘‘起きろ‘‘と頬を指先でつつかれた。

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